どうするかなんて俺にはよくわからない
そんなことを考えていると、ソルトが屋根の上に上がってきた。
「ご主人様、嵐が来ますよ。家に入りましょう」
「‥‥‥あれを見てどう思う?」
俺はあの雲を指差して言う。
「魔法形成されているものだと思います」
「消すべきだと思う?」
「消すべき‥‥‥ですか?」
目を丸くして聞いてくる。
「まず、そんなに簡単に消せるのですか?」
「?出来るよ?今すぐにでも」
「やはりご主人様は凄いのですね」
何が凄いんだ?
これくらい誰でも‥‥‥あっ‼
この世界って魔法使い人口がとてつもなく少ないから、魔法があんまり発達してないんだ‼
知らずにさっさと消すとこだった。
危ない危ない。
「お前ならできるか?」
「出来ないこともありませんが‥‥‥結構限界まで魔力使わないと無理ですね」
ふむ‥‥‥ドラゴンでそれなら人間ではかなりきついだろうな。
「家の雨戸を全部閉めておいてくれ。もう少しどうするか考える」
「判りました」
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私は町の者を避難させていた。
スラムの人間も立派な町民だ。
雨風を凌げるよう、競技場を開放している。
あの暗雲が来るのも時間の問題だろう‥‥‥。
ふと、上に目をやると屋根の上に、誰かが立っていた。
その男は何かを考えているようで、こちらに気がつかなかった。
私は直ぐに直感した。こいつは、強い。
黒いローブを着て、その背には巨大な剣が背負われている。
真紅の髪は、光加減により金色に見えるところもある。
美しい顔立ちの、青年。
その言葉では足りないほど、その男は幻想的で、美しかった。
「あれ、人がいる」
そんな声が呟かれたと思ったら、私の前にほとんど音をたてずに飛び下りてきた。
この強風の中でも全くバランスを崩すことなく、ふわり、と降りてきた。三階建ての家の結構な高さなのに音をたてず。
「あの‥‥‥どうされましたか?」
「ああ、すまないね。つい考え事を‥‥‥」
「?そうですか。ご用件は?」
「嵐が近付いているから、スラムの避難をさせているんだよ」
「あ、そう言うことでしたか。じゃあ関係ないのに勝手に近付いたんですね、俺が」
敬語なのに一人称は俺なんだな、等とどうでもいいことを考えてしまう。
「じゃあ、帰ります。お仕事、頑張ってください」
「あ、待ってくれ‼」
つい、呼び止めてしまった。
だが、聞きたかったのだ。
「君なら、あの雲をなんとか出来るんじゃないのか?」
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「君なら、あの雲をなんとか出来るんじゃないのか?」
目の前のオッサンから発せられた一言に俺は驚いた。
この人には魔法を見せたことはない。
‥‥‥勘なのか、根拠があるのか。
「‥‥‥出来ますよ?」
こう、答えておいた方がいいと、今の俺はそう判断した。
この人に恩を売っておいて悪いことはない。
そう思った。
「なんとか出来るのか!?」
適当だったのか!?
いや、この反応を見るにダメもとで聞いてみたって感じだな。
「出来ますが‥‥‥俺は自分の力をあまり人に見せたくないんです」
「もちろん秘匿する!あの魔方陣を壊したのは冒険者達だったといえば問題ないだろう」
冒険者って‥‥‥
ギルド関係のお偉いさんなのかな。
「此処がバレるのも嫌なので‥‥‥」
「ギルドで行ってもらえばいい‼頼む‼あれをなんとかしてくれ‼」
ええーーー。
まぁ、良いけど。
最悪転移使って郊外に出て消すつもりだったし。
冒険者でしたって言えば周りも俺がやったとは思わんだろう。
「判りました。やりましょう」
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彼が了承してくれた。
これで大丈夫という保証はないが、彼が問題ないと言いきるのでなんとか出来るんだろう。
幾つか彼から条件を出された。
・彼の情報の秘匿
・ドラゴンを絶対に討伐させないこと
・子供(ハヤトと言うらしい)を将来ギルドの方で助けること
だった。
情報は分かるが、他の二つはどちらかというとお願いだった。
どうやら本当にドラゴンテイマーらしい。
まさか本当だとは思わなかった。
本当なら周辺諸国に伝えるべきだろうが、情報の秘匿にドラゴンテイマーも含まれるのでそんなことはしない。
「そんじゃあ、消しにいきますか」
ポツポツと雨が降りだした。
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思ったより早く雨が降ってきた。
ソルトに嵐を消しに行ってくると伝えてから出発。
今俺が来ている服は、海神の手作りで、レインコートになっている。
普通のローブにしか見えないのに、驚くべき性能である。
ローブのフードを被り、防水対策万全だ。
ギルドについた。
びしょ濡れの男たちが走り回りながら、避難をさせている。
因みにオッサンもびしょ濡れだが、俺はレインローブを着ていたので全く濡れていない。
ギルドの関係者用入口を通り、一番上の階へ。
この建物は八階建てだ。
この世界の技術でよく建てれたものだ。
八階の真ん中の部屋‥‥‥ギルドマスターの部屋にはいる。
このオッサン、ギルドマスターだったのか。
お偉いさんなのかなー。とは思っていたけどまさか一番上だとは。
「ここなら絶対にばれない。やってくれるか?」
「判りました。とは言ってもやること事態が簡単すぎて此処まで来た意味が分からなくなりそうです」
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簡単すぎて?
こんな大仕事が簡単?
「簡単ですよ。あの雲にまとわり付いている魔力を結晶化して分散させればいいですし」
それに‥‥‥と呟きながら窓の方へ歩いていく。
「最悪、空間隔離させれば問題ないでしょう」
「ちょ、ちょっと待ってくれるかい!?」
空間隔離だと?
馬鹿げてる。魔法の中でも空間系はもっとも難しい上に魔力を大量に使わなければならないものだ。
さらっとあの規模の嵐を隔離させれる等と言うやつはよほどのバカか、腕っぷしが強いかだ。
「あの規模の嵐を隔離させれるのか!?」
「まぁ、やめときますよ。ここで空間隔離なんかしたら目立ちますし」
魔力などの心配ではなく目立つことを心配している始末だ。
一体この男の底は何処までいったら見えるのだろうか。
「君、全然濡れてないね‥‥‥」
「この服、特殊な素材でできてますから」
「何処でそんなものを?」
「家族です」




