昔話をしてみました
「俺は、親に捨てられたんすよ」
その言葉から始まったこいつの言葉を纏めるとこんな感じだ。
東は、5歳で捨てられた。
親は大泥棒と呼ばれる、人を殺して金をむしりとり、息をするように嘘を吐く仕事をしていた。
東恭一はそのことを物心ついたときから知っていた。
そしてある日、親が仕事でやらかした。あっという間に東の親は逃げ出した。
東も逃げた。親とは全く違う方向に。
一生あの親とは会いたくなかった。
何とか祖父の家にたどり着いた。祖父とは会ったことがないが、剣道の師範代なのは知っていた。
門前払いを食らった。
祖父と東の親はすこぶる仲が悪く、その子供である東も同じようなものだろう、と思われていた。
行く宛のない東は必死で頼み込んだ。
それでも、聞いてくれなかった。
家の戸の前で何時間も何時間も土下座の格好で頭を下げ続けた。
その状態が少なくとも2日続いた。
その内に体が空腹で動かなくなってきて、自分の運の悪さを憎んだ。
そこで助けてくれたのは偶然通りかかった暗殺屋だった。
そこで、殺しの技術を叩き込まれた。
因みに、その暗殺屋は祖父の造った清空流の使い手で、剣道の心得はその暗殺屋に習った。
身体を動かすのは性に合っていたらしく、すぐに上達した。
7歳になったとき、東は既に大人と戦っても負けなしの実力を持っていた。
東を拾った暗殺屋は、東に殺しの技術を叩き込んではいたが、東に暗殺屋になれとは一言も言わなかった。
この暗殺屋は自分の仕事が嫌いだった。珍しいタイプだと言える。
東は強くなりたかったゆえに、沢山の道場の師範に試合を申し込み、師範をコテンパンにしてしまった。
最後に残ったのは、祖父のみだった。
試合を申し込み、祖父に圧倒的な力を見せつけられ、ボロボロになるまで竹刀で叩かれ続けた。
それから余計に訓練に打ち込んでいった。
15歳になり、祖父に勝った。
だが、東は喜びを感じれなくなった。
祖父はその後持病で亡くなった。
それを期に、暗殺屋の家からでて、特に理由もなく戦闘屋になった。
「どう、思うっすか?」
「お前は良かったのか?育てて貰った人の家をでて」
「判んないっすよ」
「だよな」
自分のやりたいことなんて基本的にはっきりしてない人の方が多いくらいだし。
「それに・・・育てて貰った人は去年亡くなったんすよ」
「そうか」
お互い無言で茶を飲む。
「極星は?」
「?」
「極星は昔・・・その・・・部下に・・・」
「ああ、殺されかけた話?」
レイラから聞いたのかな。
「言いたくないっすか?」
「いや、別に?・・・面白くは無いぞ」
こくり。とうなずく。
まぁ、これくらいなら話しといてもいいかな。
「俺はさ、自分で精霊族を治めてた。
天界で見守るってのより、自分で守護して、同じ境遇にたって。
最初は意外と良い方向に行った。
でも、最初だけだった」
そこで、一旦お茶を飲む。
「・・・側近が国の財産を横領し始めた。
それに、最初は全く気づけなかった。
横領したのは俺だと、部下が言い始めた。
勿論、俺はやってないし、そんなものを置いておける場所もなかったから、そいつが罰せられるだけで終わった。
・・・今思えば、それから俺の信頼が薄くなっていった。
俺は益々働くようにした。
民衆は喜んだが、部下が俺の暗殺を企てるようになった。
沢山の濡れ衣を被せられ、戦争では前線で戦った。
ヤバイときは50万対1とかあったな」
「50万・・・?」
「流石にきつかったな。
とにかく、毎日戦った。
傷口は直ぐに治るものの、疲労は抜けない。
そんで、戦争中に部下が俺の弱点をどこからか見つけてきて殺しにかかってきた。で、今に至る」
「笑い事じゃない気がするんすけど」
「確かに笑えんな‼」
「・・・もう極星は心配しなくてもいいっすよ。今度は俺が守るっす」
その言葉は、素直に嬉しかった。
「ありがとう」




