自分がやられるのは嫌ですが、蹂躙するのは楽しいです
リーダーっぽい奴はまだ目の前の状況を理解できていないらしい。
呆然としてやられた仲間達を見ている。
『もう少しゆっくりやってくれたら悲鳴とか聞こえたのに』
邪神が名残惜しそうに言う。
「う……嘘だ‼我々はこれくらいでは負けん‼お前らたてぇ‼契約違反になりたいのかぁ‼」
残念。全員気を失っていますよ。
「な、何故だ‼何故……」
「五月蝿い」
もうめんどくさい。記憶はもう貰ったんでもういいわ。
鞘に入ったままの刀を振り上げる。
「ま、待て‼私は貴様の女を誘拐したのだ‼場所を知りたくば私に同行しろぉ‼」
うん。知ってるから。
あと、女じゃなくて男だ。レイラは何のためにこんなやつらにわざわざ捕まったのか、そこを知りたいんだが……まぁいい。
そんなのは後でいくらでも聞ける。
「全部知ってる」
「はぁ?」
「わざわざ京都の一番はじっこにしやがって」
「……なにがだ」
「さぁ、なんだろうね」
思いっきり殺気を振り撒いてやろう。
「松本 尾道さん」
それをいった瞬間、殺気にびびってるのか、俺が名前を知っていることに驚いたのかは判らんがそいつの顔が驚愕の色に染まる。
俺は刀を降り下ろした。
さぁて、バレてないよな?
遠視やレーダーに反応が無いから大丈夫か。
音を出さないように戦ったつもりだしね。
遠視と透視を使ってレイラの位置を確認。
ここは……倉庫?いや、この時代風に言うと蔵だな。
行くか。
宿から堂々と出る。
この周辺にさっきのやつらの仲間が居るのは分かっているからこその行動だ。
「おい!あいつ出てきたぞ!」
「なんだって?うちの精鋭にやられたんじゃないのか?」
「そのはずなのに……」
「依頼主には言うか?」
「……その前に仕留めれば問題ない」
物騒なこと言ってんな。
滅茶苦茶小声だけど俺はしっかり聞こえるぞ。
なにも指示がでないうちに走り出す。
橋を渡れば……
橋の前に俺が楽器弾いてる時に集まる位の人数が居る。
やつらの仲間ではない。
……なにがあったんだ?
遠視と透視をフル活用してなにが起こっているのか調べる。
「おい!お前ら‼」
「何で橋壊してんだ‼説明しろ!」
あー。俺が通れないように壊してるわ。
外道だな。
「我々はここの橋の管理を任されているものだ‼この橋の老朽化が進んで危険だと思い新しく掛け直すのだ‼邪魔をするでない‼」
うわー。息をするように嘘はいてんなー。
……これぐらいじゃ俺を止められないよ?
ちょっと目立つけど、いいか。
これ終わったら逃げるし。
俺は特殊能力のひとつ、創造を使う。勿論周囲に気づかれないように。
そして、1つのリストバンドを創る。
それを腕にはめて目標を決定。
人だかりから離れるように走る。
勿論、軽く。
その勢いのまま、リストバンドを目標の民家の屋根へ。
あ、あいつだ‼とかなんとか聞こえたけど無視。
リストバンドからワイヤーが出る。
それを屋根へ引っ掻けて、一気に巻き取る。
普通にやろうとすれば、今背負っている聖十刀どころか、俺の身体も巻き取られる前に、瓦が落ちるだろう。
でも俺は今、聖十刀と合わせて50グラムほどの重さしかない。
特殊能力のひとつ、重量操作。
俺の身体に触れているもののみ重量を変えられるという、なんとも微妙な能力。
普段なら重力魔法使うからな。
まさかこんなところで役に立つとは。
俺の身体が川を越えて飛んでいく、がそれを見ている奴は極僅かだ。
俺がワイヤーを飛ばしたと同時に反対側に悲鳴が起きたからだ。
俺に気付いた奴らの仲間が襲いかかってこようとしたから、ぶん投げた。
人間が飛んできて驚いた関係のないお嬢さんが悲鳴をあげたっぽい。
ごめんね。
屋根の上を走る。
体重が軽いから瓦がずり落ちることもない。
民家の屋根の上を疾走する人間が居たら多分大騒ぎになるだろうが、民家の屋根の一番高いところを走っているので空を飛ぶ技術がなければ発見も困難だ。
この時代だから出来るんだ。
屋根を渡り歩……渡り走って、目的の蔵へ到着。
追っ手は無い。何でかって?
時速100キロくらいのスピードで走ったから。
ははは……見られてないよな?
堂々と正面から入る。
すると、もっと遅くなると思ってたっぽく、滅茶苦茶慌ててる。
馬なんかより速いしな。
「……ねぇ、レイラ、どこにやった?」
殺気を振り撒きつつ、笑顔で訊ねる。
「……何故わかった」
「勘」
半分本当だ。この辺かなーって透視してたら見つかったわけだし。
「おい!お前ら‼何とかしろ!契約違反になって評判が地に落ちるぞ!」
なんか同じ様なことさっきも聞いたな。
「そういえば走ってる途中の風圧が結構あったみたいだけど大丈夫か?」
『さあ?瓦は何枚か落ちたかもな』
……まじか。




