神
あれからどれだけの時間が経ったのだろうう。
気がつくと神々しい巨大な神殿の前に立っていた。
‥‥‥ここに来るのは久し振りだな。
こんなに大きかったっけ?
入り口の高さだけで200メートル位ありそうなんだけど。
創ったの俺だけどさ。
コツコツと靴の音が反響している。
入り口って下界から迷いこんできたやつか、招かれたやつか、滅茶苦茶努力して天界にたどり着く様なやつしか使わないからこの辺は人気がない。
恐ろしいほど静かで自分一人しかこの世に居ないような、そんな気がする。
歩いていくと声が聞こえてきた。
「おい‼このプログラム間違ってるぞ‼」
「え?どこ?」
「xの隣‼」
「あ、違うね」
「なにのんびりしてんだ‼早くやれ‼出荷に間に合わなくなるぞ‼」
‥‥‥声だけ聞いてると野菜の卸売業者っぽいよね。
こっそりその輪の中に入ってみる。
ん、そこ違うなぁ。
これでも一応何億年も神様やってるからね。一目見ただけでどこがどう違うのか、それくらいは分かる。
「そこ、y-37じゃなくてr-83だよ」
「え?ああ、なるほど。ありがとう」
「いいえ」
こちらを一瞬見た人が直ぐにまたやりかけのプログラムへ向き合う。
‥‥‥と思ったらすぐにこっちを見て俺の顔をじーっと見てくる。なんかすっごい恥ずかしい。
「えええええええぇぇぇぇぇ」
小さい声で叫んでる。すげぇ。やり方教えてくれんかな。
「なんだ‼五月蝿いぞ‼」
あんたの方が五月蝿いぞ。
こっちを見た偉い人っぽい人が俺の顔を見て、
「ええええええぇぇぇぇ」
って小声で言う。流行ってんのかな。
「な、なんで貴方が‥‥‥?」
「何かあったときの為に、保健用意しておいたんだよ。今さっき作動したらしい」
そう、ここにいるのは偶然ではない。
何かあったときに備えて、分体を用意してあったんだ。
長い間作動してなかったからか、分体に移るまでにタイムラグが発生してしまったがな。
まぁ移れたからいいや。
グッジョブ2000年前の俺。
「出荷作業頑張ってね~」
そう言って俺は審判の間へ行く。
審判を受けに来た訳じゃない。その奥にある神にしか反応しない転移魔方陣を使うため。
「お、あったあった」
うわぁ。めっちゃ埃かぶってる。あとで掃除せんとな。
会議場には俺以外の全員が集まっている。
それぞれ泣いたり、慰めたり、怒ったり。しかも全員美男美女だから凄いカオス空間になってる。
俺の場違い感。
向こうの様子を確認した俺は転移魔方陣へ乗る。
緑色に輝く光に包まれて会議場のど真ん中に出た。
‥‥‥出る場所失敗した。
「「「「‥‥‥え?」」」」
周りの奴ら全員ハモった。流石は兄弟。おもしれぇ。
「‥‥‥」
「「「「‥‥‥」」」」
誰もしゃべらない。
何で?
俺のせいか。
「えーっと‥‥‥」
と言ってみる。
「‥‥‥何で?」
聞いてきたのは魔神。
こいつらのリーダーだ。
「2000年前の分体作ったときの予備です。はい」
答えておく。
「うあぁぁーー」
「‥‥‥泣いて損したわ」
皆そう言ってくる。
すんません。
「‥‥‥それにしても何でそんなちいさいの?」
一番小さい人間神に言われたくないなぁ。
「分体だし、下手に大きくなろうとするとバレる危険性があるから」
「‥‥…母神様、生きてるんですよね?」
獣神が聞いてくる。っていうかその母神様っていうの止めてくれ。
「一応、生きてはいるよ?死にかけてはいるけど」
そう言って笑う。
「‥‥‥これからどうされるおつもりですか?」
魔神が聞いてくる。流石はリーダーだ。
今後をもう考えている。
「とりあえず、神力が回復するまでここにいるつもりだ。回復したら‥‥‥」
一呼吸置いて言う。
「‥‥‥別の世界へ行ってみるつもりだ」
場の空気が凍る。
別の世界へ行くこと。それは、この世界を捨てる、ということ。
「こ、ここでいいじゃん!」
人間神が叫ぶ。
「私達、絶体に裏切らないよ‼ここなら安全だしそれに、それに‥‥‥」
泣きながら叫んでいるので言葉が繋がらない。
「‥‥‥ずっと、ずっと待ってたのに」
因みに、このときの最高神の大きさは幼稚園児位です。
次回では元に戻っております。
楽器が出てくるのはまだまだ先になりそうです・・・