楽器のメンテナンスと、命知らずな奴ら
簀もどきに乗り、トランペットを構える。
それだけで 、おお……とざわつく。
興味の視線を、もっと集めてやる。
吹く曲は………《威風堂々》
本当は違う曲名なのだが、こっちの方が通じそうなので、威風堂々で。
腹に息を入れて、吹く。
最初は少し小さく。一発目から出すと耳が慣れないから。
クライマックスに近づくにつれてどんどん音量を上げる‼
はい、5曲吹きました。
お腹すいた。
もっともっと、と周りがせがんでくる。
もう、お金も集まったし、ご飯食べたい。
楽器もメンテナンスしたい。
周囲を振り切って逃げて部屋に駆け込む。
部屋ばれしたけど、いいや。
どうせすぐバレるだろうって思ってたし。
人がいなくなったのを確認して、ストレージに仕舞う。
後で磨いてやらないとな。
階段を降りる。
人は未だ居るけど、ほとんど減った。
ご飯‼俺のご飯‼
席に座ったら準備していたのかおばちゃんがご飯を置いてくれる。
ああ、やっと食べられる……
「お疲れ様です」
レイラが苦笑いしてこっちを見る。
因みに、レイラはご飯食べたらしい。ずるい。
「ほんと、ご飯の前はマジで嫌だ」
『お前の食い意地が張ってるだけだろうが』
うるさい。
腹は空くんだよ。
10分で完食しました。美味しかったです。
部屋で楽器の確認だ。正確に言うと点検。
金管楽器はピストンやマウスピースの確認、木管楽器はタンポの状態確認や場合によっては薬で磨く。
弦楽器は弦の確認や、弓の確認。
………まだまだ有るけど、言うのはこの辺にしておく。
専門用語ばっかりでつまらないからな。
シンバルを薬を使いながら丁寧に磨く。
この薬のことポリッシュって言うんだけど、知ってる人いるかな?
まぁ、いいや。
とか思っていたらノックされた。
誰だ?このノックの仕方……俺の知ってる人じゃない。
それも武器を持ち馴れた手の叩き方だ。
透視してみる。
5人。しかも全員手練れだ。記憶……コピーしてみるか。
……成る程ね。
俺はシンバルを即座にストレージに仕舞い、替わりに聖十刀を出して、聖十刀の手入れ中に見せ掛ける。
「……どうぞ」
そう言った途端、いきなり扉が物凄い勢いで開いて、そいつらが斬りかかってきた。
どうでも良いけど、ここの宿はなんとなく西洋風で、ドアがあるのに畳で、その上にベットがある。何てアンバランス。
こんなに俺が落ち着いてるのは、こいつらが弱いから。
連携もそれなりに上手いし、個々の力もそれなりに高い。
選抜隊と呼べるだろう。……この世界では。
俺の世界じゃこんなやつらが居たら多分落ちこぼれ集団とバカにされるだろう。
この世界のやつは、時速50キロ以上で走れないし、魔眼もなければ、魔法も魔動機もない。
そんなやつらの力なんてたかが知れている。
……ましてや、俺は神だぞ?
歴代魔王の中でも飛び抜けて強い位のやつじゃないと相手する気もない。
たとえそんな奴が居たとしても、レイラにハンデを貰って、なんとかギリギリ死なない位のやつしかいないと思う。
それに、この50年ちょっとはレイラの相手をするためにもっと強くなった自覚もある。
弟子に負ける師匠ってやだもんな。
……遅い。遅すぎる。
止まって見えるのは気のせいかってくらい遅い。
『命知らずが居たものだな』
全くだ。
俺は聖十刀を真っ白な鞘に戻す。
そして、そのまま真横に振り抜く。
前にいた奴が吹っ飛んだ。まずは、1人。
振り抜いた刀を逆袈裟に振り上げる。2人目。
振った勢いで立ち上がって左足を真上に蹴り上げ、アゴを思いっきり揺らして脳震盪を起こさせる。3人目。
後ろに回ってきた奴を上げたままの左足で回し蹴り。4人目。
最後の5人目は、リーダーっぽいのでなにもしないでおく。
聞きたいこと……あるんだよね。
「って言うか、シンバル磨ききれてねえ‼」
『今考えるべきはそれじゃないだろうが‼』
わかってるよ‼判ってるけど……
綺麗にしたくて堪らない‼




