初めての路上ライブです
あの山田とかいうやつ忘れたい……
山田に追い付かれないように走っていく。
時速50キロ位で。
人間に見られたら不味いからレーダーより高性能な遠視使って周りに人間が居ないか調べながらいく。
おっとそろそろ目的の街だ。
京都‼
やっとついたよ‼
あの山田野郎に会ってなかったらもっと早くついてたのにな。
宿をとる。
そこら辺のひとの記憶をコピーさせてもらって一番評判いいところにした。
俺の世界じゃ宿でご飯なんて出ないのにここじゃ朝と夜の2食出るらしい。異世界パネェ‼
「金がいるな。即急に」
宿の10日分払ったら、お金が全然残らない。
『魔法を手品っぽくして道でやればいいんじゃねえか?』
魔法は極力使わないの!
でもその考え方はいいな。
「音楽で路上ライブしてみるか……」
「いいんじゃないでしょうか‼精霊神の腕なら直ぐにお金がたまりますよ‼」
えらい食い付いてくるな。
そういえば、レイラは俺の楽器が好きだったな。
正確に言えば音楽が、だが。
問題は場所だな。
「それなら、ここでいいよ」
まじですか。
駄目元で宿のおばちゃんに聞いたらそう返ってきた。
ラッキーだな。やっぱ嫌なことの後には良いことがあるんだな。
因みに、俺の髪色とか格好が気にされないのは、神様の特殊能力の1つである《印象操作》を使っているからである。
かなり地味だが結構使える場面が多いので重宝している。
簡単に言えば、「あの人髪赤いよね。後、見慣れない服着てるよね。でも別に何でもないよね」と、なるわけだ。認識はできるけど、興味は湧かない、そんな感じである。
宿の食堂でリュックから取り出すよう見せかけたヴァイオリンをチューニングする。
ヴァイオリンはしょっちゅう音程が湿度や温度で変わる楽器なので小まめにやる必要がある。
オーケストラなんかを見たことがある人に説明すると最初に指揮者が始める寸前に突然弦楽器が弾き出す、あれである。
よし、出来た。
最初に弾く曲は……情熱大陸。
なぜか、ヴァイオリンが弾ける、と言うと勇者は大抵これを最初に聴きたがる。
それだけメジャーな曲らしい。
ちょっとお辞儀。小さく何人かが拍手してくれる。
音楽を聞かなさそうな刀を持った男たちでもヴァイオリンが物珍しそうにこっちを見てくる。
音で。もっと視線を集めてやる‼
……何でこうなった?
弾くのに集中してて周りが全く見えてなかった。
なんか食堂が大混乱。
お昼を大分過ぎた時間だから殆どの席がすっからかんだった。
情熱大陸1曲弾いたら、立ち見の人が居るばかりか、お店の前まで人が集まっていて、店の前の道が通れないくらいまで人で溢れかえっている。
『早く2曲目弾いたらどうだ?』
いや、こんなに凄いとは思っとらんかった。
「大盛況でしたね‼お金もいっぱいです‼」
レイラは興奮してる。
何があったのか教えてくれ。
『えーっとだな』
邪神が言ったことを纏めると、
先ず、情熱大陸弾き始めたら、物凄い客が入ってきた。弾けば弾くほど人が店内に入ってきて食堂は人で溢れ、ついでに飲み食いをしていくのでこのお店はぼろもうけ、結構お金持ちの方も来て俺の演奏費もガンガンうなぎ登り!
だそうだ。
そのまんまじゃねーか‼それくらいは想像できるわ‼
とにかく、俺が疲れるまで弾いてさっさとお辞儀して帰ったので、あの人は誰だと物凄い噂になっているらしい。
やべぇ。
なんも覚えてねぇ。
とくに演奏中は。
明日もまた弾いて欲しいって言ってたらしい。
まぁ、いい金づるになりそうだ。
あ、でも書類整理しなきゃ。
はぁ、何で異世界に来てまで書類整理なのか……
相変わらずこき使ってくれる。
「聞こえるかー?」
連絡魔動機で通信する。
これ、神力で使えるから便利なんだ。
異世界にまで通じるし。
「忘れてるかと思ったわよー」
海神のクルトアがでた。
「色々あっただけ。そっちはどうだ」
「問題ないわよ。仕事なら精霊神様のストレージに追加しといたから」
「あ‼増えてやがる‼」
「クルトア姉‼」
「レイラ‼そっちはどう?」
「楽しいよ‼今日もね、精霊神様がお金たっくさん稼いだんだよ‼」
「生々しいわねー」
「色々大変だけど」
「そりゃよかったわ。精霊神様もガンバってね」
「おう、そっちは頼んだぞ」
「任せなさい‼じゃあね、レイラ」
「バイバーイ」
切れた。
くっそ……地味に量が多いぞ。
夜使ってやりますか。
昼間は人間に見られる危険性がある。まぁ、見られても言語が違うから何書いてあるのか読めないと思うけど。
「仕事やだぁ」
「え?仕事大好きって聞いたことありますよ?」
誰だ‼そんな無責任な事言ったの‼
ヴァイオリンって格好いいですよね。
え?弾けませんよ?




