エクストラ装備だそうです
「あはは……笑えない」
これはヤバいぞ。いや、何が特にヤバイとかはない。俺が隠してりゃ良いだけだから。問題なのは、聖霊が集まってること。
精霊は適当に流浪して好きなことやる。弱い精霊だと流浪もままならないけど、俺ぐらい力が強い精霊は逆に隠れ住んでいるのも多い。
で、聖霊はある一定の場所で生まれ、一生をそこで過ごす……と思われている。実際は違う。
聖霊は世界樹とかと呼ばれるでっかい木に住む。それが枯れたりすると、あるところに移動する。それが、聖霊の国。
聖霊は珍しい。世界樹は人間の手にはおえない代物だから、それに宿る聖霊は力がかなりある。
乱獲。それが過去に起こってしまった。世界樹は燃やされ、世界樹を失った聖霊は捕まるか、何とか逃げ延びた。
世界樹から切り離された聖霊はいつか存在が希薄になり、消えてなにもなくなってしまう。それで、人間が気づいてももう遅い。
この世から、絶滅してしまった―――筈なんだが。
なんてこったい。何て言えばいいのかな。ああ、洞窟の中に入っていったら恐竜が住み着いてましたーって言う感じの衝撃だ。いや、それよりもとんでもないことなんだけどな。
なんか皆こっち見ている。
そりゃ見ますよねー。何とか人間から逃げ延びた筈が、その人間が完全武装して現れたらそりゃ見ますよねー。
あ、幽霊執事さん(仮)が此方こいってジェスチャーしてきた。面倒ごとになりそうな予感……。
『遅いなー。洞窟入る前に覚悟しとけよ』
お前に言われんでも判っとるわ!
「ニンゲン、ヨクキタ」
喋れるんじゃん!
「厳密に言うと俺は人間じゃないんですけど」
「ナンナノダ?」
「精霊族、不死鳥です」
「フシチョウ。メズラシイ」
此方の世界にもいるらしいが、一匹のみらしい。そりゃ珍しいわな。
「どうして俺をここに?」
「タスケテクレ」
「何をです?」
「ココハ、モウモタヌ。ニンゲン、セカイジュヤキスギタ」
そう言えば、世界樹の根で聖霊の国は出来てるんだっけ?で、その根まで限界だと。
「そうだとして、何故俺に?」
「ニンゲンオソウ。コワイ」
矛盾してね?怖いのに俺呼んだのか?
「フシチョウ、コワクナイ。オナジニオイ、カンジル」
精霊と聖霊。名前も読み方も一緒だけど、中身は全然違う。同じ匂いってどう言うことだ?
「もしかして、魔力?」
「ソレニチカイ。フシチョウ、マリョクカンビ」
「へー。え?食べたんですか?」
「サキホド、スコシダケ」
甘美って……いや、すぐ回復するから良いんだけどさ。
「それで、俺はどうすれば?」
「ココデ、マリョクヲタベサセテクレヌカ?」
ふむふむ。無理だろ。ここ往復何時間かかるの!?って言うか明日にはここ出るし。
「正直難しいです。遠すぎますし、出入れを続ければ誰かに気づかれるかもしれませんし」
気付かれてもたどり着けないだろうけどな。
「?ココニスメヌカ?」
「いやいやいや。無理ですよ。俺にもやることは一応ありますし、ここにはちょっと」
「ヤルコトトハナンダ?」
「魔王討伐に」
「ナント。シカシ、モンダイハナイゾ?」
「え?」
そこで出された案は、とんでもないものだった。少なくとも、俺には考え付かないもの。
「そんなことできますか?」
「カンタンダ。マリョクサエアレバ、ドウトデモ」
マジかー。
「でもここが朽ちるのを見るのも忍びない……」
綺麗だ。何と言っても綺麗。光る水もそうだし、へんてこりんな位置にあるオアシスは放っておくとしても、あの魔石を嵌めた教会みたいなところも。
ここ自体が、無くなってはいけないものだ。直感だけど、そう思った。ただなぁ。
「俺がこの世界の管理してないからなぁ」
俺が好き勝ってやってはいけない気がする。今回のこれは特に。と言うわけで。
『トーラ!聞こえてるか?』
『わっ!代表!?』
『今大丈夫か?』
『あ、はい。書類見ているだけなので。どうかしましたか?』
一通りのことを説明する。
『聖霊の国なんてあったんですね……』
『知らなかったんだ?』
『はい』
おい、管理者。
『どうする?そっちで保護するか?』
『代表は先程の考えで宜しいので?』
『ああ、そう思ってくれていい。ただ、トーラにあわせるつもりだ』
『そうですか。此方としては願ったり叶ったりなんですが、代表の負担が大きすぎやしませんか?』
『そこは気にしてくれなくてもいい』
こんなことでへばってたら毎日の激務はこなせないぞ。
『では、お言葉に甘えさせて貰っても?』
『判った。じゃあ、また何かあったら連絡する』
『了解しました』
念話を終了した。
「では、やりますか?」
「イイノカ?」
「許可は取りましたし、時間が経ちすぎて崩壊する方が危険ですしね」
地面に手をつけて、魔方陣を構築する。この魔方陣は重ねて使う、かなり珍しいものだ。
その分、魔力消費も半端なものではないけど、使い勝手はいい。
「……ぅ」
予想異常にキツい。汗が額を伝って地面に落ちる。静電気が起きたときのようにたまに抵抗で痛みがくる。人間が受けたら一瞬で感電死するけど。
「はぁ、はぁ、はぁ」
魔方陣が消え、何事もなかったかのような雰囲気だ。俺頑張ったよ。めっちゃ頑張ったよ。
2時間分くらい頑張ったわ。
「モウ、イイノカ」
「これで繋がったんで多分大丈夫です。それでは、帰ります」
もうどうでもいいや。転移で帰ろう。ここ座標しっかりしてるしな。
「さよならー」
「マテ!マダ、オワッテナイ」
未だすか?俺もう帰って寝たいんですけど。
「コチラダ」
しかも、未だ歩くんですか?
「もう疲れたんですけど……」
「ヤマコエタラスグダ」
なんで登山してるんだ、俺は……。精神的な疲労がキツい。肉体的な疲労?そんなのあるわけないじゃん!
「ココダ」
「なんで幻想的な物ばっかり何ですかね?」
滝でしたー。かなりでかい。縦に長いというより横に長い。
幻想的な物に凝りすぎだろう。いや良いんだよ?寧ろ良いことですよ?ここにくるまでも凄かったからそう思っただけです、はい。
登山の後は滝登りでもしろってか?落差何メートルだよ。もう正直帰りたい。
と思ったら滝の裏側に用があるらしい。滝の裏の洞窟。寒い。ってうか洞窟の中にある洞窟ってなんだよ。
「モウスコシダ」
さっきからそればっかり言ってませんか?
「わー」
なんだあれ。洞窟の奥にブーツ、手袋、そして何故かバングル。このチョイスは何?いや、普通こういう幻想的な場所には剣が刺さってるとか……エクスカリバーとかじゃないけどさ。
ガラスケースに入っている。誰が作って置いといたんだよ。
「ココニキタモノ、ウケトルシカク」
「え?あ、はい」
ガラスケースを壊して持ってきた幽霊執事さん(仮)いいの?それ壊して破片とか凄いことになってるけどいいの?
「ツケル」
「あ、今着けるんですね……」
半ば無理矢理手袋とバングルを装着、靴を脱いで別の靴を履くという謎行動をさせられた。
鑑定かけてみた。
・エクストラブーツ
・エクストラグローブ
・ツリーバングル
おお!なんか格好いい名前だぞ!思ったより。
【エクストラブーツ】
・速度大上昇、空中歩行可能、破壊不能、足を使った攻撃にプラス補正
・聖霊に認められた者のみが使用できるブーツ。決して壊れることはないと言われ、装備した者の脚力を大幅に増加させる。エクストラグローブと同時使用の場合、更に補正がかかる。
【エクストラグローブ】
・攻撃力大上昇、腕力強化、握力強化、破壊不能、器用さにプラス補正
・聖霊に認められた者のみが使用できるグローブ。決して壊れることはないと言われ、装備した者の腕力を大幅に増加させる。エクストラブーツと同時使用の場合、更に補正がかかる。
【ツリーバングル】
・魔力回復速度大上昇、聖霊との親和性上昇、破壊不能、援護系魔法にプラス補正
・聖霊に認められた者のみが使用できるバングル。世界樹の枝で作られており、聖霊との親和性を上げる。魔力との相性もよく、援護系の魔法に特に作用する。
思ったよりどころじゃなかったわ。とんでもないものでした。
「こんなの貰えませんよ!」
「コワシテシマッタ。ウケトレ」
それが狙いでわざと壊したのかこの人!
「まぁ、有り難く頂きますよ……」
ここで粘っても意味がないことを俺は知っている。だからあえて何も言わない。
「ウケトッテオイテクレ」
「そうします。……ところで、お名前をお伺いしても?」
「イッテイナカッタナ。ネロダ」
全部片仮名だから判りづらいけど、ネロらしい。
「そうですか。俺は極星。一応神様やってます。これはなるべく内緒で」
「ソウカ。ソンナジジョウダッタノカ。ドオリデ、ワレワレミテモ、ハンノウシナカッタワケダ」
いや、反応はしてたけどね?俺自身その辺の感情表現下手くそだからな……。判らないのも、無理はない。
「なんで名前エクストラなんですか?」
「セイレイ、ソノコトバ、キニイル」
あ、特に理由は無いんだ……。




