死(大幅に修正しました)
大幅に修正しました!
台詞とか大分違いますが大筋は一緒です。
ちょっと久しぶりに見返して文脈があまりにも気に入らなくなったので全部書き直しました。
終わりというものは突然やって来る。
それがどういうものであれ、始まれば終わりもある。
何年も何年も続く時の中で俺はそれを何度も見てきた。
始めるのは容易だが完全に事を為して終わらせるのは中々に難しいことだ。
………終わりが予期せぬものということも、ある。
「貴方の時代は終わったんですよ」
ゾッとする。皆、俺の周りを囲んで少しばかり品のない声で嗤っている。昨日まで一緒に笑っていたはずの仲間が、俺を殺すために嗤っている。
それが酷く恐ろしい。
地面に紅く光る血が次から次へと零れ落ちては水に変わっていく。相変わらず、気持ち悪いな、これ………
何人かが色のあるうちにそれを瓶の中にいれるが、ただの水になったとみるや俺の頭にかけてきた。
どっかの世界ではこの血を飲めば不老不死になれるとかそんな言い伝えがあるらしいけどそこまでの効果はない。精々相性があえば不老になれる程度か。
それでも大抵の怪我や病気は一瞬で治るし、完全に魂が死んでいなければただの肉の塊になったとしても復活させることができるくらいだ。
まぁ、相性が合わなかったら体が弾けとんでさようならだけど。
それにこの血は俺の許可がないと使えない仕組みになっている。寝てる間に血をとったりしても今みたいに少し時間がたてばただの水になる。
体から力が抜けて、地面に座り込んでしまう。その様子に周りは大喜び。そんなに俺のこと嫌いだったんだな、お前ら。
「……ごめん」
「は?」
「ごめん、な」
もう、大声も出せない。せめて、最期くらいちゃんと自分の思いを伝えてから死にたい。
「今更命乞いですか?」
「……もう刺さってる時点でどうしようもないだろ? 命乞いになんの意味がある」
俺は首をはねられても死なず、毒を盛られても、海の中に沈められても、マグマに突き落とされても死なない。
俺を殺すなら本来は怪我を治すときに使う魔剣、それも再生の力をもった魔剣を攻撃点や致死点と呼ばれる部位、10ヶ所に同時に刺さなければいけない。
そしてそれを的確についてきたこいつらは思っていたよりずっと凄いのかもしれない。
徐々に指先が動かなくなってくる感覚と痛みに目が回りそうだ。
「あんたを殺すために魔族と交渉するはめになったんだ。ちゃんと貯め込んでた財産俺らに渡してくれよ?」
残念だけどお前らの給料にほぼ持ってかれたから財産なんてほぼないけど?
「さっきから穏やかな顔しやがって、精々苦しめってんだよ‼」
「ああ、そうだね……」
適当に返したのがいけなかったのか、部下が突然怒り出す。
「俺たちをバカにしてんのか!」
「馬鹿にしてるだなんてとんでもない。ただ、俺は皆を信じたかった……けど皆は俺を信じられなかった。だからこれは全て俺が悪いんだろうな……ごめんな」
霞んでいく視界と意識をなんとか歯を食い縛って繋ぎ止める。
「まるで、この計画を知っていたような口ぶりだな」
………知ってたよ?
「8月10日。俺を殺そうとする大臣達を集めて、魔族と結託する事を秘密裏に決定。
8月12日。俺を殺す方法を探そうと俺の部屋に侵入し、金庫が開かず、解錠魔法で抉じ開けるが俺が前もって隠していた為、仕方なく入った証拠を隠滅し、悪態をつきつつ去って行った。
8月13日。魔族と結託するために、俺の取って置いた血を結託同意書と一緒に送る。この時に運び屋に、麻薬と一緒に届けるよう指示を出す。
8―――」
「「「っ⁉」」」
全員の顔がひきつる。知らないとでも思ったか?
「俺はな……お前らのこと、好きだよ。これまで長い間生きてきたけど、嫌いなやつなんて殆どいないんだ……」
喉の奥に込み上がってきた血を吐き出して、仰向けに寝転がり目を瞑る。
「こんな終わりかたも……悪くない。俺は十分生きた……」
涙が、水になった血に混じって一緒に落ちていく。
「俺が駄目だったんだろうな……誰にも祝福されていなくても、疎まれていても昔のように……また、名前を呼んでもらえる日がくると思ってた……」
この殺しは俺が招いた。俺への罰なんだろう。
「ごめん………皆の苦しみ、わかってやれなくて……」
目を閉じると、声が聞こえてくる。
『それでいいのか?』
……ああ、いいさ。
『じゃあ俺はやる』
……殺すな、といっても?
『殺るよ。俺の気がすまない』
相変わらず血も涙もないやつだ……
『お前がなよっちいからこれから死ぬんだろうが』
ああ、そうだな……
『悪くない終わりかただとか言いながら本音はどうよ?』
出来たら死にたくなんてないさ……でもこの件を丸く納めるには俺が死ぬのが一番なんだ。
『自分の命でさえ駒か』
自分の命だから駒のひとつだ。俺は賭けに負けた。だから賭けたものは全て失う、ただそれだけだ。
『よく言うねぇ? 温室育ちのお嬢様みたいな性格してたくせに』
こんな殺伐とした場所にいたらそれこそ性格変わるっての。
……なぁ、ひとつ聞いていいか?
『手短にしろよ』
俺ってそんなに頼りないか?
『ないね』
即答かよ……
『百人中百人はそう答えると思うぜ。だからさっさと逃げようと言ったのに……』
もう逃げないと決めたから。これが俺の運命だから。
昔みたいに逃げ回って怯えて暮らすのはごめんだ。
『それで殺されてたら無意味だろ』
いや、これでいい。……俺って死んだらどうなるんだろうな?
『この世界もまるごと消えるんじゃないか』
いや、まさかそんなこと……あるのか?
死んだことないからわからん。
『んじゃいってくる』
……行かないで欲しいんだけど個人的に。
『ハッ! こんな美味そうな獲物逃すかよ』
その言葉を最後に、暗い水の底に沈んでいくような感覚がした。もう二度と浮上することはできないんだろうと、そう思うとこいつとの会話も感慨深いものになる………気がする。
『全員残らず……殺してやる』
あいつの最後の声を耳にして、そのまま完全に意識が途切れた。
更新速度が亀なのは気にしないでいただけるとありがたいです。