星に流れて
1週間後後、宇宙規模での戦いというものにも慣れてきた? ような気がする頃合いにホワイティンから各国への周知と防衛部隊の展開がおよそ整ったという連絡が入ってきた。
「いよいよ、ってところか、しかしよく他国が納得してくれたな、危険性の高い戦いになるってことなのに」
俺はこんなリスキーな戦いを発生させることに納得してくれたツィスィとインダスト以外の諸国の頭を疑う。大体は保身に走ってそんなことはしないでくれと圧力をかけてきそうなものだが。
「お姉さまの崇高な理想が理解されたってことですわ」
スィは腕を組み当然ですわ、といった感じでうなずいているが、怪しい……
「……あなた洗脳してないでしょうね」
ツィはじと目で俺と同じ疑問を投げかけた。慌てて弁解するスィ。
「いえ、すべての国に永劫の繁栄を約束しただけですわ、うふふふふ」
目をそらしながら、間違ったことは言ってないから怒られる余地はないはずだと目を泳がせてるスィ。
確かに事が成功したなら、約束してもいいのだろうが……事実とは著しく違う説明に俺はどうしたものかと考え込んでしまう。
「まぁいいんじゃない。私たちが勝てばいいんだから、負けた時も先代がなんとかしてくれるでしょう」
ツィは比較的楽観視しているが、これまで助けてくれなかった先代に期待していいものかなぁ。
「とにかく、これでいつでも、最終決戦が開始できる状況になったってこと、心残りはない?」
スィが俺たちに問いかけてくる。心残りか。
「俺らが世界喰らいの騎士になったとしても、みんなにはまた会いに行けるんだよな」
単純かつ一番気になるところをぶつけてみる。
「表であったことないのよね、世界喰らいのドラゴン、外に出れるって言う保証がないか心配? なら大丈夫よ、あえるわ、絶対」
スィはわりと自信ありげに答える。何か根拠でもあるのだろか?
「会いたいって気持ちがあるんですから、神様になったとしても会えます、絶対。純粋な世界喰らいのドラゴンとして中途半端な私とお姉さまだから、完全な概念になるってことはできない気がしますし。それに会う約束をした人が何人もいるし、約束は破れないでしょう?」
抽象的でよくわからない部分が多いが、会いに来れることに俺は安心した。ずっとすべてを見守るだけの役目なんて疲れてしまうものな。
「だとしたら、なんで先代は絶望してしまったんだ? 直接手を貸してやるなりすればどんな世界だってよくなるはずなのにな」
確かな力と優れた思想を持つものがすべてを導けばユートピアなんて簡単に作れそうなものだが、と俺は考えてしまう。だってそうだろう。与えられるものは与えられて、手ほどきまでできるのだから失敗しようがない。
「サトはほんっとうにいい人ですね」
「スィ、それどういうことだよ」
「人は、いえ、私たちは愚かです、だからより多くを求めて欲を出して成長し、逆に奪われるものも出るのです、たとえお互いの共存可能、長期成長タイプの関係であっても…だから、お姉さまはある意味では力による管理を選ばれたのです」
「そう、かね、お前たちが仲直りした後も世界喰らいになりに行く気満々なのはなんでかと思ったが、単純にそうしないといけないぐらいに、もう世の中煮詰まってきているっていうことか」
「人が泣くのはもう見たくないから、理想に賭けてみる、決して愚かな行いではないと思います」
宇宙空間の星々を見つめる、さまざまな瞬き、命の輝き。
それら一つ一つどれもが美しく尊い。
それをすべてしょい込むことはできなくても、きれいな形に並べることはできるか……
「傲慢かもなぁ」
「うん、傲慢だと思うよ」
ツィが答えてくれる、だが、その眼は慈しみに満ちている。赤子を愛する母のように。
「でも、樹が大きく育つには枝を間引くことが必要なの、私はそれを引き受けるわ、さぁ、行きましょう」
ツィは地の球へと降り立つ準備をはじめようと意思を伝えてくる。俺とスィもそれに合わせて地表へ降り立つべくサイズと防壁を調整していく。大気圏……ゆっくりゆっくりとツィのサイズと小さくなり、コントロールも楽になってくる。
そして人並みのドラゴンサイズになって着陸……ここまでイメージトレーニングできるようになった。
「さぁて、今日はもう休みましょう、そして、明日出陣、ということで……出陣式の用意をさせることにしましょう、アクアさんの力を借りれば私の力で各員とお話をすることぐらいはできるでしょうから」
スィが気を利かせてくれてそんなものまで準備してくれているようだ。本当によくできた妹だ。
「ありがとうスィ、やっぱりみんなと挨拶してからじゃないと締まらないからね」
ツィの言う通りだあな。
その日、俺とツィは同じ部屋で親交を深めたのち、次の日を迎える。
また彼らと出会えるのだろうか。
明日は、出陣式の日である。
しんらばんしょーんと月末の忙しさに負けて文章量が少ない!




