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バレット

 出発してすぐに、小高い丘に陣取るインダストの兵士の小隊と遭遇し、戦闘を覚悟したが何か様子がおかしい。こちらをおびえた目で見て、襲い掛かってくる様子がない、ただ、何か信号弾のようなものを打ち上げたが。


 その様子を見て、捕虜になっているピーターが事情を聞きに行く。まぁ教えてはくれないだろうが……と思ったが、何故か教えてもらえたらしい。


「どうやらテールナにいる指揮官に貴賓として招かれているらしいですよ、私たち。そのうちに迎えが来るそうです」


 迎え、ねぇ、丁重にも迎えまでよこしてくれるとはものすごい余裕だ。


「昨日までは襲い掛かってくるだけの状態だったのにいったいどういう腹だ?」


 俺はピーターを見て、速すぎる対応の変更に対する疑問を述べる。


「わかりません、私どもへの対応を見て負けると受け入れたか、心変わりしたのでは?」


 ピーターは楽観的な意見を述べる。


「あるいは、スィが私とお話しましょと招き入れてるか、だね」


 ツィがおそらくそうであろう予想を述べる。


 そして、ツィの予想通り、奇怪な戦闘艦が飛んでくる。バレットだ。


「お久しぶりです、ツィ様、サト様、ガイア様と……誰?」


 船上から懐かしい声が聞こえてくる。指揮官殿だ。


「情けないことに捕虜になりました、インダストワーム砦守備隊長ピーターと申します」


 本当に情けなさそうに縮こまるピーター、が、頑張れ。


「ふむ、おつらぁい。まぁ一同のお仲間として行動してるのなら今は共に迎え入れましょう」


 あ、指揮官殿案外寛大だ。よかったよかった。


「申し訳ありません」


 ほっと、息をつく中隊長殿。身分としては中隊長のが偉いのだが、たぶんあの方直属であろう指揮官殿には権威なんて通じないだろうし……


「さてさて、皆さん、バレットに乗り込んでいただけますか。わが主がいまかいまかとおまちかねですので」


 バレットのから梯子が下ろされる。近くで見て昇ろうとしてみると相当な大きさで戦闘に使ったらどれだけの脅威となるのか、人員輸送だけでも相当な脅威になるなこれはとしみじみと感じながら上がっていく。


 何かあった時のため、最初に俺、次にガイア、ツィ、最後にピーターという順番で昇っていく。ジルはガイアが蔦で作った道を歩かせていく。


 さて、鬼が出るか蛇が出るか、と思って登った甲板には指揮官殿と機械化小隊が並んで待っている以外特には変わった点はなかった。


「いらっしゃいませ、ツィ姫、及びその後一行様、我らが快適な空の旅をご約束いたします」


 指揮官殿がマイクを持って挨拶してくる。


「ワープは使わないのか?」


 ツィが疑問に思っていたことを率直に聞いてみる。


「使えることをご存知でしたか、しかし、人体には非常に有害ですので使用は致しませんご了承ください。

なお質問なども、この後予定されているあの方との会食にて行ってくださいませ、我々から引き出すよりよほど迅速に、確実な答えが引き出せると思われますので」


 そういうと、バレットはものすごいスピードで動き出した、この速さは……赤龍にも匹敵するのではないか?


 だが出発後、加速しきった後は不思議と揺れはなく、立つことへの困難は感じない。


「ものすごい技術ですねどこの国のものでしょう」


 船内へは中央休憩室のみ入室が許されてる、そこでこんなものまであるのかと見て回ってる俺にピーターが俺に話しかけてくる。


「お前の国のだよ」

「まさかそんな、我が国にこんな巨大な期間を作る技術はまだありませんよー」

「まぁいろいろあって、うちから技術流出してるんだよ」


「それでもこんなもの作ったらまずお披露目するでしょう、何故隠しておくんです」


「……使う手段が裏の手段だからだろ」


「確かに、拉致暗殺誘拐思うがままですね、これさえあれば」


「対外的に表にできないわな、こんなの」


 この船一つと機械化小隊でどんな兵士にもなしえない働きすら可能かもしれない。 


「まぁ考え込むのはやめて、景色でも見てみようぜ、こんなのめったに見れないからな」


 俺たちが、外の風も浴びてみるかと出てみると、ツィとガイアが指揮官殿に何か話しかけている。


「あの方、ってスィなんでしょ? ねぇ、今どう過ごしてるの、どう助かったの、どうしてインダストに、教えて」


「いえ、その、できればご本人に確認していただきたいのですが、私機械ですから命令されたこと以外は苦手なんですよ、感情ないですし、プログラムですし」


「苦手ということはできるということだろう、頼む、事前に知っておきたいのだ」


 ガイアも食い下がる。やはり気になることは現在のことか……


「あー……それぐらいにしてやったら、たぶんお仕置きされるだろうし、また」


 俺は横から指揮官殿を助けてやるように助け舟を出す。


「はい、はいはい、そういうことです、もうどれがNGワードかわからないぐらいの質問で…」


 指揮官殿は俺に謝辞を述べ手を合わせる。


「そういうことなら仕方ないけど」


 ツィもそういうならと諦めてくれたようだ。そのまま風にあたりにいった。


「あ、ありがたい」


「いや、なんてことはない、あいつらの待ちきれないって気持ちもわかるが、あんたのおかみに従うってだけの苦労もわかるからな。ところでジルは落ち着いてるか?」


 俺はこの空中で愛馬が不安で泣いてないか心配で仕方なかった。


「ええ、途中でふわっとした時は少し慌てていましたが、今は全く、いい馬ですね」


「だろう」


 さすがだぜジル。俺と同じで図太い神経もってやがる。


「っと、そんなこんなを話してるうちに見えてきましたよ、今のテールナが」


「今の?」


 俺は奇妙な言葉じりが気になって甲板の端によって、テールナがあるという方角を見る。


 あるのはとんでもない大きさの塔、いや、円状の城のみだ。


「なんだぁ、あの奇妙な円の城は…」


「テールナです」


 ツィとガイアとピーターもこちらにやってきた。


 一様になんだあれはと問うてくる。


「テールナですよ、白騎士殿によってつくりかえられた。絶対不可侵の城塞です」


「町の人間は!」


 ツィが怒鳴りつける。 


「最下層で無事に暮らしてますよ」


「我らの兵士は?」


 ピーターが問いかける。


「少々複雑ですが、配置について護っていただいてます」


「この後の予定は?」


 俺が問いかける。


「素敵なティータイムです」


 指揮官殿はにこりと、笑った。

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