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そこにあるもの

 静かだ、静かだが……何か緊張のようなものが部屋から途切れない。

 10分ほどたってみてもそれは変わらず、布のずれの音が気になったり、寝返りをうとーとして木のきしむ音がして変わらない。

 

 この雰囲気じゃあ寝れないと、誰かが諦めたんか。がさごそ、ベッドから降りる音が聞こえたかと思うと、俺の方に足音が向ってきて、耳元でこうつぶやかれる。


「起きてる?」


 ツィの声であった、やはりずっと内に秘めていたことを話した後なのだから、何かしら反動があると思って起きていていて正解であった。


「起きてますよ、そう来ると思ったんだ」

 俺も囁き返す。


「なんだか後の二人…も起きてる気がするけど、ごめんなさいね、今は二人きりにさせてね」


「……」

「……!」

ピーターは寝たふりが上手だが、ガイアは体が硬くなって逆にばればれである。


「じゃあ、屋上行こうか」


 部屋を出てしばらく歩くと、ツィは見晴らしのいいところに行きたいと言って歩き始める。


「そうだな、それで今日はどうしたいんだ?」


 俺は抱きしめろって言われるぐらいまでならやっても浮気じゃないよねと考えながら問いかける。


「んー、考えてみる、私が本気になれば押し倒すのぐらい簡単だからね。でもそれじゃつまらないでしょう」

「押し倒すのが簡単って体格差を考えろよ。それともドラゴンの姿でハグされるのか俺は」


 ドラゴンの姿の人間とやる趣味はないぞ俺は。と冗談めかして笑う。


「そういうわけじゃないんだけどね、じゃあちょっとサービス」


 そうツィが言うや否や、階段で屋上に向かっていたはずの俺の体は。


 俺の体は屋上の木の床の上に横たわっていた。

 何が起こったのかはわからない。そして体を一切動かすことができない。


 数分するとツィが追い付いてきて、俺の顔の上に腰掛ける。


「……!?」


 何てところに腰を掛けてくるんだ!

 だが声を出すこともできない、口も硬直してるからだ


「これが私の能力のほんの一部。ほんのね、サトの体をお人形さんのように移動させて、動かして、操って、襲うことなんて造作もないのよ。消滅させることすらね。はい解除」


 俺はそっとそっと、ツィのお腹のあたりを持ち上げると慎重にローブから脱出していく。

 そして、脱出するとゆっくりと地面にツィを戻していく。


「ちなみにサト、体は動けなくても、反応はするのよ、大きくなったりね」

「……男の性だから、そういうのいじらないでくれる?」


「お前の能力がすごいっていうのは存分にわかりました。はい存分にでもなんでこれまで封印してたんだ」


「使うたびに、己の中のドラゴンの部分の成長がものすごいことになるのよ。簡単に言えば人でなくなるっていう」


「それって不味いの、変化できるならいいじゃない?」


「子羊のスープの子羊100%になったら私完全に子羊になっちゃうじゃない、スープ分0、人間味0、国造りのドラゴン、つまり各騎士のご家族様以外、人間に完全になる術は使えないから、もう戻れないわ」


「つまり純粋なドラゴンになっちまうのか、って、そんな術気楽に使うなよ!」


「今の程度なら髪の毛一mmぐらいよ、それにスィと戦うなら説明しておかないと戦えないわ、私とあなたが組んでたたかわないと……絶対に勝てない。それに今の力制御し損ねたらあっさり国が崩壊するんだから」


「怖っ!?」


「どちらかというと私のが破壊の力なのよね、なんで予言は私を救世主扱いしたのかしらね」


「だから世界を滅ぼす能力を持たないスィを救えると信じてるのか」


「ええ、間違いないと思うわ」


 優しい奴だよお前は…そう思うと俺は思いっきりツィを抱擁してやる。


「……!?」


「優しいなぁツィは、この前はごめんな、ウヅキがどうのこうのなんていって、俺は純粋にお前のことが好きになれそうな気がしてきたよ。まだ少し時間はかかりそうだけど……」


「! むー!  むー! 離せ 離せ! 変態!  変態!   …なによ、これだけ……? いくじなし……」


「ははは、男の恋愛は昔の日記帳に書いて大事にとったままだからな、まだ、すこしだけ、な」


「まぁいいよ、それでも、あと少しだけ待ってあげるから、私が気が短いんだからね、はやくしてよね……スィにも、こうやって人の楽しみや喜びを教えてあげれば、きっと普通の生活が取り戻せて、人間らしく慣れて、予言なんて実現しようがなくなるんだ、私はそう信じてる」


 ツィは比較的平静を取り戻したようだ。いやお互い熱でやられてる気がしなくもないが。


「ああ、思いっきり会いに行こうぜ、幸いにも、生きてた妹にさ!」


「そうだね、再会できるなんて本当はうれしい事なんだから幸いにもだ!」


「ああ、そう決まったらとっとと寝ようぜ、寝不足でクマなんて作って会いに行ったらがっかりされるぜ」


「そうだね、寝よう寝よう」


 俺たちは部屋に戻り、静かに戸を開けるとベッドに入り、眠った。

 ガイアとピーターはさすがに完全に眠りについていた様子だから、気を使って歩くのが大変であった。

 

 翌日の天気は晴れ、妹に会いに行くにはいい天気だ。


「ジルさんですか、ピーターです、よろしくお願いします」


 ピーターは俺のジルに挨拶をしている。几帳面な男だ。


「ヒヒン?」

「人懐っこい馬ですねえ」

「あれ、そういうわけでもないんですが…馬に慣れてるから雰囲気で嫌われないのかな…?」


 その様子を見てツィが納得がいかないとぶーたれている。


「ああいう態度を取るとまぁ駄目ですよね、馬は賢いですから」


 ピーターがそう述べるにつれ、ツィはダメージを受ける。


「私はドラゴンだから嫌われてるだけで、ジルちゃんはゴブリンから逃げる時も途中までは乗せてくれたよね、安全なところにつれてくまではしたがってくれたよね?」


「あーあー、懐かしい……やっぱお前ワープできたってのにジル安全なところまで連れてってくれてたのか、ありがとうな」


 俺がなんとか復帰させようと、当時の助けについての礼を言ってやる。


「あ、えへへ、当然だよ当然」


 照れてとりあえずジルに嫌われてたことを忘れるツィ。


(だが、危険な状況作ったのお前だけどな)


 俺は心の中で毒づくが別に口にはしない、さほど恨んでもいないし、突込みを入れてやりたくなっただけで。 

 そして、俺たちは出発する、おそらく白騎士、もしかしたら妹が待つであろう。テールナへ。


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