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アクアの調べ

 目の前の水の鏡に映っているのは確かに以前見た青騎士殿であった。


 さまざまな趣向を凝らしたチャームで飾り付けたローブは遠くで見たときに比べると神々しい、そして、ヴェール越しに見える顔はヴェール越しにでも見渡すことができ端正な顔立ちがうかがえる。


「お久しぶりですね、サトさん」


 青騎士殿はなぜか俺にさらに挨拶を加えてくる。


「お久しぶりです。えっと……」


「アクアです。略してアクアとお呼びください」


「全然略せてないですよ」


 俺は見たことがないタイプのノリに多少戸惑いながらも丁寧に突っ込む。


「だって略したらアクとかになっちゃうじゃないですか」


 アクアさんは全身でそれは嫌です。といった感情を表すかのようにぶるぶると震える。


「ところで、水鏡の儀式って何なんです?」


「水鏡の儀式とは、水のマナを元とした通信の魔術の中でも高度な魔術で映像、音声を送り出すことができる。テレパシーとは違って大勢にものを見せるのに便利な儀式ですよ」


 アクア殿が俺に教えてくれる。たしかに、テレパシーだけで通話されても後から説明したりされたりするのは面倒だ。


「それに水の流れが、連綿と続いているところなら距離を無視して通信できるのが便利でな、アクアだったらこっちに移動してくることさえできるんじゃないか?」


 ガイアが横から入ってくる。


「お前が会話してると延々と変な話を続けて終わりがないからなアクア、とっとと本題に入ってくれ」


 ガイアが手を組み、早く早くとせかす、緊急の情報とやらが気になっているのだろう。


「あら、ガイアちゃんのいけず……ってそうね、それどころじゃなかったわね。お久しぶりです。あれから戦況はかなり変わっております簡単に説明いたしますと、白騎士どのが行方不明、黒、赤、私の部隊は現状を維持しております」


 俺たちは一様に緊急事態の部分は理解する。


「行方不明!?」


 みな鏡に顔を近づけ、説明を要求する俺たち、気圧されたのか、さすがにわかってますよ、ということかまったく無駄なく解説を続けてくれるアクア殿。


「はい、詳しい情報は不明なのですが私のテレパシーでも連絡が取れず、それぞれの体内の水分から位置データを確認しようとしてもノイズが入ってしまって……ノイズが入るなんて初めてで、私どうすればいいか」


「ノイズ、というと機械杖か、やっぱ?」


 俺はツィとガイアに確認をとるように聞いてみる。


「やはりそうだろう」


「やっぱりそうだと思うよ」


 うなずく二人。


「あの、機械杖とは?」


 アクア殿はまだ機械杖については承知してないらしい。この機会だから全軍に

伝えてくれとせつめいしておく。


 こちらの行動を読んで先回りしてきた竜魔術を扱った技術を持つ、人でない兵士、そして竜の魔術を封じる杖のこと。


「そんな厄介な軍団とものがあるのですか……皆さんにすぐに通達しておきます。しかしおかしいですね、そんなものがあるならほかの戦線に劇的な不利としてあらわれてもよいものですのに」


 アクア殿が首をかしげる。


「ちょっと待って、ほかの戦線では一切そんな報告がないの?」


 俺は思わず問いかける。


「はい、こちらの行動を先読みするような敵、機械人間、杖、そのどれもが報告なしです。あったとすれば旧式のバトルシップですが、空を飛ぶとかワープするとかそんな芸当は……」


 アクア殿は戸惑いつつもそう教えてくれる。だとすれば敵の本格的な狙いは。


「インダストの主とやらは、どうやら私たちに用があるみたいだね」


 ツィが歯噛みして答える。過去に何があったのか知らないが、悲痛な顔をしている。


「あわわわ、じゃあ、我ら各騎士は姫様たちのお側に固めたほうがよろしいのでしょうか」


 アクア殿が慌ててツィに問うが、それは普通の侵攻があった時にやばいだろう。


 ツィとガイアも同意見なのか即刻却下した。


「だめだよ。それじゃあ守りが手薄になりすぎちゃう。それに相手は本気で来てるって感じじゃなくて私と遊びたがっている節があるからね。下手に戦力を増やしても多分相手が増えるだけだよ」


「ですかぁ……」


 アクア殿は手伝えないことが口惜しいとばかりにうつむいていたが、パッと向き直ると。


「では後方の守りはお任せください」


と、元気いっぱいに答えた。


「うん、よろしく頼むよ」


「かしこまりました、それでは、水鏡の儀式を終了いたします、皆様、ご無事を祈っております」


 水の鏡が静かに水面に沈んでいき、その間もアクア殿は手を振っていた。


「面白いけど、いい人だなアクアさん」


 俺はツィとガイアにそう問いかける。


「うむ、憎めないやつだ」


「そうだね、私たちの癒しだよ」


 ツィとガイアは頷き、そう答える。


「あいつの親身になった情報収集のおかげで何度助けられたか知れんよ」


「まさしく私たちの生命線だね」


 俺はその評にへー、と頷きながらも、いいもんだな仲間っていうのはと昔のことを思い出す。


「まぁ、私のキャラを奪うから苦手なんだけどね」


 と、ツィがボソッと言うまでは……


 そして、ハートの村での出発準備が完了し、出発することを村長に伝えると村の衆に英雄たちの出発を伝えるから少し待っててくれという。


 俺たちはこれを持って行ってくれ、これも、と様々な食い物を持たされ、出発が1時間も遅れてしまった。


 そんな盛大な送り出しを背に俺たちは再び世界喰らいのドラゴンの祠へと出発した。

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