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真夜中の幻影  作者: しおる
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第1話 謎

午後10時。俺は集合時間ピッタシに学園前に着いた。家から学園までの距離徒歩で約15分。自転車は長年乗ってないせいか錆び付いており今すぐ乗れる状態ではないので毎日徒歩で登校している。修理などに出せばいい話だが面倒なので先延ばしにし今に至る。しかし毎日ウォーキングをしてるのにも関わらず体育の成績が伸びないのかが不思議で堪らない。


「よし、全員揃ったな?」


トウマの呼びかけで全員で点呼を取り、何ヶ月か前に噂になっていた学園の裏口を通り中に入っていく。ずっと思っていたのだが、うちの学園は噂が好きなのだろうか。噂にはなんらかの縁があるような気がする。


「うわ、怖~。ニイ、もう帰りたいよぉ」


あからさまにぶりっ子を演じているニイカはレイナの腕をしっかりと掴み、恐る恐る歩いている。レイナはそんなニイカに動揺など全くせずスタスタと学校内を歩いていく。


「レイナ、怖くないん?流石の俺でも結構怖いで...」


ナオは俺のシャツの裾を引っ張りながらニイカと同じように歩いている。幽霊とか信じないタイプの俺は平然として歩くことができた。トウマも幽霊なんて信じないタイプなので楽しそうに鼻歌なんて歌いながら歩いている。その鼻歌は「♪一攫千金~、億万長者~」と言ってるようにも聞こえた。


「...あれ、何?」


さっきまでなにも喋っていなかったレイナが突然ある方向に指を指した。レイナの指を目で辿ってみると謎の黒い影。黒い影は段々と近づいてくる。


「キャーーーー!!」


「うわぁーー!」


「...!?」


「えっ!?」


「わっ!」


みんなバラバラの方向へ逃げる。体力がない俺はすぐ近くの階段を降りたところでしんどくなり立ち止まった。自分でも情けないと思う。ニイカが叫ぶ前、あの黒い影が何かを言ってたのを確かに聞いた。ニイカの叫び声の大きさであまり聞こえなかったが。


「おまえがぎが?」


俺が聞こえた言葉を繋げてみる。しかし、なんのことだか全く分からない。とりあえず、トウマ達を探しに行くことにした。


「おーい、トウマー!ニイカー!レイナー!ついでにナオー?」


ありったけの声で叫ぶが誰も返事は帰ってこない。みんな外へ出てしまったのだろうかと考えたりもする。なんとなく怖かったため早歩きで歩いていると聴き慣れた声が聞こえた。


「...イツキ?」


「レイナ!他の奴は...一人か。」


「...うん。みんなどこ行ったんだろう。黒い影に拐われた?」


その声は決して小さい声ではなかったが微かに震えを感じた。レイナも怖いのだろう。


「キャーーーー!!」


「「!?」」


「ニイカ...!」


レイナが持ち前の運動神経を活かして全速力でニイカの声が聞こえる方へと走る。


「ハア....レイナ早いよ....え?」


俺の目に見えたのは倒れたニイカとレイナ。俺は当然レイナにはついて行けず、1分ほど遅く此処に着いたため何があったのかわからない。俺のいない1分の間に何があったのだろうか。息を確認してみると幸い息はあり気絶してるだけのようだった。


「どうする?」


「誰...?」


何処からともなく声がしたが周りには誰もいない。空耳だろうか。とにかくニイカとレイナをどうするかが問題だ。いくら男の俺でも女の子二人を背負うことはできない。此処で立ち止まるのもどうかとも思う...などと考えているとテクテクと足音がした。


「トウマ!」


「イツキ!な、何があったんだ?」


一瞬俺に会ってほっと安心したトウマだったがニイカとレイナをみて一気に青ざめた。


「俺にもわかんないんだよ。」


「とりあえずあっちの教室で休ませようぜ?」


「そうだな。」


俺はニイカを、トウマがレイナを背負う形で2-2の教室に入る。


「電気つけるぞ?」

俺は頷きその数秒後に明かりがパッパッと順番についてった。俺達はニイカとレイナを椅子に降ろし休憩できるようにした。


「あとはナオだけだな。」


「そうだな、ここだけ明かりついてるしすぐ来るだろ。」


「そういえばさっきの黒い影...なんだったんだろ?それにニイカ達...何があったのかもわからないし。」


「黒い影、しゃべ...」


黒い影が何かを喋ったと言おうとした時、教室のドアがガラガラと古びた音を出しながら開いた。


「おー!イツキ、トウマ!それに...え?」


「見ての通りだよ、俺らにもなにがあったのか分からない。」


「し、しんで...?」


「気絶してるだけ。」


「ああ、なんや...びびったぁ」


ナオも椅子に腰掛けぼーっとしている。トウマは何かを考えるように頭を抱え込んでいる。

しばらくすると


「ふぁああ....わっここ何処!?」


といつものぶりっ子の声で喋りだすニイカ。さっきまで気絶してたとは思えないくらい元気だった。


「気絶してたんだよ。何があったんだ?」


トウマはニイカに問いかける。ニイカが当てにならないことくらいみんな知ってるがまだレイナが気絶している限り頼りにできるのはニイカしかいない。


「えっとぉ、なんかさっきの黒い奴?に追いかけられて、ビリビリッってなっちゃって...それからは覚えてなーい。」


ビリビリ?みんなビリビリについて考える。しかしニイカの表現が抽象的すぎてみんなの頭にはハテナが沢山乗ってるように見えた。


「これは、レイナが起きるん待つしかないなー」


「なにそれぇ!ニイが役立たずみたいじゃない!」


ニイカは頬を膨らまして怒ったような素振りを見せる。今の事態について恐怖はないのだろうか。緊張感というものがない。


「ニイカ、覚えてるのはそれだけか?」


俺はニイカが他に知ってることがないか尋ねた。


「う、うん。それだけだよー?」


ニイカはそう言ってくるくると自分の長いツインテールを指で巻き始めた。ニイカのその動作は嘘をついた時にする癖だ。それにトウマも気づいたのかもう一度尋ねる。


「本当にか?本当に覚えてないんだなー?」


トウマの強ばった顔に恐怖を感じたのか、ニイカは諦めたような顔をして


「うっ...気絶した時、黒い奴が何か落としていったの。怖そうな箱だったから開けたらダメな感じかなと思った言わなかったの。」


「箱?」


俺は廊下にでてニイカが倒れた周辺を懐中電灯で照らして見る。すると窓側の壁に寄り添うように大きめの箱が置いてあった。その箱は歪なパーツが揃った顔が全ての面に描かれており、ニイカの言う通り開けてはいけないオーラを放っていた。それを持ってまた教室に入りみんなの前に置く。ニイカが「そう、これこれ!」と何故か嬉しそうにするがみんな箱に夢中になっていた。


「開けてええか?」


恐る恐るナオが箱を開けると、中からその箱より一回りほど小さな箱と小さなメモが置かれてあった。そのメモには「全員、揃ってから見るべし」と注意書きのようなものであった。


「レイナが起きてからの方がいいよな?」


俺達はレイナが起きるまでしばらく待つことにした。レイナが起きるまでの間、トウマはこんなことを言った。


「なあ、一攫千金狙えるってことはさ他の生徒もこうやって俺らみたいに夜の学園に入り込もうとするだろ?でも、今の所の噂では真夜中の学園に入った奴っていない...よな?」


嫌な悪寒が走る。他の生徒が真夜中の学園に入らない理由があるのかもしれない。


「俺、この学校入る前に聞いたんやけどさ...」


ナオが話しだした物語はとてつもなく恐ろしいものだった。

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