表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/8

つーか事情が何も分からないままどんどん進んでいく。

「時間が、何だって?」

 その少年(?)は、俺たちからほんの20メートルほど離れた樹にもたれ掛かっていた。

 胸ぐらいまで伸びた黒髪。緑色の目。邪悪な笑みを浮かべた、中性的な顔つき。

 そして、背中には黒い蝙蝠こうもりの羽のような翼や、魚を仕留めるもりのような細長い尻尾という、人間らしからぬパーツまでついている。


 ――――まるで旧約聖書に描かれているような悪魔。


「おい、おま――――」

「『おまえ』じゃない。僕の名は、アガリアレプトだ」

 俺が言い終わるよりも早く、アガリアレプトと名乗った悪魔は両手で俺の首を絞め、俺の言葉を遮っていた。息ができなくなる。

 だが、その悪魔は一向に力を緩めようとしない。それどころか、強くなっている気さえする。

 必死にもがくが、手は離れない。

「う……ッ!」

 苦しくて、声が漏れる。

「シグレっ!!」

 フィニアは右手を前に――――俺の首を握りつぶそうとさえしている悪魔に向けて――――なにやら呪文のようなものを唱え始める。

「An evil spirit is turned down and please protect people. Defense magic !!」

 意味は、「悪を退け、人を守れ」ってとこか? 中二設定つくるために覚えた英語が、こんな異世界で役に立つとはなぁ。

 俺は国語と英語の点数はいいんだよ。その2教科だけなら学年ベスト5に入ってるぜ。

 どうでもいいことを考えていたそのとき。

 突き出したフィニアの右手から、魔方陣のようなものが浮かび上がる。

 同時に、同じものが俺の足元にあるのも分かった。そしてフィニアが、

「Magic motion!!」

 と叫ぶと、魔方陣の光が増し、俺とアガリアレプトなる悪魔の間に光の壁を創り出す。

 バチィッ!と奴の手が弾かれる。

「ぐッ! お前らイマジンワールド人は攻撃魔法を使えないはずだっ……。どうして……!?」

 血で濡れた手を押さえ、アガリアレプトは問う。

「『アガリアレプト』って名乗ってるのに、そんなこともわからない? これは一応防御魔法だからセーフなのよ、たぶん」

「いやお前もわからないのかよ」

 つーか事情が何も分からないままどんどん進んでいく。疎外感パネェ。……ちょっと整理しよう。

 えーっと、『アガリアレプト』ってのはたしか『どんなに崇高な謎でも解明してしまう力を持つとされる悪魔』だったっけ。だからあの台詞か。

 で、イマジンワールドってのがこの世界のことだろ? ――――ってことは、この世界の人間は攻撃ができないってことなのか?

 そのとき、俺の頭の中に声が響いた。

【――攻撃ができるのはあなただけ……。何か武器を、強く思い描いて……】

 この声は……フィニア?

 どうやら、魔法とやらで俺の頭に直接話しかけてるらしい。よくわかんねぇけど、武器を想像すればいいんだよな?

 俺は目をつぶり、昔中二ノートに描いたある2つの剣を想像する。それが端から端まで明確になったとき、俺の両手に何かの感触があった。細長いものを持っているかのような感触。

 そっと目を開けると、俺の両手にはさっき想像した2振りの剣が握られていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ