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短編集

ヴァレンタイン

皆、バレンタイン作品書いてるので、便乗しちゃいました。

その場の思いつきで書いてるので、クオリティは期待しちゃダメです。

 2月14日。これは世に言うバレンタインデーと呼ばれる日だ。

 学校では女同士でキャッキャッ言いながらチョコレートの見せ合いをしている。男の方はと言えば、妙に殺気だっているのが、もてぬ漢(男)達。それとは対照的に、爽やかスマイルを浮かべるのが、もてる美男子達。そして、1週間ほど前から妙に女子に慣れ慣れしくなるそこそこな男の三種類に分けられる。

 俺はといえば中間者であり、バレンタインなんてチョコレート会社の策略に踊らされているだけだ。と叫びたくなる気持ちをなんとか抑え付けて、はしゃぐ女を見ている。

「明日か。バレンタインは…」

 一人、窓から顔を出して呟くと、

「ふむ。お前の思い人は幼馴染ちゃんか?」

 親友と呼べるべき、爽やかスマイルを浮かべた親友の声がした。

「バーカ。あいつとはそんなんじゃねぇつーの」

 そう短く切り返してやる。


 俺には一人、幼馴染がいる。頭も良くて、スポーツ万能。男勝りな所がたまに傷だが、良い奴だ。だが、中学に入ってからは喋ることも少なくなった。高校に入ってからはそれはさらに加速し、一切喋らなくなった。向こうから話しかけて来る事は何度かあったが、高校生にもなると周りの目を気にし始め、幼馴染だと冷やかされるのも嫌って、一方的に無視してしまった感じだ。

「そうか? 僕にはどうも良い感じにしか見えないけど」

「それは気のせいだ」

 幼馴染へ視線を向ける。なにやら談笑をしている姿が目に入る。

・・・アイツ、誰に渡すんだろ。

「今、「誰に渡すつもりだろう」って考えたでしょ?」

 親友が笑顔で言う。

「あのさ、人の心を読むの止めてくれない?」

 ほんとに、頼むからさ。

「素直になればいいのに」

「俺は素直だ。純粋で無垢だ!」

 胸を張って言う。

「ま、僕の出る幕じゃないね」

 爽やかスマイルを残して、その場を去った。なんかムカつく野郎だな。




 Happy valentine ?




「なんだよ。話って」

 丁度帰ろうとしていた、その日の放課後。俺は幼馴染に呼び止められた。

「貴方みたいな馬鹿な人には無縁かもしれないけど、明日バレンタインじゃない?」

 その言い方にムッとする。

「あー、そうだな。だからどうした?」

 もう教室には誰もいず、二人を咎める者も、冷やかす者もいない。

「実は、ある男子にチョコレートを渡す事にしたのよ」

 僅かにこめかみが反応する。肩にかけたかばんが嫌に重く感じ出した。

「へぇ。それで俺に何か用か?」

 平静を装って先を促す。

「貴方に手伝ってほしいことがあるのよ」

 意地悪そうな笑みを浮かべる。五年前ならもっと純粋な笑顔で微笑みかけてくれたというのに。

「他をあたりな。俺は忙しいんだ」

 肩にかけたかばんを背負いなおし、その場を後にしようとする。何故か? しるかよ。俺は一刻も早くこの場を立ち去りたかっただけだ。

 しかし幼馴染はそれを許さなかった。

「待ちなさいよ!」

 少し焦った声で、俺を呼び止める。

「なんだよッ」

 何でイライラしているんだろう。俺に睨まれた幼馴染は少し戸惑いながらも、

「て、手伝いなさいよ」

 と言う。

「勝手にしやがれ!」

 そう吐き捨てると、スタスタと歩き出す。

「ねぇ、待ってよ。いかないでよ!」

 袖に微かな抵抗を感じた…が、

「鬱陶しいな!」

 思いっきり振り切り、そのまま振り返りもせずに歩き去った。





 bad valentine ?



 翌日。来なくても良いバレンタインデーだった。昨日の事がさらに気まずくする。

「おはよ」

 親友に一声かけると、

「お、元気ないな」

 とあっさり見破る。なんなのコイツ。エスパー?

「なぁ、アイツが本命チョコを渡す相手知ってるか?」

 何気なく、親友に聞いてみると、

「あ、は? え!?」

 予想外だったらしく、珍しく取り乱す。

「だよな。あんな男勝りな奴が一体どんな相手に…」

 と言いかけて、親友の視線に気付く。

「なんだよ」

 俺の顔を見て、そして他の女子と談笑中の幼馴染を気の毒そうな目で見て、再び俺を見て、

「オマエ、死ね。むしろ殺させろ」

 と言い出す。

「は!? 何で死ななきゃいけないんだよ!?」

 全力でつっこんだ。

「もういい…」

 今度は俺を気の毒そうな目で見て、勝手に席についた。

 もう意味分かんない。




 rasen world valentine !




「ちょっと待ちなさいよ」

 また帰ろうとした時、幼馴染に呼び止められる。

「ンだ…」

 と言いかけたその時、

「ん」

 と目の前に小箱が差し出される。

「「ん」って…」

「ん!」

 今度は押し付けるように俺のポケットに入れると、そのまま自分のかばんを持って走り去る。

「一体、なんなんだよ…」

 ポケットから取り出すと、手紙が一緒に入っていた。



『あんたのせいで、渡せなかったじゃない。代わりにあんたが食べなさい。勿論義理よ! 後、ちゃんと感想を聞かせなさいよ。ホワイトデー、楽しみにしてるから』



 そう丸い字で書いてあった。

「俺のせいで、渡せなかったのか。俺経由で渡せる奴と言えば…、アイツしかいないか」

 親友の顔が目に浮かぶ。あの爽やかスマイルはクラスでも評判だ。

「こんな手紙を貰っちまったが、今からでも渡してやるか」





 chocolate is sweet ?





 事の次第を説明して、今から渡しに行くからと告げると「いるかよ。お前が食え。んで、死ね」と言われた。

 ベッドに寝転がりながら箱を開けると、ハート型のチョコレートが入っていた。その真ん中に『好き』と文字が躍っている。

「…成る程」

 妙に合点がいった気がした。親友の反応も、幼馴染の反応も。

明日、謝らないとな。パキッ、と軽い音がして、チョコレートの端をかじる。

「うえぇ!?」

 突如、吐き気に襲われた。

「一体何を入れたんだ!?」

 そういえば、アイツは家庭科の調理実習だけ点数が悪かったのを忘れていた。評価オール5を逃したと愚痴っていたっけな?

「げほげほっ」

 蒸せながらも、もう一度俺の歯型がついたチョコレートを見る。

「不味過ぎだろ…」

 明日の感想は決まったようだ。嫌な味が口の中を走り回る感覚。

「んでも…」

 どうしてだろう。どこか甘かった気がする。

 もう一度、パキッとかじる。

「うえ。そんな事無かった…」


 文句を言いながらも全てを平らげたのは、どうしてだろうな。



valentine chocolate is very bitter , but very sweet!

>「実は、ある男子にチョコレートを渡す事にしたのよ」


何故、ある男子が主人公なのにわざわざ言ったのか。それは、


>高校生にもなると周りの目を気にし始め、幼馴染だと冷やかされるのも嫌って、一方的に無視してしまった感じだ。


この行為へのささやかな仕返しだったのかもしれません。

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