エンディング閲覧日
見ていただきありがとうございます!本当にそれだけでも嬉しいです!!
一度でも読んでいただけたら最高すぎます
人は十八歳になると、自分の人生の最期を見る。それをエンディング閲覧日という。夢の中で見る。翌朝には忘れる。例外はない。
例外はなかった。僕が現れるまでは。
十八歳の誕生日。僕は見た。
白い部屋。老人の自分。ベッドの上。死の間際。そして最後にこう言った。
「間違えた」
それだけだった。
翌朝。僕は忘れなかった。
世界初の事例になった。テレビ、研究者、病院。みんな聞く。
「何を見た?」
僕は答える。
「間違えた、でした」
意味は分からない。だが人生はその一言に支配された。
間違えた。
何を?
進路か。恋愛か。仕事か。人生最大の後悔があるのだ。未来の僕には。
だから僕は慎重になった。
大学を決める時も。恋人を選ぶ時も。就職する時も。結婚する時も。
いつも考えた。
これか?
未来の僕が言った「間違えた」は。
違う。きっともっと大きな失敗だ。そう思った。
二十五歳。友人が起業に誘った。断った。失敗したら嫌だった。
三十歳。海外勤務の話が来た。断った。失敗したら嫌だった。
三十五歳。好きだった女性にプロポーズしようとしてやめた。間違えたくなかった。
四十歳。親友と喧嘩した。謝るべきだった。でも、もし謝るのが間違いだったら? そう考えて何もしなかった。
人生は続く。
何も選ばないまま。
安全な方へ。確実な方へ。後悔しない方へ。
気付けば七十歳だった。
独身。子供はいない。親友とは絶縁したまま。平凡な会社員として定年退職。
悪い人生じゃなかった。
でも、どこか空っぽだった。
そして八十六歳。
病院。白い部屋。夢で見た景色。
僕は理解した。
来た。
エンディングだ。
あの日見た未来。ついに答え合わせの時だった。
僕は震えていた。
何を間違えた?
どの選択だった?
どこで道を誤った?
すると病室の扉が開く。
若い医者が入ってくる。カルテを持っている。
「お加減はいかがですか」
僕は答えない。その顔を見ていた。知らない顔だった。でも、なぜか懐かしかった。
医者は笑う。
「実は僕、あなたの講演を聞いたことがあるんです」
「講演?」
「はい。高校で」
記憶を探る。思い出した。六十代の頃。母校に呼ばれた。進路講演だ。
医者は続けた。
「あの日、あなたが言ったんです」
「失敗を恐れるなって」
僕は驚いた。そんなこと言っただろうか。
医者は笑う。
「そのおかげで医者になれました」
「本当に感謝してます」
そう言って頭を下げ、部屋を出ていった。
静寂。
僕は天井を見る。
不思議な気分だった。
失敗を恐れるな。
僕が?
そんな人間だったか?
その時、ふと気付いた。
講演の日。生徒に質問されたのだ。
『人生で後悔したことはありますか』
僕は何と答えた?
思い出せない。
いや。
思い出した。
僕は笑って答えた。
『挑戦しなかったことかな』
心臓が大きく鳴った。
その瞬間、八十六年分の人生が一気に押し寄せる。
起業を断った日。
プロポーズをやめた日。
謝れなかった日。
全部。
全部。
同じ理由だった。
間違えたくなかった。
未来の一言が怖かった。
僕はずっと、後悔を避けるために生きていた。
違う。
後悔を避けるために、人生そのものを避けていた。
涙が出た。
そこでようやく理解する。
十八歳の僕は、エンディングを見たんじゃない。
エンディングを作ったんだ。
あの一言を見た瞬間、人生はそこへ向かってしまった。
未来が人生を決めたんじゃない。
人生が未来を作ったんじゃない。
もっと最悪だった。
僕が未来を信じたせいで、未来を完成させてしまったんだ。
窓の外で夕日が沈む。
夢と同じ景色。同じ部屋。同じベッド。同じ人生。
そして僕は、十八歳の時に見た通り、最後の言葉を口にする。
「間違えた」
読んでいただいてありがとうございます!
評価していただけたら嬉しすぎて泣きます




