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エンディング閲覧日

掲載日:2026/06/05

見ていただきありがとうございます!本当にそれだけでも嬉しいです!!

一度でも読んでいただけたら最高すぎます


人は十八歳になると、自分の人生の最期を見る。それをエンディング閲覧日という。夢の中で見る。翌朝には忘れる。例外はない。


例外はなかった。僕が現れるまでは。


十八歳の誕生日。僕は見た。


白い部屋。老人の自分。ベッドの上。死の間際。そして最後にこう言った。


「間違えた」


それだけだった。


翌朝。僕は忘れなかった。


世界初の事例になった。テレビ、研究者、病院。みんな聞く。


「何を見た?」


僕は答える。


「間違えた、でした」


意味は分からない。だが人生はその一言に支配された。


間違えた。


何を?


進路か。恋愛か。仕事か。人生最大の後悔があるのだ。未来の僕には。


だから僕は慎重になった。


大学を決める時も。恋人を選ぶ時も。就職する時も。結婚する時も。


いつも考えた。


これか?


未来の僕が言った「間違えた」は。


違う。きっともっと大きな失敗だ。そう思った。


二十五歳。友人が起業に誘った。断った。失敗したら嫌だった。


三十歳。海外勤務の話が来た。断った。失敗したら嫌だった。


三十五歳。好きだった女性にプロポーズしようとしてやめた。間違えたくなかった。


四十歳。親友と喧嘩した。謝るべきだった。でも、もし謝るのが間違いだったら? そう考えて何もしなかった。


人生は続く。


何も選ばないまま。


安全な方へ。確実な方へ。後悔しない方へ。


気付けば七十歳だった。


独身。子供はいない。親友とは絶縁したまま。平凡な会社員として定年退職。


悪い人生じゃなかった。


でも、どこか空っぽだった。


そして八十六歳。


病院。白い部屋。夢で見た景色。


僕は理解した。


来た。


エンディングだ。


あの日見た未来。ついに答え合わせの時だった。


僕は震えていた。


何を間違えた?


どの選択だった?


どこで道を誤った?


すると病室の扉が開く。


若い医者が入ってくる。カルテを持っている。


「お加減はいかがですか」


僕は答えない。その顔を見ていた。知らない顔だった。でも、なぜか懐かしかった。


医者は笑う。


「実は僕、あなたの講演を聞いたことがあるんです」


「講演?」


「はい。高校で」


記憶を探る。思い出した。六十代の頃。母校に呼ばれた。進路講演だ。


医者は続けた。


「あの日、あなたが言ったんです」


「失敗を恐れるなって」


僕は驚いた。そんなこと言っただろうか。


医者は笑う。


「そのおかげで医者になれました」


「本当に感謝してます」


そう言って頭を下げ、部屋を出ていった。


静寂。


僕は天井を見る。


不思議な気分だった。


失敗を恐れるな。


僕が?


そんな人間だったか?


その時、ふと気付いた。


講演の日。生徒に質問されたのだ。


『人生で後悔したことはありますか』


僕は何と答えた?


思い出せない。


いや。


思い出した。


僕は笑って答えた。


『挑戦しなかったことかな』


心臓が大きく鳴った。


その瞬間、八十六年分の人生が一気に押し寄せる。


起業を断った日。


プロポーズをやめた日。


謝れなかった日。


全部。


全部。


同じ理由だった。


間違えたくなかった。


未来の一言が怖かった。


僕はずっと、後悔を避けるために生きていた。


違う。


後悔を避けるために、人生そのものを避けていた。


涙が出た。


そこでようやく理解する。


十八歳の僕は、エンディングを見たんじゃない。


エンディングを作ったんだ。


あの一言を見た瞬間、人生はそこへ向かってしまった。


未来が人生を決めたんじゃない。


人生が未来を作ったんじゃない。


もっと最悪だった。


僕が未来を信じたせいで、未来を完成させてしまったんだ。


窓の外で夕日が沈む。


夢と同じ景色。同じ部屋。同じベッド。同じ人生。


そして僕は、十八歳の時に見た通り、最後の言葉を口にする。


「間違えた」

読んでいただいてありがとうございます!

評価していただけたら嬉しすぎて泣きます

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