表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
姉のBLゲームの世界に転移したけど、“スペアミント”の俺は香りの終焉を止めに行く 〜香奏院とヴァイオレット・ノート〜  作者: あしゅ太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/83

4-2

 朝の光がカーテン越しに差し込み、

 ミントと柑橘とスパイスの混ざった、妙に刺激的な空気が漂っていた。


 


「……なあ、スペア」

 隣で寝返りを打ちながら、オレンがぼそりと呟く。


「寝返り打つたびに胡椒の香りで目ぇ覚めたんだけど……結局、朝までいたのかよ」


 


「……いたな」

 低く落ち着いた声が返る。

 ベッドの向こう――黒いコートのまま、ブラックペッパーが真顔で座っていた。


 


「お前……ほんとに朝まで監視してたのか?」

 オレンが眉をしかめる。


「監視ではない。確認だ。――防香結界を張った」


「……防香?」


 


 身を起こすと、確かに周囲の空気が違っていた。

 淡い胡椒の膜のような香気が、俺の周囲だけをやわらかく包んでいる。


 


「穢香の干渉を防ぐためだ。

 お前は“混ざりやすい体質”だと前から言っている。

 何かあってからでは遅い」


 


「……つまり」

 オレンが腕を組み、半ば呆れ顔で言う。

 「スペアをお前の香気で囲ってたってことか?」


「そうだ」


「開き直るなよ! 完全に独占行為じゃねぇか!」


「違う。保護だ」


 


 ピリッと空気が弾ける。

 オレンの柑橘の香りがふわりと膨らみ、ペッパーの胡椒とぶつかった。

 スパイスとシトラス、鋭さと甘みがぶつかるたび、空気の温度が一度ずつ上がっていく。


 


「……じゃあさ」

 オレンが小さく息を吐き、挑むように笑った。

 「穢香を防ぐためって言うけど、

 要するに“香水結び”をしなきゃ関係ないってことだよな?」


「理屈の上では、そうだ」


「なら――こうしても問題ないよな?」


 


 次の瞬間。

 オレンが俺の肩を軽く引き寄せ――


 ちゅ。


 


 柔らかな音が響いた。

 柑橘が弾け、瑞々しい香りが一気に満ちる。


 


「っ……!?!?!?」

 脳が一瞬、完全にフリーズする。


「キスじゃ香水はできねぇし。……ノーカンでいいよな?」

 オレンが勝ち誇ったように笑う。


 


 その言葉の直後。


「なっ……!! それはダメだ!!!」

 ペッパーの声が鋭く跳ねた。


 


「なんで? 香水結びじゃねぇだろ? だったらお前には関係ないよな?」

 オレンが肩を抱いたまま、挑発的に目を細める。


「……離れろ」


「やだね。俺、同室の特権あるし」


 


 柑橘の甘さと胡椒の刺激が正面からぶつかる。

 空気が一瞬、火花のように明滅した。

 その間に、ミントの清涼が中和するように広がっていく。


 


 3つの香りがせめぎ合う。

 けれど不思議と不快ではなく、

 むしろ体の奥が熱くなるような、心地よい混ざり方をしていた。


 


「お前ら、朝からやめろよ……」

 俺は両手で顔を覆い、半分呆れたようにため息をついた。


 


 それでも、3人の間に流れる香りは――

 どこかあたたかくて、少しだけ甘かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ