あの日、魔法少女が現れた
怪人1-49
「15年前、あの日のことは今でも夢に見る」
電車を待っていたんだ。
ただ、それだけだった。
トモコとはいつもの待ち合わせ。ホームに立って、部活帰りの他愛のない会話をしていた。これから家で夕飯食べる前になにか食べたい、どこへ行こう。そんな、何の変哲もない会話をしていた。何もかもが、普通だった。
だけど、何かが違った。
突然、アナウンスが途切れた。ざわつく周囲を見て、俺は思わず顔を上げた。次の電車が遅れているのか? それとも何かがあったのか?
視線が駅の周囲を巡る。普段なら気にしない、そこにあるもの—自動販売機、ベンチ、喫煙所—何もかもが普通にそこにあった。だが、その時、ふっと視界が歪んだ。
「何だ…?」
駅に設置されていた大型看板が、根元からへし折れて飛んでいった。まるで、暴風に吹き飛ばされたように。何もかもが巻き込まれて、空中でぐちゃぐちゃになっていく。それが、俺の目の前で現実になった。
一瞬のうちに、辺りが異常な音で満たされ、騒然とした空気が流れた。何かが、何かが来ている。それを感じ取った瞬間、隣に立っていたトモコの姿が消えた。
目の前から消えた。
「トモコ?」
俺は必死に彼女の名を呼んだが、返事はない。周りの人々が悲鳴を上げ、動揺が広がる中、俺はその場で立ちすくんだ。
その時、視界の端に、異形の姿が見えた。
見たこともない、奇怪な姿の化け物。人間ではない、化け物が駅の中に現れた。巨大で、グニャリとした形をしたそれが、俺に向かって歩いてくるのを見て、直感的に分かった。
「俺は、死ぬのか……?」
死の匂いが、まるで空気を切り裂くように漂う。その瞬間、駅の中が一瞬で静まり返り、すべての音が消えた。
その時、空気が歪んだように感じた。振り返ると、白い光が差し込んできた。その中から現れたのは、何か異様な存在。
魔法少女。
あの日、魔法少女が現れた。
その姿は、目の前の化け物と対立しているかのように見えた。彼女が現れることで、空気が一気に緊張感を帯びた。
俺はただ、呆然とその場に立っているしかなかった。恐怖にとらわれ、何もできなかった。ただ、目の前で繰り広げられる、異世界の出来事を目の当たりにするだけだった。
そして、その後何が起こったかは、もう記憶にはない。
気がつくと、俺は救急隊員に処置を受けていた。赤い回転灯が無数に瞬く場所にはたくさんの人がいた。血を流す人、泣き叫ぶ人、なにかを探そうとする人、そして……床に倒れたままぴくりとも動かない人。
トモコは――動かない人間の方にいた。
その後のことは、思い出すのも辛い。




