藤原雪という魔法少女について
「A607の特性を考えれば、藤原雪が今回編成された魔法少女だけの学校に行かないって選択をしたのも、ボクは納得できるけどなぁ」
瑞穂は新しい菓子の袋を開け、くしゃっと音を立てた。中から取り出したスナックをひとつ咥え、さも他人事のように肩をすくめる。
「顔と名前が一致した相手を支配できる……そんな能力を持つ怪人が相手なら、無闇に人前に姿を晒さないのは当然のことだよねぇ。組織側もそれを認めてるし、むしろ賢い判断じゃない?」
瑞穂はひらひらと手を振りながら、どこか楽しげに言った。
だが——尾口は、その「合理的すぎる」選択がどうにも引っかかった。
まもなく十七歳になる少女が、そこまで冷静に動けるものだろうか。
尾口の知る高校一年生は、もっと衝動的で、もっと感情に振り回されるものだった。
組織の意向を理解し、敵の特性を計算し、自ら最適な行動を取る——まるで大人の軍人のようなその振る舞いに、違和感を覚えずにはいられない。
「尾口クンは、何をそんなに疑問に思っているんだい?」
瑞穂がこちらを見ながら、菓子をくわえたままにやりと笑う。
「……別に、そんなんじゃねぇよ」
尾口は短くそう返したが、内心ではまだ納得しきれていなかった。
本当に、ただの「合理的な判断」なのか?
それとも——藤原雪には、そうせざるを得ない何かがあるのか。
瑞穂はそんな尾口の考えを見透かしたように、面白そうに口元を歪めた。
「ま、あの子のことだから、どうせ何か隠してるんじゃない?」
そう言いながら、無造作に机の上に転がった書類を摘み上げる。
その書類には、藤原雪の活動記録が記されていた。
だが、そこには「彼女がどこにいるのか」だけでなく、「これまでの経歴」も具に書かれている。あやしいところはなにひとつない。
尾口はその書類の文字を見つめながら、ふと、瑞穂の言葉が引っかかった。
——何かを隠している?もしそうなら、いったい何を——
書類を見つめる尾口の視線を横目に、瑞穂はまた一つ菓子を頬張り、口の中で音を立てながら咀嚼した。




