入院
アルバイトを終えて帰宅すると、携帯に着信履歴が残っていた。藤原雪からだ。折り返すと、すぐに繋がった。
「……もしもし」
相変わらず感情が読み取りづらい、静かな声だった。
「おう、どうした? なんかあったのか?」
「……うん。怪我をしたの」
一瞬、心臓が跳ねる。
「え? 大丈夫か!?」
「大丈夫」
「いや、大丈夫じゃないだろ!? どこで? どこを?どんくらいの怪我だよ?」
「……今、病院にいる。今日は帰らない」
「えっ、入院?」
「……一応」
「おいおいおい、それ絶対大丈夫じゃねえじゃん! どこの病院だ? 今から行く……」
「◯▲病院だけど……もう遅い。受付、閉まってる」
時計を見ると、すでに23時を回っていた。確かに今から病院に行っても、面会できるとは思えない。
「でも、お前ひとりで大丈夫なのかよ……」
「……大丈夫」
相変わらずの淡々とした返事。だが、その声はどこか気遣うような、落ち着いた響きがあった。
「……そうか。でも、無理すんなよ」
「うん。おやすみ」
通話が切れたあとも、しばらく携帯を握りしめたまま動けなかった。病院にいるのがどれくらいの怪我なのかわからないが、心配しないほうが無理だ。
だが、今から行っても意味はないし、行ったところで雪に迷惑をかけるだけだろう。仕方なく、俺は深いため息をついて布団に潜った。
……結局、その夜はほとんど眠れなかった。




