番外編 長生きとかは
人と神の感覚は似ている部分もあれば、全く逆のこともあると今日香は驚いてばかりだ。
神様と餡団子を食べながらお茶をしている時、神様への質問の回答を聞いて喉に団子を詰まらせそうになった。
「長生きする人とそうではない人はどう違うのですか?」
「ああ、長生きする奴は、そいつが若くして天界に帰って来られても、大抵使いものにならない奴だからだ」
「ぶふっ······!」
お茶をこぼしゲホゲホしながら、信じられない言葉に唖然とした。
「そ、そんな······」
長生きするのは、それだけお役目があるからとかではないの?
「長生きだから幸せとは一概に言えないものさ。長く生きてたらその分嫌な経験をしたり、見たくないもの聞きたくないものを見聞きするわけだしな。まあ、それが魂磨きってもんなんだが」
「それでは、人間的に悟った人の方が短命だったりするのですか?」
「そういうこともある。長生きするのは、その分しっかり学べよってことさ」
「早死にだから不幸とは限らないわけですね」
「そうだ。善人だから長生きとは限らんさ」
確かに、良い人ほど早く亡くなるなんて言われていたりする。
「長寿でドヤるのは人間だけだ。何かにつけてドヤる奴なんざ、それこそまだまだってことさ」
それだけ人間界と神界とでは感覚が違うのだ。
「競争意識で誰かと張り合うとかも、まだまだの人の特徴ですか?」
「もちろんだ。自分は自分、他人は他人という線引きができない奴はポンコツだぞ。そんな奴が天界で使いものになる筈が無い」
「承認欲求が強いのも、ダメなんですか?」
「愚問だ」
今日香は神様と自分の茶杯に新しいお茶を注いだ。
「どうしてですか?」
「自己中だからだ」
「自己愛が強いということだからなのですか?」
神様は注いだ茶をまるで酒をあおるようにクッと一息に飲んだ。
「自己中な人間は自律できていない状態だ。その場合他者を傷つけるからな」
「迷惑ですね」
「自分の内面を見ていない奴ほど、異様に他者が気になり、気にするものだ」
「ストーカーのような人もそうなのですか?」
「自分自身を見れない者は精神を病む」
『そうじゃ』
斎姫様もお出ましになったので、お茶と菓子をお出しした。
『恋狂いも、気の病じゃぞよ』
(姫様、それは経験者は語るということですね?!)
『妾は直らなくても良いのじゃ』
(そ、そうなんですか······?)
神様は咳払いをした。
けれども姫様は全く気にすることなく、滔々と神様のここが好きということを語り出して止まらなくなった。
神様推しの斎姫って、凄いな。斎姫のストーカーって果てしないよね。
神様はいたたまれなくなってしまったのか、姫様が自分の発言に酔っているうちに消え去った。
(逃げたな!)
斎姫様には、鼻や耳をほじるあの姿は目に入らないのかしら?
ほじったものを指先でぺいってやる、手慣れたあの仕草を。
私だったら、百年の恋も冷めるけどな······。
まあ、私が神様に恋をしないからこそ、この関係は均衡を保っていられるのよね。
『そこも愛いのじゃ』
(そうなんですね······)
長命でも学ばない、進歩しないのって、本当に厄介よね。
学ばない神様、懲りない神様も人と同じくらい面倒だ。
(了)




