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肆(よん)

それからあっと言う間に一週間が過ぎ、巫女バイトは今日で終わりになった。


「あんたは神様バイトだから、このまま継続な」


4日前に意識が戻った私は、まだ入院中だ。


こうして時々魂だけになって祭神様のところへ来ている。


自宅療養になって、私はこのまま復学しないで、神様バイトだけしていたいと思ってしまっている。


『それはなりません』


また、あの声が聞こえる。


女の人みたいな声だ。


私は時々聞こえる声の主が誰なのかを祭神様に聞いてみた。


「あ~、それはあんたの守護霊だ」

「そうなんですか?色々止められるんですけど」

「あんたの守護霊はゴリゴリの巫女姫だからな」

「ええ?!」

「そりゃ、厳しいわな」


いにしえの斎姫(いつきひめ)が私の守護霊だという。


「あんたが穢れ無いように必死なのさ」

「なんだか私、一生結婚できなさそうな······!?」

「ブハハッ、それはあるかもな」

「ええ~?」

「かつての自分と同じ轍を踏まないように護る、そういうこともあるんだよ」



私の守護をしてくださっている斎姫は、子どもの頃から斎女として神殿で育てられ、恋も知らずに年頃になった。

禁欲生活の反動からか、信仰する自分の神への恋心に溺れてしまったのだとか。


神の声を降ろし、神と民の間を取り持ち、国や民に尽くすよりも恋した神に夢中になって、役目を疎かにするようになり、当時の為政者から処罰を受けて果てた姫なのだそうだ。


その斎姫が恋した神様が、なんと目の前にいるこの祭神様だと知って驚いた。


うわあ、私、なんか斎姫様に見張られているような······気がする。


「この人はダメよ」「この人は私のもの」みたいな圧力。


守護と監視の目的が違うような······?



神話に登場する神様とかも、癖が強いよね?


何人も妻がいたり、目をつけた人間の女(嫌がっているのに)を追いかけまわすとか!?


斎姫様は、多分もう人間というよりも神様っぽい?!


祭神様とも対等なような気が······する。



『その通りじゃ』


強い神通力を持っているような人が神になってゆくのかな?


「まあ、大体はな」


『人も祭り上げられれば神になる』


「斎姫様はもうすぐ神になるのですね?」


『左様』


喜色を滲ませて答えた。


荒ぶる神、静かな神、優しい神とか神様も個性があるわよね。


祭神様はどこか微妙な顔、困り顔をしているけれど、それは見なかったことにしよう。



男女を問わず美神に思わず恋をしてしまう人間も昔からいるのだろう。


ひょっとしたら、祭神様はそれで女の神ではなくて男の神の姿をしたり、好かれぬようにわざと雑な言葉使いをしているとか?



『そういうことじゃ』


なるほど。

男神、女神も仮の姿ということなのね。


『妾はこの祭神の両方を好いておる』


そうですか。

神様って結構節操なかったりするわよね?



「勝手に納得するな!」

「······すみません」

「しかるべき時が来たら、あんたを······」

「えっ?なんですか」


その先はよく聞こえなかった。





私は退院して高校へまた通い出した。


私の入院中に友華と彼氏は暴力沙汰を起こして、退学になっていた。




私は神様バイトは神様のお手伝い、身のまわりのお世話をするものだと勘違いしていた。


神様バイトって、自分が神様になるためのバイトで、神様の弟子になるようなものらしい。



私が晴れて神様になったその時は······


祭神様と夫婦(めおと)になるのだとか。



私、それだと斎姫様に殺されそうなのだけど?!



それは、はるか先の未来の話で、私はまだまだ高校生。


大学を卒業したら巫女として神社に就職しようかなと思っていたら、


「普通の仕事に就け」

『ならぬ』


と言われてしまった。


今後巫女バイトをするのも止められた。


現世の巫女は神そのものに仕えるというよりも、神社という組織に仕えているようなものだという理由らしい。


(そ、そうなのだろうか······?)



私が前世でかつてしていた巫女、斎姫様の頃の巫女とは違うのだとか。


だから今世では私は無理に巫女をやらなくていいらしい。


真の巫女は神が選ぶものなのだとか。


(そ、そうなの?! うう、なんだか神社の人とか巫女さん達に怒られそう······?)



『妾がついておれば大丈夫じゃ』


(ひええ······)



あと何度転生すればいいのかわからない。


いつか私が神様になるその日まで、神様バイトは続いて行く。


私には想像もできないほどの永い時を、彼と共に生きてゆくのだろう。



(了)

短いですが、これでおしまいです。


最後まで読んでくださりありがとうございました!


また別のお話でお目にかかりましょう。

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