表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/90

呼び出し


「ジルベール殿下!よくぞご無事で、それに皆も」


 灯りの元に辿り着くと、メイザー生徒会長以下生徒会の面々が一斉に駆け寄って来た。他の一般生徒は先に学園へ戻し、雇われた冒険者達が捜索準備をしている最中だった様だが、私達が戻った事で行く必要もなくなりホッとしている様子だ。


「メイザー会長、心配をかけたようですまなかった。こちらは全員無事だ。聞いていると思うが大男は皆の協力で撃退出来たがそっちはどうなった?」


「いえいえ皆さんが無事なら問題ありません。こちらはフォレストウルフとしばらく睨み合いが続いていましたが、急に戦意をなくしたのかリーダーの遠吠えが聞こえた瞬間、森の奥へと去って行きましたので被害はありません」


 会長の話を聞く限り、あの黒フードの男は完全に魔物を操る事が出来なかった様で、私達が大男を倒したタイミングで解放された様だ。そもそもフォレストウルフは頭が良くリーダーは決して味方が多く傷つく無謀な狩りをしない魔物だ。それゆえに魔法などで操ろうとしても無茶な作戦には潜在的な強い抵抗が働いて結果的には睨み合い程度に収まったのだろう。


 そんな事を考えていると、ふと会長と目が合い何を思ったのかウインクしてくるものだから思わず愛想笑いで返したのだが一体今のは何だったのだろう?やっぱりこの人はちょっと苦手だ。



「さて、みなさん今回の事件は色々と聞き取りをしたいところですが、まだ完全に危機が去ったとはいえませんので全員撤収をして下さい。また、ここのキャンプ場周辺は騎士団が調査し安全が確認出来るまでは冒険者も含めて立ち入り禁止になると思いますので、くれぐれも近づかない様お願いします」


 会長の号令と共に皆が方々準備されていた馬車に乗り込み、カグメイアに戻る事となった。正直な話、馬車に乗り込んだ時点で結構クタクタに疲れていて寮に帰ったら爆睡かななんてぼんやり考えていると、殿下とロザリーは既に夢の中にいる様で背もたれに体を預けていた。私とレイはお互い流れる外の景色をながめていたが、ふと、ガラスに映ったレイがこちらを見ているのに気が付く。


「レイは寝ないの?」


「ん、ああ、まだ気が張ってる様で眠気がないんだ。ペルちゃんは?」


「私はロザリーの所へ行く前にちょっと寝ていたんで……」

 そう言いかけた時、その直前レイに頬を撫でられた事を思い出して赤くなりながら言葉が詰まった。


「ペルちゃん、食事の時はすまなかった」

 私の様子に気が付いて思い出したのかの様に、突然頭を下げて謝って来るものだから少し困惑する。


「え? どうしたの急に?」


「だから夕食の時、君の頬を撫でてしまっただろう?」


「別に怒ってなんていないわ、ただ…家族以外の男の人に触られたのが初めてだったから驚いただけだし…」


「それと……君を湖から助けた際に、水を飲んでしまった様だったから人工呼吸をしたのは俺なんだ」



「……え?あ、うん、ありがとう……いや、気にしてないしお陰で助かったのだから謝る必要はないよ」


 一瞬レイが何を言っているのかと思考が停止したが、すぐさま顔の温度が上がって行くのを感じ思わず唇に指を当てながらも気にしてない素振りを滲ませそう答えると彼は少し安堵したかのような顔をみせた。


「え?そ、そうか? いや、それでも驚かせたのは事実だから、やっぱり男としてきっちり謝る!」


 そう言い切り、両膝に手を置き頭を下げて来る姿を見てこれ以上この話を伸ばすとお詫びの品まで持って来そうな勢いなので、素直に謝罪を受け入れると伝えると胸を撫で下ろした様に屈託のない笑顔でニカっとする姿をみて、ずるい笑顔だなあなんて思ってると隣で寝ていたはずのロザリーがニヤニヤしながら私を見ているので行きのお返しとばかりに鼻を思いきり摘まんでやった。




◇◇◇



――翌朝


 疲れていようがいまいが、朝と言う物は平等にやってくる。休日とはいえ起床の鐘が廊下で鳴り響くと、体に叩き込まれているのか否応もなしに目が覚めてしまうので仕方なしに体を起き上がらせると、隣の住人は涎を垂らしながらまだ夢の中ようだ。


 ベッドから降りまた鼻を摘まんでやろうかと、ロザリーの寝ているベッドに近づく途中ドアの下に手紙が差し込まれているのに気が付いた。手紙を手に取ると私とロザリアの名前が書いてあり、裏を返すと立派な紋章のシーリングがしてあった。


(たしか、この紋章…マージナル王家の)


 王家からの手紙がこっそりとドアに差し込まれた経緯を考えると、ロザリーの聖女能力についての事かもしれないが、何故か私も連名されている事を不思議に思うと同時に面倒な案件な気がした。どちらにしてもこの幸せそうな顔をして寝ている当事者を起こさないと話にはならなそうだ。



「いたた……まったく起こし方にも優しさがほしいわね」

 頬をマッサージしながらブツブツ文句を言いながら私の後を付いてくる。結局、声を掛けても揺すっても起きないから頬を左右から引っ張ってあげてようやく目が覚めたという次第だ。


「優しさは最初の二回で売り切れよ、どちらにしても寮母さんの説教のよりマシでしょ?」


「それはそうだけど…あれ?殿下とレイさんにないわね」

 食堂ホールに着き、生徒が各々の席に着席しているが、レイと殿下の姿がない事にロザリーも気が付いたようだった。近くの女生徒達もヒソヒソと小声で二人の存在がない事を噂していたが、寮母が入って来ると黙り込み、いつものお祈りの後に朝食を取り始めたのだった。


「あらロザリーさんはお聞きになられてないの?二人共朝から王宮にお出かけになっているから今日一日いらっしゃらないわよ」


「え?そうなんですか? 昨日の今日でか…教えて頂きありがとうございます」

 私の代わりに目の前に座るメティがロザリーの質問に答えてくれた。どうやら寮一階の掲示板に張られていた連絡事項は見落としてる様子で彼女と目が合うと肩を(すく)めて苦笑する。



 午前中をのんびり過ごし、昼食を取ろうとするロザリーを引き留め彼女の手を引き、急いで玄関ホールへと向かった。

「ちょ、ちょっとペル、どこ行くの?寮母さんに怒られちゃうじゃない」


「あなた朝渡した手紙の中身まだ読んでないの?」


「……あ、あれね」

 ロザリーの一瞬の沈黙で”こいつ読んでないな”とすぐに察し、丁度王宮へ案内してくれる馬車が到着していたので有無も言わさず彼女を押し込んで、自分も続いて乗り込むと馬車はすぐに出立したのだった。


――ガラガラガラ


「もうなにがなんだか」


「文句言ってないでさっさと手紙に目を通しなさい」

 揺れる馬車の中で窘める様に注意すると、彼女は渋々ポケットの中から折れ曲がった手紙を出し読み始めると、ようやく自分の置かれた立場、これから何故王宮に行くのか理解した様子で私の顔を見て来る。


「ペル、これって……」


「そんなすがる様な顔をされてもこればかりはどうにも出来ないわ、私には発言権が在るのかさえ分からないからね。でも少なくとも殿下は貴方を見捨てたりしないと思うから安心して良いと思うわ」


「うん、大事になるのは大体予想は付いていたけど、まさか国王陛下からの呼び出しなんて事になるとは…とほほ」


 彼女の気持ちも分からないでもない。私も彼女の立場なら聖女の力なんて隠せるものなら隠し通して平々凡々に一生を過ごしたいと思うし、力を巡っての政争なんて関わりたくもない。でもまあ私に手傷に力を使ったり殿下の大怪我に使ったりとお人よしな所も彼女の良い所でもあるし、悪い点でもあるとは思うけど、私達の国に知られてる以上、無茶な扱いは受けないだろう。



「はいはい、諦めてさっさと用事を済ませてしまいましょ」


 ロザリーの頭をポンポンと軽く叩いて慰めていると、やがて私達を乗せた馬車は王宮の門を潜っていった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ