終.みんな幸せならこれで良し?(多分)
遅れましたが、ブックマーク評価ありがとうございます<(_ _)>
これで完結です。ここまでお読み下さりありがとうございました<(_ _)>
~数年後~
「奥様ご機嫌ですね」
「それはもちろんよ、今日は久しぶりにお姉様が帰ってくるのだもの」
庭でお茶の用意をしながら、笑顔で返事をする。
あれから隣国に行った姉に代わり、私が婿を取って公爵家を継ぐことになった。
夫は仕事で不在だし、久しぶりに姉妹でノンビリできる。
手紙はこまめにやり取りしていたが、会うのは久しぶりだ。
隣国で(どうやってか知らないが)2人共上手くやったらしく、幸せに暮らしているらしい。
姉の好きなお茶を用意してると、不意に声をかけられた。
「久しぶりねリリー、元気そうでよかったわ」
懐かしい声に顔を上げると、見慣れない男女がいた。
「……?」
確かに姉の声を聞いたと思ったが…空耳だったのだろうか?
それにしても…この2人は誰だろうか?
今日は姉夫婦以外来客の予定はないし、そもそも知らない相手のハズなのに、どこか見覚えもあるような…。
首をかしげてると、もう一度声をかけられた。
「どうしちゃったの?久しぶりで姉を忘れちゃった?」
「………」
目の前に立つ男性から、姉の声が発せられた。
そう、男性の格好をした人物からだ。
「お、お、お、お姉様ぁ―――――――――!!!!」
あまりの衝撃に、礼儀も忘れて叫んでしまった。
控えていたメイド達も、目を丸くして絶句している。
「はっはっは。リリーってばいくら感動したからって、そんなに大声を上げることはないだろう?ほらメイド達も驚いてるぞ」
姉の隣に立っている令嬢…の姿をした人物が、笑いながら声をかけて来た。
「………ジャック様」
しかめっ面で相手を見やるが、当の本人は気づきもせず笑っていた。
「やぁ久しぶりリリー。君も元気そうでよかった。結婚式に参加できず済まなかったね」
色々言いたいが、まず一言。
「ジャック様…メイド達は貴方とお姉様の格好に驚いているんです、私の大声のせいではありません」
「いえお嬢様、問題はそこではありません」
テーブルに手をついて何とか倒れそうなのを持ちこたえながら、返事を返すとアリスにツッコミを入れられた。しかし彼女も動揺しているようで、お嬢様呼びに戻っていた。
「あぁなるほど」
「確かに初対面の人にはよく驚かれるわね、事前に知らせておかなかったのは失敗だったわね。ごめんなさい」
元凶の2人が納得しつつも、的外れな謝罪をしてくる。
「いえあの…どうしてお2人ともそんな恰好をしてるのですか?」
少し落ち着いてきたので、肝心なところを尋ねると、待っていたとばかりにジャックが笑顔で説明してきた。
「実はあれからずっと考えてたんだ。隣国に行っても身長差は変わらず、笑い者になるのは避けられない、しかし貴族として社交を行わない訳にはいかない。悩み苦しみながら、時には後悔もした…だがやはり僕は彼女を愛してる、別れるなんて考えられない!だがこのまま笑い者になる訳にも行かない!」
「はぁ…まぁそうですね」
(離婚は許さないと誓約書も書いたのに…すっかり忘れてるわね)
半目で睨むが、アホのジャックは気づかない。そのまま目を輝かせながら、説明と共に身振り手振りをし始める。
それを見て長くなりそうだと思ったので、ため息をついて姉と共に着席する。
「そこで僕は閃いた!身長が合わないなら、性別を合わせればいいと!!」
そこでクライマックスなのか、ジャックが跪き両手を天に向けて掲げる。
「………」
そこで姉はキラキラとした目で、私はジト目で彼を見つめる。
「それでその格好ですか」
大体予想がついたし、寸劇に付き合う気力が無いので姉に向き直って聞くと、笑顔で頷かれる。
「そう、彼凄いのよ。おかげで私の長年の悩みが解消したわ。今では社交界で人気なのよ」
「……そうなんですか」
男装の麗人というのは芝居などで見た事があるから人気も頷けるが、女装男が人気だなんて隣国の貴族達の頭はどうなってるのだろう。
隣国の社交界に不安と眩暈を感じつつ、姉の話に耳を傾ける。
「そう、私が夜会に出ると令嬢達が騒いでね。ダンスの申し込みもひっきりなしなのよ。彼も街で人気よ、よくおひねりを貰うし、旅芸人からスカウトもしょっちゅうよ」
「あ、人気ってそっちの方」
それなら納得だ。
それからしばらく姉と会話を楽しんでると、寸劇が終わったらしいジャックが戻って来た。
「…そういえば2人共まだお父様にご挨拶なさってないんでしょう?今からでも行ってみたらどうかしら?」
「そうだったわね、それじゃあリリーまた後で」
「これは失礼したな、改めて義父上にご挨拶に行かないと。それじゃあ失礼するよ」
そう言って2人は仲良く連れ立って行った。
私は2人を見送ると、改めてお茶のおかわりを頼んだ。
「奥様よろしいんですか?」
カップに紅茶を継ぎながら、アリスが聞いてくる。
「何が?」
「奥様の事だから、ジャック様を怒ってローズ様の男装を止めさせるかと思いました」
その言葉に深くため息をつく。
「正直ぶん殴ってやりたいけど…確かにお姉様の身長問題を解決するには、一番いい方法でしょうね。
何よりお姉様が幸せなのだから、良しとするわ。これで良かったのよ…」
「そうですか…」
「えぇそうよ…」
父の仕事部屋の方から父の怒声と倒れる音と、メイドや姉達の悲鳴を聞きながら、私(とメイド達)は遠い目をして聞かなかったことにした。
馬鹿よ永遠なれ(*^▽^*)