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1.婚約者が婚約破棄を申し出てきました

お久しぶりのギャグです。お読み下さると嬉しいです<(_ _)>

「リリー、突然だが婚約破棄してくれ」

「は?」

穏やかな昼下がり。

庭でのんびりお茶を楽しんでいると、突然幼馴染で婚約者のジャックが現れて、婚約破棄を告げられました。

側で控えていたメイドのアリスもビックリです。

「えーと…とりあえず座って頂戴。アリスお茶をお願い。それで?何でいきなり婚約破棄してくれなんて、言ってきたの?」

とりあえずジャックに向かいに座るよう勧めると、気を落ち着かせる為お茶を一口。

あぁ美味しい。


「あぁ実は君の姉ローズが、離婚して戻って来たと聞いたんだ」

向かいに座ると、早速ジャックが切り出してきた。

「えぇ。向こうから言い出した事だし、姉に落ち度はないから、慰謝料はバッチリ頂いたけど…」

ローズは私の4つ上の姉で、社交界でも評判の美女で、半年前に寄子の伯爵家の長男に嫁いだ。

「実はローズは僕の初恋の人なんだ」

「そうなの?」

これは意外だ。

実は姉とジャックの面識はほとんどない。

以前この国で婚約破棄が流行った。

幼少の頃に婚約を決めたのが悪かったのか、年頃になってから「他の女(男)に心変わりした」「もっと良い縁談が来た」「交際してる内に相手の悪い性格(性癖)が発覚した」「家族や周囲の人間と上手くやれなかった」など問題が発生した。

そこでまずは親同士が話をして良さそうであれば、本人同士を顔合わせさせる。それで本人同士が好感触だった場合、嫁ぎ先もしくは婿入り先に行儀見習いと称して同居し、お互いに問題ないか見極める。数年続けて問題が無いようであれば、婚約を発表する。

問題があるようであれば、内々に破棄となり実家に帰される。(ちなみに破棄時の慰謝料は、虐待を受けたなど、非が無い限り発生しない)

縁談に関係なく行儀見習いで他家に行く者もいるので、破棄となっても周囲に気づかれず、評判を落とす事が無いので、この方法が採られる事になった。

姉も私とジャックが婚約する前に婚約(というかほぼ結婚)が決まり家を出たし、社交界でもほとんど姉の姿を見かけないので、もし会ったとしても見かける程度の筈だ。


「あぁ、数年前に肖像画を見て一目惚れしたんだ」

「……」

確かに我が家の玄関ホールには、代々当主とその家族の肖像画が飾られており、当然姉も入っている。

「その頃には彼女は婚約していたし、君との婚約も本決まりになっていた」

「そうね」

私とジャックの婚約は、父親が友人同士で歳も近く、お互い気が合っているからと結ばれたものだ。

恋愛感情はないが、拒否する理由もないので、まぁいいかと思っていた。

「君は良い友人だ。頼りない僕をいつも助けてくれてる。どのみち片想いで終わったし、婿入りすれば将来安泰だし、それでもいいと思った」

「……」

話している内に気分が盛り上がって来たらしく、ジャックが大げさに身振り手振りをくわえながら、一方的に話し続ける。もうこちらの反応など気にしてない。

「だが今日彼女が離婚して戻って来たと聞いた。これは運命だ!」

「はぁ…」

最高潮に達したのか、テーブルをバンと叩くと席を立ち、天を仰いでさらに大げさになる。もはやこちらを見ようともしない。

呆れた返事しか返せないが、ジャックは気づきもせず続ける。

「先ほど彼女の元に行き、秘めた想いを告白した。すると彼女は林檎のような唇を開いてこう言った『あなた馬鹿なの?』って」

「そりゃそうでしょうね」

姉からすれば見ず知らずの男が、名乗りすらせずいきなり自分に愛を告白してきたのだ…姉に限らず誰もが頭の中身を疑うだろう。

「いきなりそんな事を言われて傷ついたが、よくよく考えれば面識もなく、自己紹介もしていなかった。これでは言われてもしょうがない」

「そうね」

「それで改めて名乗って告白したら、『妹と婚約してるのに、私に告白するなんて最低だ』と言われた」

「当然ね」

私の返事にジャックも頷く。

「そう、僕は失敗してしまった。想いが先走って、手順を間違えてしまった。先に君と婚約破棄するべきだった」

「……」

(いや問題はそこなのか?)

そう思ったが、ジャックは再び気分が盛り上がって来たらしく、私の呆れ顔に気づかない。

「しかし僕は諦めきれなかった!『リリーとは必ず婚約破棄するから、どうか僕の気持ちを受け取ってほしい』と彼女に訴えた!4時間も!」

「……」

4時間もこのバカの相手をした、姉の忍耐力に心の中で拍手を送る。

「すると彼女は言った『そんなに言うなら、まずリリーと婚約破棄してからにしてちょうだい』と!僕の一途な気持ちが、ついに彼女に通じたのだ!」

「……」

私とアリスは思わずアイコンタクトをした。

(これってどう思う?)

(あんまりしつこいので、こちらに丸投げされたと思います)

(やっぱり)

思わずため息をつく。

「そういう訳でリリー!申し訳ないが、婚約破棄してくれ」

ちっとも申し訳なさそうに見えない態度で(ドヤ顔でふんぞり返っている)婚約者を見て、決意した。


「分かりました、婚約破棄しましょう」



感想いただけると嬉しいです<(_ _)>

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