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5.また何かやっちゃいました?


 2日目のダンジョン攻略も順調であり、2階では『スカベンジャークロウラー』が出現した。通常のクロウラーに比べ、死骸を食べる性質からか噛み砕く力が強くサイズも少しだけ大きい種類であり、初心者だと四肢の一部を欠損する怪我をする者もいると聞いていたが加護によって強化されたミドリの前では通常のクロウラーと同様に剣の一振りで肉塊へと化す。ボスも1階と同様に雷魔法で片付いた為、さしたる時間もかからず3階へと進めた。


 3階は『アルミラージ』という兎の額に30センチ程の角が生えた魔物が出現した。クロウラーと比べかなり素早く、角が刺されば重傷を免れないがミドリの素早さの方が高く、突進前の溜めが隙となる為、簡単に仕留める事ができた。1度、可愛らしい見た目に攻撃をためらい、腹部に突進を受けるが、加護による防御力が高すぎる為、軽く押される程度で問題は無かった。ボス部屋には10体程のアルミラージが出現したが、こちらも雷魔法だけで全滅させた為、特に時間はかからなかった。


 4階は『ジャイアント・スパイダー』という蜘蛛をそのまま大きくしたような魔物だった。蜘蛛を子犬程度に大きくしただけで特筆する事はないが、毎年何人かは糸に捉えられてそのまま巣穴で捕食される冒険者がいるらしく、一般人には驚異的な敵なのだろう。しかし、それまでの階層と同様にミドリの敵とはならなかった。ボス部屋では『マザー・スパイダー』という人と同じサイズのモンスターと数体のジャイアント・スパイダーが出現し、戦闘力では問題は無かったが、見た目への嫌悪感から雷魔法を不必要に乱発し、キースから注意される。雷魔法は魔力消費量が比較的多く、熟練者でも壁や床で跳ねた雷が予期せぬ方向に飛ぶ事故があり、乱発して魔力を使いすぎると『魔力欠乏症』となり命を落とす事もあるそうだ。


 少しのイレギュラーはあったものの、ミドリたち一行はさしたる疲労も無く短時間で5階まで進むことができた。


「ここからは今まで出現したモンスターが混合して出現します。今までの様子を見るに問題ないでしょうが1~4階に比べて魔物の数が多いので油断しないように進みましょう。」


 キースから軽い注意事項を告げられ緩んでいた気を引き締め直す。が1~4階と同様にあっという間にボス部屋へとたどり着く。


「今回のボス部屋はゴブリンが出現します。人型モンスターを殺す忌避感と低いとはいえ知性を持ったモンスターである為、ここで(つまづ)く冒険者も少なくはないそうですよ」

「それと……、その……。」


 キースの豆知識の後にギルバートが顔を赤らめながら口ごもる。


「何か他に注意事項があるんですか?」


 そう言ってミドリが顔を覗き込むと更に顔を赤くし答える。


「女性の冒険者の場合、その……。酷い暴行を受け引退する者も少なくはない……とか……」


 少し思案し、意味が分かりミドリも一緒に赤くなる。


「さ、さぁ!気張ってイキマショー!」


 気まずい空気を振り払う為、ミドリはやけくそ気味に大きな声を出して勢いよく扉を開く。


 ボス部屋の中心にはゴブリンが5体居た。侵入者に気づいたゴブリンはこちらの様子を伺い警戒した様子を見せる。そしてミドリだけが歩を進めると少しだけ不思議そうな顔をし、下卑た笑みへと変わる。ミドリが嫌悪感を感じながらも歩を進めるとギルバートやキースを警戒しながらミドリを取り囲み、様子を伺う。ミドリが攻撃をした瞬間に一斉に襲いかかろうという魂胆が見え見えの立ち位置でじっと武器を握りしめるゴブリンたち。しかし次の瞬間にゴブリンの視界が反転する。地面が頭上から降り注ぐ様を目の当たりにし、不思議そうな表情を浮かべながら絶命するゴブリンたち。5つの首が地面に落ち、ダンジョンへと吸収されていく。


「お見事ですミドリ様、ゴブリンたちの表情を見るに首を落とされた事にも気づいていないでしょう」


 ギルバートが称賛しながら、魔石を拾う。


「ありがとうございます。この後は来た階層を戻る感じですかね?」

「いえ、ダンジョンは五階毎にセーフエリアがあり、その中にある転送魔法陣を使用して地上に戻る事ができます。次回以降は入り口にある転送魔法陣を使用して来たことのある階層へ移動できますよ」


 魔石を回収し終えてボス部屋の奥にある部屋に入ると学校の教室程の空間があり、その中心には青白く光る魔法陣と宙に浮く白い球体があった。


「あの球体に触る事で地上の魔法陣へと移動でき、行きたい階層を念じながら地上の球体に触るとその階層に移動する事ができます」


 そう言いキースが球体を触ると瞬時に姿が消える。少し驚いているミドリをよそにギルバートもそれに続く、誰もいなくなった部屋で恐る恐る球体に触れると視界いっぱいに閃光が広がり2人が目の前に現れる。先程と同じ部屋にしか見えないが扉を開くとダンジョンの少し隣に出た。


「では、戻りましょうか。」


 3人は帰路につく、日はまだ高い位置にあり、入った時からあまり時間が経っていないことが分かる。


 こうして2日目のダンジョン攻略を無事終え、昼食後に少し早い入浴を済ませる。部屋で着替えている時にふと何気なく自身のステータスを確認すると、見慣れない表記が増えていた。


「スキルが増えてる……?」


 少し前から増えてはいたが、最初に確認して以降ステータスを見ていなかった為、3つ程増えている事に気付く。


「【転移魔法】【高速移動】【無詠唱】か、スキルってこんなにポンポン増えるものなのかな……?しかも現役じゃなくて元JKになってるし。」


 少しだけ肩を落としつつ不思議に思う。


 そしてキースやギルバートと談笑しながら夕食を済ませ。今では日課となっている夜のティータイムにキースが部屋へ訪れる。


「そういえば今日ふとステータスを確認したらスキルが3つ増えてたんですが、スキルってこんな簡単に増えるものなんでしょうか?」


 言い切るか言い切らないかのタイミングでキースが声を荒げる。


「【鑑定】を使えるのですか!?」

「へ!?はい!」


 驚きつつもそう返事をすると、コホンと咳払いをしてキースが落ち着いた声で話す。


「すみません、取り乱しました。まずスキルというのは過酷な鍛錬を経て発現するものであり、この短期間で3つも増えるのは異常と言わざるを得ないでしょう。さらに【鑑定】を使える者は数える程しかおらず、私の指輪も国宝に指定されるレベルの代物です」


 そう言い終え、少しの間考え込むキース。


「少し勇者への認識が甘かったようですね。他のステータスに関しても詳細にお聞きしていいですか?」


 そう言われミドリはステータスに表示されている文字をすべて紙に書き起こし、キースへ渡す。


「身体能力等は想定通りだとして【鑑定】だけでなく【転移魔法】まで習得しているとは……」

「何かまずかったですか?」


 【鑑定】はステータスを見るだけであり、【転移魔法】はダンジョンで普通に使っていたのでそこまで重要だとミドリには思えなかった。


「まず、【鑑定】は世界に数人程度、【転移魔法】はスキルとして保有している人間はおらず、どちらも非常に希少です」

「でも、魔導具もありますし、多少便利な程度のスキルですよね?」

「魔導具も希少ですし、【転移魔法】を持つ魔導具はダンジョンに移動先を指定されたものしかありません。考えても見て下さい、人間離れした戦闘能力を持ち相手の戦力を正確に把握し好きなタイミングで現れたり消えたりできる人間を……」

「かなり、強そうですね……」

「はい、他の国が戦争を起こしてでも奪うか使えなくしようとする程度には……」


 一瞬の沈黙の後にキースが立ち上がり言う。


「私は今後の対策を練り直しますので、ミドリはそのまま寝て下さい。明日以の予定は組み直すので王城で過ごしておいて下さい」

「は、はい!」


 そしてキースは足早に部屋を後にした。


「そういえばステータスの括弧について聞きそびれちゃったな……」


称号のせいかな?などと想像しつつミドリは眠りについた。



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名前:サトウ ミドリ

職業:勇者

STR:128   CON:157   DEX:186

INT:84(-40) POW:60(+40) LUK:15


スキル:身体強化  Lv.8    

    剣術    Lv.9    

    魔力強化  Lv.8    

    雷魔法   Lv.6    

    光魔法   Lv.6    

    生活魔法  Lv.1 [MAX]

    異世界言語 Lv.1 [MAX]    

    鑑定    Lv.1 [MAX]

    無詠唱   Lv.1 [MAX]

    転移魔法  Lv.1    NEW!

    高速移動  Lv.1    NEW!


称号:召喚されし者   裏切り者    勇者やってます

   元JK       恋愛体質    チート万歳

   愛し子


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