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3.初ダンジョン!(後編)


「洞窟だからジメジメしてると思いましたが案外快適ですね」

「高難易度ダンジョンや深い階層は厳しい環境になりますが、このダンジョンは比較的初心者向けで浅い階層だからでしょう」


 生まれて初めて入るダンジョンは、壁も床も土でできており、気温や湿度もある程度快適なものでほんの少し拍子抜けだった。


「今日は初日ですので、魔物を倒しつつボス部屋前まで行って切り上げましょう」

「はい!」


 事前に渡された地図に沿ってダンジョン内を進んでいると他の冒険者が大きなイモムシのような魔物と戦っていた。


「あれはクロウラーと言い木の根や土などを食べて生きているおとなしいモンスターです。基本的に人を襲うことはないのですが、ダンジョン内では少し攻撃的になっているので注意して下さい」


 ダンジョンでは、生態系を無視して繁殖を行わずに魔物が()()するらしい。ダンジョンを研究する学者によると誰も見ていない曲がり角や閉じた部屋などから突如として魔物が出現するそうで、発生した魔物は食事などは行わなず、死亡すると魔石以外の部位はダンジョンの壁や床に吸収される。ダンジョン内のモンスターはダンジョン外のモンスターに比べ人間に対してのみ攻撃的でダンジョン外に出ると塵となり消滅するとのことだった。


「ここは少し冒険者が多いようなのでもう少し奥に進んでから戦ってみましょう」


 キースに促され奥に進むと2体のクロウラーがおり、周りに冒険者はいない。


「では、あの2体を倒してみましょう」

「はい。やってみます!」


 二体の内近い方のクロウラーに剣を振り下ろすと何の抵抗も無く2つに裂ける。


「お見事ですミドリ様!」

「大きさの割に弱いんですねクロウラーって」

「いえ、ここまで綺麗に真っ二つにできるのは多分勇者ならではです。駆け出しの冒険者であれば負けなくとももう少し苦戦する程度には強いですよ」


 そう会話しつつミドリは左腕をもう1体のクロウラーに向けて魔法を放つ。雷撃はクロウラーに直撃し黒コゲの物体へと変わる。


「この程度であればミドリには楽勝ですね。この調子で魔石を回収しつつ奥まで進みましょう」


 軽く頷きつつクロウラーの方に目をやるとその姿は無く、黒っぽく光沢のある小石が落ちていた。魔石はモンスターの強さに比例して大きく輝きを増すらしく、色はモンスターの属性に合わせて変わる。王城で大昔の勇者に討伐されたという炎龍の魔石は人の頭程度の大きさはある赤い石だという。そしてミドリは道中何体かのクロウラーを倒しつつ進むと一際大きな扉に行き当たった。


「これがボス部屋ですか?」

「はい、この中には1Fのボス『ビッグ・クロウラー』がいます。他に挑戦している冒険者もいなさそうですし、挑戦してみますか?」

「はい、お願いします!」


 扉を開くと、部屋の中心に先程より一回り大きいクロウラーが(たたず)んでいた。足を踏み入れると同時に緩慢(かんまん)な動きでミドリに近寄ってくる。ミドリはクロウラーに向けて腕を上げて魔法を放つと、雷が空を裂き直撃する。結果は先程と同様に黒コゲの物体が出来上がり、部屋に肉の焼けるような臭いが充満する。


「やはりミドリには簡単すぎましたかね。では魔石を回収して城に戻りましょう」


 拍子抜けだなと思いつつ、先程よりもほんのちょっぴり大きい魔石を回収し、ボス部屋を後にする。


 王城に戻るとキースは報告書を作成するとのことで別行動となり、ミドリは自室へと戻る。自室のベッドで横になっているとドアがノックされる。


「はい、どうぞ」


 起き上がりつつそう返事すると、ドアが開かれキースとギルバートが入ってくる。


「報告書の提出も終わりましたし3人で昼食でも食べながら明日の予定を立てましょう」


 メイドが用意した昼食を取りつつキースが明日の予定について話す。明日のダンジョンは五階まで進んでみる予定でとのことだ。予定について一通り話し終わるとキースが紅茶を全員に注ぐ。


「不思議な香りですね?」

「私の故郷の茶葉と東の国の茶葉を独自にブレンドしたものです。お口に合えば良いのですが」

「ありがとうございます」


 礼を言い一口飲むと不思議な香りであるものの嫌いではない味だった。紅茶を飲み続けると不思議と緊張や不安が(ほぐ)れるような気がした。


「この紅茶って何か効能とかあるんですか?」

「不安や緊張を取り払い、心を平穏にさせる効果があります。どうでしたか?」

「通りで……。はい、美味しいです。」

「なら良かった。良ければ今後もお持ちしますか?」

「お手数でなければよろしくお願いします」


 昼食会が終わり、紅茶の香りが満ちる部屋にはミドリ一人となった。


「なんだか異世界って思ってたよりも暇なんだなぁ……」


 そう独り言をこぼしベッドに横になると、昼食の満腹感と昼過ぎの木漏れ日に包まれてミドリは微睡みへと沈んでいった。

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