2.初ダンジョン!(前編)
それからの日々は目まぐるしく過ぎていった。最初の一週間はこの国の歴史や、国際情勢、一般常識などを中心に座学を行い。その後はキースに魔術を、ギルバートに剣術の訓練を付けてもらい。来るべき魔王戦に備えて訓練を重ねた。そして城での訓練を終了させた後、各地に存在するダンジョンに鍛錬を兼ねて探索に行く事となった。
「魔物との戦闘は初めてなので緊張しますね」
「今回行くダンジョンは駆け出し冒険者の腕試しに使われる程度には安全な場所ですので問題ないでしょう。それに万が一危険な状況に陥った場合は私やギルバートがミドリを助けますのでご安心を」
今回のダンジョンはミドリとキース、ギルバートの3人で探索する。ロビンは国に士官している訳ではなく、冒険者として都度依頼をする形らしいので高難易度のダンジョンや魔王戦以外では通常通りの仕事をこなすとのことだ。
「それでも緊張しますよ、あっちの世界だと魔物もダンジョンも冒険者も無かったんですから。」
「では、ミドリ様の世界ではどうやって魔導具などを入手していたんでしょうか?」
「私も後学の為に知っておきたいですね。」
この世界での冒険者は簡単にいうと荒事もある派遣社員のような立ち位置であり、ギルドは人材派遣会社のようなものだ。稼ぎや優秀さはピンキリであり、優秀なものは国が囲い込み他の国では貴族になった冒険者もいる程だとか。逆に英雄的な冒険譚を夢見て田舎から出てきた青年や、何らかの事情で親を無くした子どもなど、定職に着くのが難しい者は比較的安全で誰でもできるような仕事をして日銭を稼いでおり、貧困対策の側面も担っていた。
「向こうの世界にはそもそも魔法とか魔導具みたいな物が無くてですね。その代わりに電気を使って魔導具みたいな機械を使って生活している感じですね。」
「電気を使った機械?錬金術の盛んな国で見たような物が発達した形でしょうか?ミドリの世界にはどんな機械があったのですか?」
「定番としては馬より速い鉄の箱や、どこにいても知り合いと話せる鉄の箱とかですかね?」
「ミドリ様の世界では鉄の箱が発達していると……!?」
他愛のない会話をしていると数名の冒険者と思わしき人々と二人の兵士が洞窟の前に立っているのが見えた。
「あ、ダンジョンに到着しましたね」
「では、私は手続きを済ませて来るので2人はここで待っていて下さい」
そう行ってキースは兵士の元へ向かう。
「ミドリ様、準備は大丈夫ですか?」
「はい、城を出てくる前に何度も確認したので大丈夫です!」
「そこまで力まなくても大丈夫ですよ。先程キース様も仰っていましたがこのダンジョンは低難易度で自分とキース様がいれば怪我をすることも無いでしょう」
「でも警戒するに越したことは無いので!」
「警戒と緊張は違います。極度な緊張は逆に怪我の原因となりかねないのでもっと自分達を信頼して下さい」
ギルバートとやり取りをしていると手続きが済んだのかキースが戻ってくる。
「手続きが済みましたので中に入りましょう。私とギルバートは基本的に手を出さず後ろをついていくので1Fのボス部屋を目標に進んでいきましょう。危ないと判断した場合はすぐ手助けするので気楽に頑張りましょう」
「はい!」
パンパンと自分の両頬を叩いて気合を入れ直す。冒険が始まると思うと、不安や緊張、期待などの入り混じった高揚感に体が包まれるのをミドリは感じていた。