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17.魔族登場!

「本日は近隣の村より寄せられた依頼をこなすとのことでキース様より言伝を頼まれております。」

「ふぁ~い」


済まし顔でそう伝えるメイリーに起きたばかりのミドリはあくび混じりにそう答える。


「失礼します」


メイリーが短くそう言うと朝の支度を進める。ミドリを着替えさせ、髪を梳かし結い、朝食を用意する。


「いつまで経っても人に着替えさせるのは慣れませんね……」


普通の女子高生であるミドリは未だに貴族のような扱いに慣れないでいた。


「じきに慣れます。」

「そういうものでしょうか?」

「そういうものに御座います。」


一切表情を崩さないメイリーにミドリは首をかしげながら朝食を進める。


(メイリーさんとはもう結構長いのにマロンちゃんがいる時とかロビンさんの話しをする時以外表情崩さないなぁ……)


そう思いつつ朝食を済ませキースの書斎へと向かう。書斎へ着くと三人が待っていた。


「よう、おはよう!嬢ちゃん」

「貴様!もう少し言葉をどうにかできないのか!」

「へいへい、すいやせんね。騎士様と違って育ちが悪いものでね」

「なんだその態度は!」

「おはようございます。お二人は相変わらずですね……」

「おはようミドリ。ホラふたりとも。もうよさないか」

「でも、キース様……!」

「騎士様は宰相殿にべったりなご様子で。そろそろママも同行する日も近いんじゃないか?」

「きっさまぁ!」

「ふたりとも!」


いつものようにロビンが煽りギルバートがキレ、キースが宥める。


「ゴホン、では本日の予定を伝達する」


場が落ち着いたところでキースが改まって本日の依頼内容等を伝える。話しによると魔王の影響で各地の魔物が活性しており、近隣の村に被害が出ている為、それを解消するのが目的のようだ。


「以上です。報告によると魔王軍を国内で見たという情報もありますので脅威度の低い魔物の討伐でも油断しないよう気をつけましょう」

「はい!」


依頼内容の確認と注意事項の伝達が終わり一行は依頼のあった村へと向かう。



「はぁ!」


いつも通り魔物を一刀両断するミドリ。


「やっぱり嬢ちゃんは強いな。実力的にはAランクの冒険者の中でも軍を抜いて強いな」

「そしたら実力的にSランクとかになるんですかね?」

「Sランク?なんだソレ」

「え?Aランクの上ってSランクじゃないんですか?」

「Aが一番上だぞ?なんでSなんだ?」

「いや、前の世界ではお約束というヤツでして」

「前の世界にも冒険者に類する職業があったのですか?」

「いや、無かったですけど、物語の中での話しで……」


魔物を倒し終え雑談しているとガサリと茂みから音がする。


「魔物かぁ?」


そう言いロビンが当適用の短剣を音のした方向に投げ込む。一際大きく草を揺らす音が聞こえ沈黙が訪れる。すると突然影がミドリへと飛びかかる。


「な!?魔族!?」

「クソッ!殺ったと思ったんだけどなぁ!」


応戦するべくミドリが剣を横に薙ぎ払うも襲撃者はその勢いを利用して後方へ退く。


「何故魔族がこんなところに!」

「警備が甘いんじゃないのか?知らんケド」


襲撃者は猫と人間を融合させたような見た目をしており。言葉遣いは男っぽいが声色や体つきから女性だろうと推察される。


「ミドリ、注意して下さい。魔族は知能が高く力や魔力が強い。そこらへんの魔物とは比べ物になりませんよ」

「コイツは獣人タイプだな。魔法は使わんが身体能力は人間のそれとは別格だぞ」

「4対1か、少し不利か?」


緊張する場で獣人が四人を品定めするように眺める。


「んじゃあ、ヨエーのから減らしていくかぁ!!」


言葉を発するや否やギルバートへと飛びかかる。頭を潰さんと振り下ろされるカカトを辛うじて剣で受けるも骨の軋む音に顔を歪めるギルバート。


「お、案外やるじゃねーの」

「魔族風情が……ナメるなぁ!」


気合で押し切り剣を振り上げるギルバート。しかし、またもその勢いを利用し回転し、そのままギルバートの懐目掛けて蹴りを放つ。


「っぶねぇ!」

「オジさん無視されると寂しいなぁっと!」


ロビンが短剣を投げ牽制する。そこに詠唱を終えたキースが畳み掛ける。


「~~~~火よ!」

「クソッ!魔術師もいんのかよ!」


肉薄する火球を避け不満を漏らす獣人。しかし息を付く間も無くミドリが斬りかかる。


「はぁ!」

「魔剣か!」


受け止めようと腕を上げるも光る刀身を見て回避に転ずる。しかし、完全には避けきれず腕を切られて血を流す。


「浅かった!」

「ったく!恐ろしい女もいるもんだねっと」

「グッ……!」


ミドリの剣を避けつつも手を地に着け逆立ちする形でミドリの鳩尾に蹴りを放つ。モロに蹴りを受けたミドリは地面に2つの線を残しながら後方へと吹き飛ばされ咳き込む。


「ゴホゴホッ!」

「大丈夫ですか!ミドリ様!」

「他はそこまででもねぇがあの女はやべぇな。魔剣も持ってやがるしどうし……。腕の一本は覚悟した方が良いな。」

「腕の一本で済むと思ってるのか?獣人の姉ぇちゃん」


両者迂闊に飛び込めず睨み合いが続く。その静寂をミドリの一言が引き裂く。


「アナタ。言葉が分かるの?」

「何だ?馬鹿にしてるのか?」

「そうじゃなくて、言葉が通じるなら話し会えないかなって」

「ん?オレと話したいって?」

「ミドリ様!いけません!」


獣人との話し合いを遮るギルバートを手で制しつつミドリは会話を続ける。


「ワタシはミドリ。アナタは?」

「オレはタマってんだ。で、話しって何だ?命乞いか?」

「いえ、違うわ。このままだとお互い無事では済まないことは分かるでしょう?言葉で解決することならそれに越したこと無いと思うの」

「ほう、殊勝な心がけだ。人間にも話が分かるヤツがいるんだな。だけど女、流石に話し合いで解決するってのは遅すぎると思うぞ?」


そう言いミドリの足元を指差すタマ。足元を確認すると足元にはゴブリンやオークの死体が転がっている。


「ソイツらはオレの仲間なんだ。仲間のこと殺しといて話し合いで済ませようだなんて虫が良すぎるとは思わないか?」

「それは、この魔物達が人間に危害を加えたからで仕方なく……」

「どんな危害を加えたんだ?危害を加えた人間はどこだ?殺さないといけない程の被害だったのか?」

「それは……」


そう言われキースを見る。


「被害は数名の犠牲者。被害者は一時的に避難しており、占拠された村を取り返す為に殺す必要があった。」

「先に手を出したのは?」

「魔物からだと報告されている。」

「報告者の報告は本当に信用できるのか?」

「さっきから聞いていれば貴様ぁ!我々が嘘をついているとでも言いたいのか?」

「そうじゃねぇさ。けど結局どっちが悪いかなんてお互い相手が悪いって言うだけだ。そんなモンどうでも良い」


そう言ってタマはミドリを指差す。


「けどな、ミドリ。お前はどうなんだ?今の話を知った上で判断してソイツらを殺したのか?」

「………」

「まぁ、そういうことだ。お互いを殺すのにためらいも罪悪感もないんだから話し合いでの解決は無理って言いたいんだよオレは」

「でも、そんなのって……」

「勘違いすんなよ?オレは別にお前が悪いって言ってるわけじゃないんだ。結局のところ生存競争なんだから気にするだけ無駄って言いたいんだよ」

「………」

「だがお互いに被害が出るのは不本意だってことは分かる。そこで、だ。もしお前らが退くって言うんならオレ等も死体の回収だけして帰ってやる。」

「魔族の言うことなど信用できるか!」

「ギル!わかったわ、それで済むなら了承します。キース、問題ないですか?」

「情報を持ち帰られるのは痛いですが、ミドリを失う可能性を考慮すれば退くべきです。」

「俺も賛成だ。獣人の姉ぇちゃんもまだ本気は出してないみたいだしな」

「話はまとまったな。おい!お前ら!」


獣人が後ろの茂みに声を掛けると同様の姿をした獣人達が出てきて魔物の死体を荷車に乗せて回収して行く。回収が終わるとタマは背を向け茂みへと歩いていく。


「待って!本当に人間と魔族は争わないといけないの!?」

「殺し合うのは避けられねぇだろうな。話の分かる魔族も人間も多少はいるだろうが大半が殺し合いをしてるんだ。ルールも落とし所も無く殺し合いに発展したならどっちかが滅ぶ寸前まで話なんて効聞かねぇだろうよ」

「………」

「今度会った時は覚悟しとけよ。今度はサシでやり会えると良いな。」


そう言い捨ててタマは茂みへと消えていった。ミドリはなんとも言えぬ後味の悪さを残しつつ依頼の達成を報告し城へ戻って行った。

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