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余情

作者: 神崎 勇大
掲載日:2023/01/13

 久々に地元に帰り、実家への通り道に昔通っていた小学校があった。

 毎回帰ると中を覗く癖がある。タイミングがいいとにぎやかな雰囲気で、何気ない日常の中で昔を思い出して、微笑ましい気分になる。

 でも今日は人気がなく、恐らく学校が休みなのだろうと俺は思い通り過ぎた。



 実家に帰ると、母親がついこないだ、押入れの奥にあった小学生の時の思い出のアルバムを見つけたらしく、俺に見せてきた。

 運動会の写真や、演劇のときの写真、修学旅行のときの写真や懐かしい写真がそこにはあった。

 その時仲良かったあいつは今はどうしているのだろうか? だとか、たかが鬼ごっこであそこまで全力になれた自分自身を思い出したりもした。

 毎回ドロ警でみんなを助ける足が速いヒーローの颯太だったり、世話焼きだった花奈は今頑張っているだろうか。


「懐かしいな松田先生」

「まだ誰か知ってる先生とかいるかな後で小学校に顔だそうかな……とか言って」

「無理よ、もう廃校になったんだから」

「え?」

「言ってなかったっけ?」


 俺は呆然とした。

 そして思い出した。今朝人気がなかった学校を。

 あの時、何気なく通り過ぎて素通りした学校が突然儚いものに感じてきた。


 人が居なかったのは廃校になったからで休みとかではなかった。今日は平日だしよくよく考えればわかったことなのかも知れないが、あの時の呑気だった自分に少し恥ずかしさを感じ、それと同時に心にぽっかり穴が空いた気がした。

「そうなんだもうやってないんだ」

 俺は平然を装ったが、装いきれてない少し感情が抜けたような声色になっていた事を自分でも自覚した。


 俺はあそこからはもう子どもたちの声が聞こえないんだと思った。



 その後、懐かしい母親の味がする飯を食い自分の近況や他愛もない話をして夕方に実家を出た。



 帰り、通りかかった廃校になった小学校の前で、俺は足を止めた。

 俺は静かな学校を見てまじまじと体感した。

 もうここには誰も通わなくて、あのにぎやかな風景は帰ってこない。当たり前にあったその日常はもう来ないんだと、そこに虚しさを感じて、俺は昔の記憶を重ね目の前の風景をただ眺めていた。数分間一人立ち尽くしていた。



 数年後、俺はまた廃校になった小学校の前を通った。

 そこはコスプレーヤーが使ったりテレビの撮影で使われる貸し出しのスタジオになっていた。

 俺はそれを知って少し救われたような気持ちになっていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 自分がかつて過ごした場所が既に失われてしまったことを知った時の喪失感、寂しさがよく伝わってきました。時代の流れで仕方がないと頭の中ではわかっていつつも、心はどうしてもついていかなかったり。「…
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