オタクな私、まずは状況整理
さて、と紅茶を飲み干したところでグレイベルが真面目な顔をする。
「まずはお互い状況整理をしていこう。ナツメも来たばかりで何もわからないだろうしね。私が召喚していないとはいえ、こちら側が勝手に呼んだのは事実だ。君の安全を保障するためにうちでしばらく泊っていくといい。どうだろう?」
「ありがとうございます。とても助かります」
こちらの世界だと身元もない私には大変うれしい提案だった。
なんていったって「異世界人?しらねー!」ってポイされる可能性だってあった。石のネックレスがないと言葉も通じないし冗談抜きで路頭に迷うところだった。ありがとうイケメン。
私たちは互いに説明しあう。ついでに自分が何者かも伝えておかないとね。
「このネックレスつけた途端言葉がわかるって凄いですね」
「ナツメの世界は魔法がないんだっけ?」
「ないですね。その代わりに技術がものすごい発展しているので」
「なるほどねぇ」
「へえ、ナツメは楽器が弾けるんだ」
「そうですねぇ……私のいたところは”一つの趣味”みたいな形でそれぞれ学んでます。こちらだと貴族以上は必須でしたっけ?」
「いや、演奏は必須ではないよ。ただ鑑賞としては必須かな」
「結局グレイベルさんは何者……いやどれ程偉いんですか?貴族とかいないところで育ったもんで礼儀もなにもわからないの恐怖なんですけど」
「フフ、内緒」
「怖いって!不敬罪でしょ!?死にたくない!」
時折茶番を交えながらもとりあえずの事は聞いた。
まずこの世界は魔法が中心、生活は魔石を使っているそうで元の世界とそこまで差がなさそうだ。トイレは水洗だって!ほんと良かった……!
一番びっくりしたのは、私にも魔力があるようで魔法が使えるらしい。鑑定が使える執事さんありがとう。
もちろん勉強しなきゃいけないようだが、「自分も魔法が使えるように!?」と興奮しました。オタクの夢が叶いました嬉しい!
「とりあえず夜も近い、客間へ案内しよう。私と一緒に食事も気にするだろうし、そこで食事をとって休むといい。また詳しい話は明日以降詰めよう」
グレイベルさんはそういうと頭をポン、とあやすようにたたき「今日はすまなかったね。ゆっくり休みなさい」と耳元で囁く。そんなことに慣れていない私はぽかんとしたまま硬直、執事さんに促され客間へと向かった。
……この貴族、ぽんぽんするの癖なのか。私が年下に見えるのか。日本人は確かに若く見られますけどもうアラサーだから!ペットみたいな気持ちになってないかグレイベルさんよぉ……?
とにかく色々あって確かに疲れた。フワフワのベッドにダイブしたらそのままスヤリ。
このベッド、最高すぎる。