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第380部分

「そういうものですか……」


 その口調の抑揚の無さもあり、相変わらずそのシラユキの言葉の裏にある意図などには見当も付かなかったものの、少なくとも「自身の配慮の無さを責めている訳ではない」という事は何となく理解したアイシスはもうその事は気にしない事にすると、その中でも直近の言葉についてそう納得の言葉を呟きながらも、その脳裏には様々な考えが去来していた。


 というのも、それは何気なく呟かれたものの、その「力を持つ物は脅威と見られがち」という言葉はこの様な辺境で独りで暮らすシラユキは勿論、あまり他者に心を開くタイプではないと思われる、いや偶然にもシラユキやノーラ、そして手前味噌ながら自身といった直近の主だった相手に対してはその限りではなかったのだが、まあ勇者一行へのそれは勿論、その「心を開いた」相手への態度からしても恐らくはそう推測出来るタチバナにも当てはまると考えると、無論それだけがその要因ではないにせよ、その両者の現在の性格や状況にも何となく得心が行ったのであった。


 そして、流石にその言葉通りに「他者よりも遥かに優れ」ているなどとは思わないものの、少なくとも件の「時間停止」の魔法に関しては間違いなく「脅威」と認識されてしまうであろう事を考えると、その存在をわざわざ吹聴しない事は勿論、それが如何に強力であろうとやはり安易には使用すべきではない、という事も改めて考えていた。


「あ、ところでなんですけど、なんで私は『察しが悪い』んですか?」


 そうして思考に耽っていた弟子に配慮したのか、その呟きにはシラユキも特に返答をしなかった事でまた暫しの沈黙が訪れていたが、その思考の最中でふとした疑問が生じると、アイシスは特に遠慮もせずにそれをそのまま言葉にしてシラユキへと尋ねる。


 しかし、あまりにも「そのまま」言葉にした結果、確かにそれは少なくとも師に対する質問としては曖昧……という訳ではないものの、丁寧さには欠けるものである事は確かであったが、無論その意図する所が分からない筈も無く、かつこれまでの言動からして恐らくはその様なちょっとした無礼など気にはしない、少なくともそれを態度には出さないであろうと思われるにもかかわらず、その答えが明白な筈の質問にも珍しくシラユキが即答する事は無かった。


「……確かに『挨拶をした』としか申してなかったが、もしかしてお主はあ奴と、フィロソフィアの奴とは会っていないのか?」


 とはいえ、流石は「大賢者」という事かその原因となったであろう疑問に答えを出すのにもそう時間は掛からなかったらしく、直ぐに口を開いたシラユキはその様な思考をする羽目になった理由をそれとなく示しつつも、遂に個人名を出してアイシスにそう訊き返す。


 しかし、それだけ当人としては重要な質問だという事なのだろうが、その発言は珍しくアイシスの質問への回答としては、少なくとも単純な文意のみでは成り立っていなかった上、急に聞き慣れない名前を出され、かつ意外な質問を受ける形となったアイシスもまた暫し言葉を詰まらせる。


「……ええと、フィーさんの事ですよね? それならそうですね。タチバナは色々とお話をしたみたいなんですけど、丁度その時には私は眠っちゃってたみたいで。でも夢の中で挨拶だけは聞いた……んだったかな?」


 尤も、此方も精神面の未熟さは兎も角その聡明さはシラユキ達も認めるだけの事はあり、直ぐにシラユキの言わんとする事と、その質問に答える事が自身の質問への回答にも必要である事を理解したアイシスはその名が自身の記憶する通りのものである事を確認しつつも、その当時の事をタチバナから聞いた話を元にそう説明する。


 とはいえ、日時的にはそこまでの時が経過した訳ではないものの、当時は夢の中に居た為に直接的に体験した訳ではない上に、その後もあまりにも多くの事を経験した為にその時の記憶も既にそこまで鮮明なものではなくなっていたが、少なくとも台所のタチバナがわざわざ訂正をしに来ない程度には、その説明もいい加減なものという訳ではなかった。


 尤も、種々の事情によりそんな事にまで考えが回らなかったアイシスとは異なり、一定の作業をしつつもその話をより客観的に聞いていたタチバナとしてはまた別の、則ち例によってシラユキがそう振舞っているだけであるという可能性はこの際考えない事とすると、わざわざフィーの話を聞かずともシラユキならば例の魔法によりその時の状況もより詳細に見聞きしているのではないか、という疑問が無かった訳でもなかったが、それを尋ねに現れてしまえばこれまでの、自身は主とその師の話を盗み聞きをする様な者ではない事を示す為の努力も無駄になってしまう為、どうにかアイシスもそれに気付くか、或いはシラユキが自主的にその事について話してくれる事を人知れず願うのであった。

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