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何十にも重ねて告白してくるな!、王太子。


向日葵に、霞草と羽衣草……。

どれも愛を紡ぐものや贈られた相手に福を届けるような花言葉ばかりである。


贈る花の意味を調べ、色と意味を合わせて、見た目も中身も素敵な花束を作るのは容易いことではない。


その前の贈り物たちもそうだ。アリアのために、私が喜ぶ顔が見たいからと考えて用意してくれたものばかりである。いや、顔は見れないのだけど。


考えれば考えるほど、アリアは彼の気持ちを認めざるを得なかった。



「たし、かに………、貴方様は、私が好き?、なのかもしれないよね。あんな花束だってくれたし……。」


「なのかもしれないじゃなくて、確実に好きなんだが。……あの花束の花言葉に気付いてくれたんだ、嬉しいな。」


花束を見つめるアリアの様子を王太子は照れ臭そうに微笑んで眺めている。


「……侍女長が教えてくれたのよ。というか、何よアレ。物凄くっ……、こう……!!!、なんというか……」


「『愛してる』って言いすぎ?」


「言い方っ!!」


言い難かった内容を王太子が直球に述べたせいでアリアは気恥ずかしくなった。



「告白すると誓った後、最初に送った花束の意味を理解していない様だったから、今回も向日葵を使ったんだよ。」


「え、……えーっと、ああ!、あの、向日葵とオレンジと白のカーネーションの花束のこと?」


求愛すると宣言した三日後に王太子が愛の言葉とともにアリアに渡した花束は、三本の小ぶりな向日葵を、オレンジ色のカーネーションと白色の小さいカーネーションで彩ったものだったとアリアは記憶していた。

自分では飾らない明るい色の花束を貰ったため、とても新鮮だったことを覚えている。


「そうそう。向日葵は知ってると思うけど『あなただけを見つめる』。更に小ぶりだと『愛慕』も加わるし、三本だと『愛の告白』っていう花言葉も……、」


「えっ、ちょっ、ちょっと待って……、そんなに花言葉の意味上乗せされてたの……??」


「あと、カーネーションは『無垢で深い愛』。これは今日贈った霞草に近いかな?、色別だと白色は『純潔の愛』、『尊敬』、『私の愛は生きています』が君に贈りたかった意味で……、」


「………頭クラクラしてきた。」


アリアの静止も聞かずにつらつらと小っ恥ずかしい花言葉を述べていく王太子の話を、アリアは頭を抱えながら聞いている。


「オレンジ色は『純粋な愛』、『あなたを熱愛します』、『清らかな慕情』という意味なんだ。」


王太子はアリアの反応を楽しむように微笑みながら花に乗せた求愛を告げた。



「……これで、どれだけ君の事が好きかわかってもらえたかな?」



余裕そうに囁いてくる王太子に苛つきを感じながらも、さっきの鼓動の速さといい、彼の耳が今も赤いという事実から真剣に告げてくれている事が解ってしまったアリアは大きく溜息をついた。


「……………そうね、貴方が物凄くロマンチストなのはわかりました。」


「え、そこ?、好きだってことは……」


「何となくわかりましたって!!、それは!!、もう!!!」



「……これで足りないんだったら、カーネーションの本数にも意味を込めたって言ったほうがいい??」



王太子が立ち上がって自分にに迫ってくるのを少し怖く感じたアリアは椅子から離れて後退りしている。




「言わなくていい!!!、もう充分!!!もう充分だからっ!!、ほんとっ、やめてーーーっ!!!!」
















「………いやぁ、すっごいね。君の婚約者さん。」


「婚約者じゃない!!。ただ私に熱烈に求婚してくるだけの人だって………。」


笑いを通り越して若干引いているファヴィオに対して、アリアは間違いを強く指摘した。



「確かに熱烈だな、押しが強い……。」


「強すぎるわよ……、何なの……?、この前まで好きだとも言ってなかったくせに……。そのせいで王都の収穫祭に出る羽目になっちゃったし………。」


アリアは手で顔を覆って絶望している。


あの後、愛してるだの、好きだのアリアが私の気持ちを認めてくれるまで言い続けると王太子に求愛され続け、混乱しているところで収穫祭に来てほしいと言われたアリアは『行くからその求愛をやめろ!!』といった旨を告げてしまった。


そのせいで今、馬車に乗り込んでファヴィオと王都に向かっている。



「あの人誰かに頼むときだけは凄いんだよね……。完全に道を塞いでくるし、了承を得れるギリギリを攻めてくるじゃん?、ある意味策士だよ………。」


「外交関係の交渉やらせたらこっちが有利な同盟とか組めそうね……、そっち方面で活かしてほしい。」


「それ良いね!。交渉関係の仕事全振りしちゃお。」


いいアイデアを貰ったと云わんばかりに陽気になるファヴィオを見て、今ですら仕事に追われている王太子に交渉全振りは流石に可哀想だと、アリアは少しだけ王太子を憐れんだ。




「……そういえば、今更なんだけど何で私と馬車乗ってるの?、ファヴィオ。」


「……本当今更じゃない??、ノウン家で乗るときは何も言ってなかったのに。」


車窓に目を向けながらるんるんと仕事をどうやって振ろうか考えていたファヴィオはアリアの問いに驚いて目を見開いた。


「いやぁ……、出ようとしたら私もー!って来るからそこまで考えてなかった……。ファヴィオだし。」


「………それ信頼されてるって捉えていい?、」


自分(親友)の扱いが軽すぎやしないかとファヴィオはジト目でアリアを睨んだ。


「私もね、殿下……っていうか、両陛下から収穫祭に来ないか?って招待状が届いたから。」


「あー、王太子が帰ったあとすぐに届いたやつね。」


アリアは自分が了承するのを見越したかのように招待状が届いたことを思い出した。



「それと、殿下からアリアの護衛を頼まれたので、馬車に乗り込んだって訳。」


「………私がファヴィオの護衛をするんじゃなくて???」


「………、それは私でもそう思う。文官に筋肉ムキムキ怪力女を護衛しろって無理があるよね。」


「それ褒めてるの??、」


「褒めてる褒めてる〜、」


ジト目で睨んでくるアリアに対してファヴィオはヘラヘラと笑っている。



「まぁ……、物理的な護衛じゃなくて、()()()?」


「虫よけ??、」


「それと『あの小説』に関する動きがあったときに対応する為に護衛しろって言われた感じかなぁ。」


虫よけの意味がわからないアリアを他所に、ファヴィオは自分の考えを述べていった。


「あぁ、()が闇の帝王みたいになる『王太子の恋人は平民』第二弾ね。」


「あれ凄いよね……、読んだけどスケールが恋愛小説じゃなくなってるじゃん?、()()()とか闇属性?の魔法を無詠唱でバンバン使ってるし……、」


()()()()がね。そもそも私まっっったく魔法使えないのに、どうしてああなったんだろう……。」


「物理攻撃全振りステータスみたいな感じなのにね、アリア。」



元々魔法が使える人間が少ない世の中ではあるが、魔法が使える能力は遺伝すると言われているため、魔力を持つ者たちを取り込んできた貴族は魔法を使える者が市井の民よりは多い。と言っても、ほんの少しだけ風を起こせたり、蝋燭の火のような明かりを灯せる程度の者ばかりだが。


その中で、アリアは全く魔法が使えない。


『魔力が体力と怪力に吸われたんじゃないか?』と宮廷魔術師に言われた位である。



「ま、ほんのちょっと魔法が使えるより筋力あったほうがいいでしょ。うちの家族魔法なんか使わないし。」


「まぁ、全部筋肉で解決してるような家だしな……。アリアが騎士としても優秀だって事は全く知られてないから、悪役として話盛るために入れちゃったんじゃない?」


「主役が光を使うなら悪役は闇、安直だけど筋力よりはそっちの方が良いわね。……それで、その小説がなんて?」


話が大幅に逸れてきてしまったので、アリアは要件を聞き出そうと尋ねた。


「あ!、そうそう、その第二弾で収穫祭の描写があるから、そのシーンの再現防止の為に二人で乗せられたんじゃないかな……って、」


「え、収穫祭も載ってたの?」


最初と最後を少し読んだだけのアリアは、その部分の話を丸々知らなかった。


「そりゃあるでしょ、二人っきりで市井にお忍びで出かけるとかのイベントには持ってこいなんじゃない?。よくあるじゃん、二人で久しぶりにデートしてドキドキする展開とか……」


「ごめん、私恋愛小説読まないから知らない。いいから収穫祭の場面の内容教えて。」


「はいはい、」


アリアにバッサリ斬られたファヴィオは少し落ち込みながらも、何処からともなく小説を出して頁を捲り始めた。



「えーっと、収穫祭で王族や主要貴族が参加する一般参賀で……………、は?、」


文字を追っていたファヴィオの手が止まった。


「なん、だ……、これ?」


「何が書いてあったの?」


アリアに問われたファヴィオはゆっくりと重い口を開いて答えた。




「殿下が魔物に襲撃される、って……。」











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