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悪役から呪われたお姫様ですって、お嬢様。



「で、コレは貴方様の仕業なんでしょう?、王太子殿下。」



「……………ハイ、間違イアリマセン。」



アリアの執務室で机に置かれた絵本の前で縮こまりながら謝る王太子の様は、まるでアリアに尋問されているかのようだった。


王太子の目の前にの置かれた銀箔で装飾が施され、美しい絵で彩られた『呪われたお姫さま』という絵本は、醜い公女と王子様の恋物語を描いたものである。




公爵夫妻の間にとても美しい娘が産まれたことを妬んだ悪い魔女が、小さな公女に家族以外の者には悍ましい化け物のような顔に映るよう呪いをかけた。

そのことを知らない夫妻と公女は、その顔のまま公女の婚約者になる王子に会ってしまい、王子は公女を醜い化け物と罵り、婚約を破棄したいと懇願するようになったのだ。


国の重要な決め事であるから婚約破棄はできないと国王から窘められた王子は、公女を徹底的に無視するようになる。

それでも公女は醜い顔をベールで隠し、王子のためにと懸命に勉学に励み、そして仕事を手伝っていった。


十年間王子に無視され続けても、公女は必死で王子の支えになれるようにと頑張り続け、遂にはその身を犠牲にして王子の代わりに刺されてしまう……………、




ここまでの内容を本屋で読んだアリアは「なんだコレっ!?」と思わず叫んでしまった。

なんせ、まるで自分の人生を美化したかのような物語だったからである。


いや、顔が醜いのは呪われてるわけじゃなくて、元々なんだが。

それに、王太子の為に努力したわけじゃなくて王妃になったときに恥じないように国のために努力したんですけど。


と、ツッコミを入れたくはなったものの、刺されたことや、幼い頃に王太子から罵られた事実なども絵本の中に書かれており、誰がどう見ても自分がモチーフになっているのが丸わかりであることにアリアは頭を抱えてしまった。


その後がまた素敵な話なんだ、と言う店主の言葉に乗せられてアリアは頁を捲ったが、

やっぱり自分と王太子のイザコザの美化にしか思えない内容が綴られていたのだ。




自分が散々罵り遠ざけて来た公女が、自分の為に命を(なげう)ってまで助けてくれたことに自責の念を感じた王子は倒れた公女を寝る間も惜しんで看病し、彼女を死なせまいと懸命に努力する。

そして、王子の必死の看病の末、一週間後に公女は目を覚ます。


そのことを王子は泣いて喜び、今までの行いを詫びてどうか自分の妃になってほしいと懇願したが、公女は自らの醜さとお腹の傷を理由に断ってしまう。


公女を醜いと罵ってきた王子は、自分が公女を追い詰めていたのだと反省し、公女を何度も訪ねては謝り、真摯に彼女に愛を告げていく…………、




ここまで読み勧めて、「だからなんなんだこれはぁっ!!」とアリアは今にも絵本を投げてしまいそうな勢いで閉じてしまった。


本屋の店主が「この公女様が本当に素敵で……、ここに出てくる王子は良い人だからさ、公爵領でも大人気なんだよ。」と述べられたアリアは、この王太子と自分のやり取りに恋愛をくっつけたような物語が世の中に広まりつつある恐怖を感じて顔から血の気が引いてしまった。


この事実に似通った話が広まるということは、王太子と私の仲が良いと誤認されてしまう恐れがあったからだ。


誰だ、こんな物語を書いて二人をくつっけた野郎は。


アリアは沸々と作者に対して怒りが込み上げ、脳を高速回転させてこの絵本が人気になって得する人物を探し出した。





その人物こそ、今アリアに睨まれて縮こまっている王太子である。




「………私と貴方様のありもしない恋愛物語を作り上げて?、民に私達はとても素敵な夫婦になるんですよ、とでも言いたかったんですかね??、」


アリスの格好のまま、頭にベールを取り付けただけのアリアの瞳は王太子には見えていなかったが、笑っていないことだけは理解できていた。



「なんですかこの隠れてもいないゴリゴリのプロパガンダはっ!!、外堀から埋めてやろうって魂胆か!!!、というかもう美化しすぎで色々ツッコミたいんですけど!!、とりあえず殴っていいですか!?」


「本当に申し訳ないが殴るのはやめてくれ!!、治癒魔法師がいないところで殴られると大惨事だ!!」


勢いよく立ち上がったアリアに対して、王太子は謝りながら猛獣を宥めるように両手をアリアの目の前に出した。


「私が悪いのはごもっともなのだが、落ち着いてくれ!、ここでアリアが私を殴ったら両家の間にも亀裂が入る!!、あの、本当……、今日は殴らないでくれ!!申し訳ない!!」


「………確かに、王太子殿下が我が領内で傷を負ったとなると厄介ですね。それに、私が殴ったとなれば不敬罪。………仕方無い、今日は我慢します。」


王太子の必死な謝罪で冷静さを取り戻したアリアは、拳をおろしてソファに座り直し、その様子に安堵した王太子は息を吐きながら落ちるように腰を下ろした。





「………で、何でこんな物語なんか作って世の中にばら撒いてるんですか?」


「………あの小説みたいな、君に対するありもしない悪評を書き連ねたモノばかり国の中にあるから、君を称賛したものがあってもいいと思ったんだ。」


罵っていた自分が言うことではないが、アリアに対する評判は()()()()があるまでは悪評ばかりであった。


醜い公女、ひきこもり、何もしない醜女………、社交界に姿を出さないことを良いことにアリアは貴族達の嘲笑の的だったのだ。


それは王太子の代わりに刺された今でもあまり変わっていない。


「十年間も放っておいた私が言うことではないけれど、君は民を重んじていて、国のために勤勉し、様々な事を国に齎してくれている。……それなのに、君が褒め称えられないのはおかしいだろう?。」


「………、」


「だから、多くの人に知ってもらおうと思って。何かいい案はないかとずっと考えていたんだ。」


「……っ、貴方は……」



「そしたら母上が君を讃える絵本を作ろうとしてたから、これはいいと思って便乗させてもらったんだ。」


「はい?、……いま、なんて????」


自分の事を思い遣ってくれた王太子に声をかけようとしたが、その前に入ってきた情報にアリアは目を見開いた。




「だから、この絵本出版の主犯は母上なんだ。私は片棒を担いだだけ。」



「嘘だろ…………。」




まさかの人物が関わっていたことに、アリアは驚きを隠せなかった。














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