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街でデートかい?、アリスちゃん。




「民のことを第一に考えて、食糧問題や経済発展などに尽力する君は本当に素晴らしいよ。私も見習わなければならないな。」



後光が射すような笑みで真摯に褒めてくる王太子のことを、アリアは眩しすぎて見ることができない。



コイツ……!!!、コイツっ……!!!、本当に………っ!!



「…………貴方様って本当、素直に褒められる所だけは素敵よね。」


「え?、」


「いや何も。……ただ、私も貴方様を見習うべきところがあるな、と。」


アリアはため息とともに小声で呟いた戯言を王太子に言い直して伝えた。


「他人の良い所を妬むことなく素直に褒めることができるのは素敵だな、と思ったので。」


人の上に立つものとして、妬むことなく部下を褒め称えることが出来るというのは、信頼や忠誠心を得る事の出来る君主であるという証になる。

現にアリアも夫として見れるかどうかは別として、家臣として彼に使えても良いと思う位には絆されていた。


「そう、か……、ありがとう。……君に褒められるのは嬉しいな。」


照れ臭く笑う王太子の顔に、アリアはほんの少しだけ好感を抱いた。










「あら、アリスちゃん、もしかしてデート!?」


「ええっ!?、つ、ついに、アリスちゃんにも彼氏が……!!」


「こりゃまた別嬪な騎士様を捕まえたもんだな!!、やるなぁ、アリスちゃん。」



街行く顔馴染みの人々から、春が来た春が来たと騒がれ、お祝いだとあれやこれやと貢がれたアリアは荷物を抱えながら身体を震わせ、大声で叫び始めた。




「どいつもこいつも………、だ!!れ!!が!!、デートなんかするかっっつーのおおおおッッ!!!!」




余りの声の大きさに、屋根で休んでいたであろう鳥達が一斉に飛び去っていった。



「ただ公爵邸まで案内してるだけだって言ってるのに……、顔見知りの近衛騎士だって紹介してるのにっ……、なんで逢引きしてることになるのよっ!!」


「顔見知り?、君に求婚してるのに顔見知りの関係で済まされるのは嫌だな。」


「あなた今お忍びなのわかってます!?、身分偽ってるでしょーが!!!!、だからテキトーに顔見知りにしてるのよ!!」


ここで公爵家のお嬢様であるアリアと王太子だとバレたら色んな意味でマズいのだ。公爵領で王太子の身に危険が及んだとなると一大事である。


「じゃあ別に恋人でもいいだろう?、私は特に問題ない。うん、むしろ嬉しいしな。」


「はぁっ!?、問題大アリだっつーの!!!、頭のネジ何処に飛ばしてきたんですか!?」


「ネっ!?」


遠回しに馬鹿だと指摘されたレオナルドは狼狽えていた。


「アリスは公爵令嬢に仕える護衛騎士で、衛兵三番部隊隊長、という役職についてることになってます。……そんな彼女(わたし)に、王宮の近衛騎士の恋人がいたらどうなります?」


「………あ、」


「そう、情報漏洩やら何やらの疑いでアリスの立場が悪くなるし、公爵領内だけに留まっている名前が他のところに知れ渡る事にもなりかねませんよね?」


「そうなると、近衛騎士団が直に調べに来るかもしれないのか……。」


「幸い公爵直下の衛兵の皆さんは正体を知ってるので良いんですけど、そちらは事情を知りませんからね。最悪王太子殿下が求婚することも叶わなくなるんじゃないですか?」


「それは困る。」


「なら、我慢してください。」


「だが……、」


「我慢。」


そもそも恋人でもねぇくせにしゃしゃり出てくるんじゃないこの野郎と思いながらアリアは王太子に圧をかけ、威圧に耐えきれなかったレオナルドは渋い顔をしながら頷いた。




「よし、そうと決まったら必ず否定してください。じゃなきゃ国王陛下に求婚破棄を………」



「おっ、アリスちゃんー!!!、恋人と一緒かい!?」



どいつもこいつも………ッ!!!!



アリアは王太子に言い聞かせる説教を遮った主の方に振り向き、少し強めの態度で話しかけた。



「誰が近衛騎士の恋人を連れてくると思ってるのよ!?、本屋のおじさん!!!」


「こ、近衛騎士様っ…!?、それは………さすがにアリスちゃんでも選ばないなぁ。すまんすまん、仲よさげに話してたもんだから、つい……。」


アリアが怒りながら指をさして紹介した男性がとてつもない美形の王家直属の近衛騎士だった事に本屋の店主は狼狽えていた。


「そうだよなぁ……、王家に忠誠を誓う近衛騎士なんか恋人にしたらなァ……、この領地じゃ命取りだもんな……。」


「というかこの人と恋人って言われるだけで吐き気がしそうよ。」


「そ、そんなに………なん、ですか?」


うんうんと頷き合う二人に対して王太子は騎士の口調を真似しながら尋ねた。


「そりゃあ、うちのお嬢様の天敵が、騎士様が仕える王太子殿下だからなぁ。……みんな、王太子殿下はその………、あんまり、好きじゃないんだよ。」


「すきじゃ、ない……。」


自分と目を合せず横に逸らす店主の言動に王太子は少し冷や汗をかいていた。


「近衛騎士様には悪いんだけど、うちのかわいいお嬢様を貶して、十年間放って置いて一生癒えない傷を作ったくせに手のひら返して求婚してるだろう?、……そんな奴を許せだなんて簡単にできないからなぁ。」


「うぐっ……、」


「王太子殿下の人となりが良い人で、お嬢様が許してて、仲よさげだったら許す……とかもあるかもしれないけど、そもそも王太子殿下なんてこんなところに来ないし、見ることも出来ないような貴いお方だしなぁ!!」


「なるほど……。」


あはははと冗談めいた口調で笑う店主の前で、王太子が真剣に考え込んでいる様子を目撃したアリアは、王太子が変なことを考えつく前に話を逸らそうと喋り始めた。



「それで、おじさん私に何の用だったの?。まさか茶化しに来ただけ……、とか言わないわよね。」


「なわけないだろう、本気で茶化すなら騎士様が帰ってからやるさ。」


やるな。


「いやぁ、この前相談した本の件でな……、」


「ああ!、あの恋愛小説。それがどうしたの?」




「実は、次巻が入荷されてきたんだよ………。」




「「え。」」




一冊で完結されており、あの物語どおりに事が進まなかったことで用済みだと思われていた小説の次巻が出てきたという事実に、二人は口が塞がらなかった。















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