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他の男を褒めないでくれ、アリア。



「……君に求婚している男がここにいるのに、別の男を褒め称えるなんて………。」


「なんですかその私が浮気してるみたいな言い草は!!」



フィリップ王太子殿下が武芸に秀でた若者だと聞いて黄色い声をあげたアリアにショックを受けた王太子は、かれこれ十五分、書類に手が付かないほどメソメソと落ち込んでいる。




「私だって……、逞しいとまでは言えないけど、君好みの身体に鍛え上げたのに……。それに、今だってギルベルトに特訓してもらってるのに………、」


「ええ、ええ!、確かに王太子殿下の身体は良い筋肉がついてますとも!、一ヶ月で鍛え上げたのは凄いですよ。……ってちょっと待って何故お兄様が出てくるんですか!?」


いじける王太子にさっさと仕事を再開してもらいたいアリアは励ますように声をかけたが、いきなり飛び出してきた兄の名前に驚き、つい声を荒げながら尋ねてしまった。


「ギルベルトに勝てないとアリアの婿として認めないと言っていたから、それならギルベルトから学んで何度も挑戦しようかと思って、臨時で週一勤務の近衛騎士として雇った。その間は遠征をなしにすると約束したら喜んで受けてくれたんだ。」


鍛錬は物凄く厳しくて血反吐がでるが、と王太子は苦い顔をしながら付け足した。


「あ……、それでお兄様最近よく家にいるんですね。」


そういえば近頃、遠征がなくなってソフィアとエーリオと過ごせるんだ!、と喜んでいた兄を思い出し、魔物討伐や国境整備などの仕事が入らないのは珍しいと考えていたが、こんな原因があったのかとアリアは納得した。




「……それよりも、君はどうして私じゃなくてフィリップ殿が素敵だなんて言うんだ。」


「はい?、」


自分が素敵だと思ったことを素直に言った事の何が不満なのだろうか、と考えながらもアリアは拗ねるような目で見つめてくる王太子に言葉を続けた。


「だって、武芸に秀でていらっしゃって、逞しい筋肉をお持ちなんでしょう?、しかも、爽やかで気さく……、それだけ聞くと何も申し分のない理想の殿方なので、素敵と言っただけですけど。」


「あ、確かにアリアの理想の婿像であるノウン公爵に近いね。」


アリアの理想の殿方発言で雷を打たれたような衝撃を受けている王太子に追い撃ちをかけるかのような言葉をファヴィオが返す。


「でしょ?、……あ、勿論フィリップ殿下はアウローラ様の婚約者だから婿にするわけじゃなくて、近くの騎士の方とか、武芸の優れた方がいれば………」



「駄目だ!!!、絶対だめ!!!」



アリアの言葉の続きを待つことなく王太子は執務机から勢いよく立ち上がり、ファヴィオ達と机を囲んで座るアリアの肩を力強くつかみ、切迫した声を出した。





「異国に嫁ごうとなんてしないでくれっ!!」




は??????



必死の形相で訴えているレオナルドを他所に、他の三人は予想外な王太子の言動に当惑していた。



「君が私以外の人と結婚するって事すら度し難いのに………、この国から出ていくだなんてっ……!!、絶対駄目だ、私は許さないからなっ……!!」


「待って、何で王太子殿下に許しを得ないといけないんですか。……そもそも、私結婚するだなんて言ってないのですが。」


「え、」


王太子は大きな瞳をぱちくりとさせてアリアを眺めている。


「私は一度手合わせをお願いしようかな、と言おうとしたんです。……隣国に嫁ぐだなんて王妃になるぐらい面倒くさいことを私がするとでも?、

まぁ、婿養子を取れるなら……ウギャーッッ!?!?」



アリアは言い終わる前に王太子に椅子ごと抱きしめられ、公爵令嬢としてあるまじきうめき声を放ってしまった。


「ちょっ…!!、おおおおお、王太子殿下っ!?、なっ、なにヲっ!?」


「……っ、良かったぁ………!!!、」


とても安堵した表情で呟く王太子を片目に、何も良くねぇわというか何でこんなことになっ(抱き締められ)てるの!?!?、と家族以外の異性から抱き締められたことのないアリアはパニックに陥っていた。



「……もう、私の傍から君が消えることに耐えられないんだ。……だから、できればずっと……、」



王太子は甘く囁きながらアリアの頬に手を添え、ゆっくりと顔を近づけていく。二人の吐息が混ざり合う位、顔と顔が近寄った。


そして……、



「近い近いちかいちかいっ!!!!!、顔が近すぎっ!!」



王太子の顔は慌てふためいたアリアの手によって遠ざけられた。




「何するんですかっ!!!、本当に何してるの!?!?、私仮にも未婚の令嬢なんですけどっ!?、」


アリアはぐるぐると目を回しながら顔を真っ赤にして王太子を自分から剥がそうと必死になっている。


「……っ!!!、あ、す、すまないっ!!、……つい、感情的になってしまって……!!、」


理性を今さら取り戻したのか、王太子は焦るアリアを見て顔を茹でダコのように赤くしながら慌てて腕を解いた。


「なんなのですか!!、もうっ、ファヴィオやティグレ様だっている前で……っ!!!、こんなっ、こんな………っ!!!」


アリアは興奮気味に、手をわなわなと震わせて、喉に詰まった言葉を発した。




「もうお嫁に行けないっ……!!!、」




ファヴィオはアリアが放った言葉で、思わず二人の問答を肴に飲んでいた紅茶を吹くところだった。


どんな魔物と対峙しようと、腹を短剣で刺されようと狼狽えることのなかったノウン家の公爵令嬢が、熟れたりんごのような面持ちで混乱し、赤く染まった顔を手で覆い、生娘のような初心な言葉を発している。

それがファヴィオにとっては予想外だった。

いや、未婚のご令嬢であるため生娘ではあるのだが、ファヴィオから見たアリアは誰に対しても堂々と渡り合う肝の座った淑女であったため、異性にここまで狼狽えるとは思っていなかったのだ。


十年間毎月アリアとお茶をしていたティグレもファヴィオと同じ思考に至ったらしく、手に持ったティーカップに口をつけるのを忘れたまま固まっている。

王太子に至っては予想打にしなかった行動に胸を貫かれ動揺し、大きく呼吸をして平穏さを保とうとしていたが、アリアの言葉を逆手にとれるんじゃないかと思い付き、すぐさま行動に移した。



「お嫁に行けないだなんて、私のところにお嫁に来ればいいんじゃないか?」


甘く蕩けるような声で囁きながら、王太子はアリアの左薬指に口付けをした。


「なっ、なっ……!!!」


頭が大混乱しているなかで、追い撃ちをかけるように王太子から手にキスをされたアリアは陸に上がった魚のようにパクパクと口を動かし、




「なにするのよ、このっ、変態ッッッッ!!!!!!」




という叫び声とともに、王太子がそのまま床に倒れ込む程の平手打ちを頬に食らわせた。






















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