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何だかんだ慣れてきましたね、お嬢様。


 

「今残っているのは外交関係と、アウローラ王女殿下の誕生祭に関する書類ですよね?、」


「あ、ああ。」


王太子は自分の食べ終わった食器を慣れた手付きで配膳車に片付けながら話すアリアをあ然と眺めていた。



「なら……公文書の翻訳とか、誕生祭の経費の計算や報告書のまとめ位は手伝えると思います。」


「え、本当かっ!?、ーーーっ!!、」


まさかそこまで作業を担って貰えると思っていなかった王太子は、喜びと驚きが合わさって勢いよく椅子から飛び上がり、また膝を机にぶつけてしまい、声にならない叫びを上げた。


「うわ……、すごい音したけど大丈夫ですか?」


アリアは王太子の一連の行動にに若干引きながら、悶え苦しむ彼に声をかけた。


「だい……、じょう、ぶ……多分……、いたい……。」


「何処が大丈夫なんですか、自分で痛いって言ってるし……。」


段々とか細くなる声を発しながら膝を抱えて震えるレオナルドにため息を付きながら、アリアは残りの食器を片付けて近寄った。


「腫れたりはしてませんか?、後で湿布と氷嚢を持ってきますね。それから、王太子殿下の仕事を手伝わせていただきます。」


「……何から何まで申し訳ない。」


「貴方様が謝ることじゃありませんよ。臣下ですから、王太子殿下の助けになる事は当然のことです。」


王太子が重症ではないことを確認し、アリアは気を落として謝る彼に清々しい笑みで言葉を続けた。



「それに、何だかもう世話の焼ける子犬みたいで、そこまで腹を立てることもないですしね。」


「子犬……、」


「ええ、しょげてる顔とか、無邪気に嫌がらせしてくるところとか、そっくりでは?」



どうせならかっこいい大型犬が良かった、と王太子はアリアの発言に衝撃を受ける傍らで考えていた。

















「じゃあ、夕方はお兄様とお過ごしになってるのね?」


「はい、その日終わらなかった書類のお手伝いをさせていただいております。」


アリアが王宮に滞在しはじめて四日目の午前。アウローラはアリアに隣国の方との接し方を教えてもらう、という名目で二人でお茶を嗜んでいた。


「昼間も私の稽古をつけてくださってるのに……。アリアお姉様、ご無理はなさらないでね?」


「無理だなんて……、アウローラ様との礼儀作法の復習は私が教えることもない程完璧なので何もしていませんし……。それに、沢山ドレスを頂いているのにお礼をしないのもどうかと………。」



アリアは王宮での暮らしが至れり尽くせりのため、仕事でもしないと逆に自分がおかしくなりそうだと考えていた。


アウローラ王女殿下の礼儀作法や外交について確認してほしい、との願いで王宮にやってきたものの、アウローラはアリアが指摘や直すところなど何もない完璧なお姫様だった。

そのため、アウローラ王女との時間はお茶会や隣国の文化や習慣を一緒に学ぶ程度のものであり、王妃教育を受けてきたアリアにとっては娯楽、というかとても素敵なお姫様といれる至福の時間になりつつある。


さらに朝から何皿もの食事が並び、昼も豪勢でアフタヌーンティーも国一流のパティシエが作るスイーツで彩られ、夕食に至っては国王夫妻と同じものが出される。

そのため、アリアは王太子と朝食を一対一で共にしなければいけないという苦行以外は、美味しいものを食べてダラダラ過ごして好きな本を読む、という幸せな生活を送らせてもらっている。


こんな生活を一週間でも続けたら、何だかわからないがヤバい気がする、と脳内で危険信号が出たアリアは王太子の仕事を手伝った次の日も、王太子の部屋に訪れて仕事がないかと尋ね、持ち帰って残業している分を手伝うことにしたのだ。


自分だけ優雅な日々を過ごす罪悪感と、ドレスを貰ったのにお返しができないもどかしさもあるため、王太子に一度は断られたものの、何とか手伝いを続けさせてもらう約束を取り付け、今日も夕方に仕事を手伝いに行く予定である。



「あら、ドレスのお礼だなんて気にしなくていのよ?、十年間婚約者に何も贈らなかったのだから、ドレス七着だなんて足りないくらいだわ。」


愛らしい顔を少ししかめながらアウローラは紅茶を口に含んだ。


「私を嫌いだったのですから、贈らないのは当たり前なのでは?、それに今は婚約者ではありませんし。」


「嫌いでも礼儀礼節は尽くすべきでしょう。顔も見たことのない婚約者に尽くしてくれるフィリップ様の爪の垢を煎じてお兄様に飲ませたいわ……。」


ここまでダメな(ヒト)だとは思ってなかったのよ、とアウローラはため息とともに言葉を吐き出した。


「私にとってはとても優しいお兄様なのに、一人の女性として見ると腹が立つような方なのよね、見た目に騙されちゃうけど……。アリアお姉様もそう思うでしょう?」


「それは………、」


わかる。と言いたいところだが、仮にも王女様の兄を悪く言う言葉に肯定していいものかとアリアは頭を悩ませた。



「ま、お兄様に関しては後々私とお母様で指導するとして、今日はアリアお姉様にお願いがあるの。」



悩むアリアをみかねたアウローラは、兄の話をやめて本題に入った。


「お願い、ですか?」


「そう!、今日は隣国についてのお勉強じゃなくて、アリアお姉様にお願いしたいことがあるの。」



アウローラは少し前のめりになりながら話を続けていく。



「実はね、とあるお花を摘みに行きたくて……、それで、アリアお姉様に私の護衛をお願いできないかしら?」







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