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側室は容認するつもりです、私。


「レオナルドお兄様だって、将来王さまになるでしょう?、そしたら、アリアお姉様は王妃様になって、素敵な夫婦になるの?」




無垢な問い掛けが、アリアの心を揺さぶる。



兄を慕っている妹達に対して、兄の私への対応を伝えてもいいものなのか。というか、まっっったく王妃になる気がないと宣言していいものなの!?、とアリアは悩んでいた。




「……どうでしょうね、私は王妃候補であって、もう婚約者ではありませんので、何とも………」


「でも、お兄様はアリアお姉様に結婚を申し込んだでしょう?、条件付きとはいえ、お兄様と結婚する確率は高いんじゃない?、そしたら仲良し夫婦になるの??」


「くっ………、」


ツラい。

ものすごくつらい。


無垢な麗しい瞳をきらきらと輝かせて、希望に満ちた答えを期待しているイアーリアの顔と問い掛けがアリアには拷問を受けているかのようにキツかったが、このまま押し黙るのも癪だなと思い、ええい儘よと自分たちの状況を説明し始めた。



「………そもそもですね?、私は王太子殿下に婚約当初から嫌われておりまして、婚約していた間に贈り物も、手紙も貰ったことがないのです。……ですので、仮に結婚することになったとしても、仲の良い夫婦にはならないと思いますよ。」


「そんな……、」


「うそ、よね……?、流石にお兄様だってアリアお姉様にお誕生日プレゼントぐらい………」


「一度も貰ってないです。というか、私の誕生日ご存知ないかと。」



アウローラが驚きながら絞り出した問いにサラリと回答し、絶句する王女様方の前で紅茶の香りを楽しんでいた。



「お兄様……、そんなにアリアお姉様の事が嫌いだったのかしら……、こんなにお優しくて気品溢れる方なのに…!!」


「嫌いでしょうね。そもそも見た目が生理的に無理なんだと思います。こんな(醜女)と婚約させられていた王太子殿下もお気の毒ですわ。このまま結婚することなく、期限が過ぎると良いのですが……。」


「………アリアお姉様は、お兄様と夫婦になりたいと思ったことないの?」


イアーリアからの質問に対して、アリアはふむ、と顎に手を当てて考えながら答えていった。


「そうですね……、最初の頃は結婚するのならばそこに愛はなくとも尊敬しあえる仲でありたい、と仲良くなろうと努力しましたけど、惨敗したのでもういいかな、と。

仮に結婚して王妃になったとしても、私はお飾りで、側室でも妾でも作って恋愛楽しんでもらえればいいや位に思ってましたから。」


「えっ、側室を持たれても平気だと仰るのですか??」


「ええ、全然平気です。」


「「……………」」


あっけらかんとした面持ちで平気だと述べるアリアに対して王女様達は開いた口が塞がらず、口元に手を当てたまま動かない。

その様子を見て、大勢の愛人を許容すると思われたのかもしれない、と勘違いしたアリアは弁明するかのように喋り始めた。


「いや、流石に何十人もは認めませんよ?、王宮の財政が逼迫しない程度……、つまり三人ぐらいなら認めてもいいかと。そうすればお世継ぎ問題も解決しますし。……ただ、側室から産まれた子は全て私の養子として、私が母となり育てる事を条件にするつもりでした。」


「……それは、どうして?」


「後継者争いと貴族の勢力争いを起こさないためです。ノウン家の私が子供たちの母となったら、側室の家など手出しできないでしょう。」


条件が気になったアウローラが聞いた問いに、アリアは迷うことなく答えていく。

後継者争いが原因で滅んでいった王国など、そう珍しいものではない。お飾りであろうとも自分が正妻である限り、そんな馬鹿げた理由で国を滅ぼさせたくないとアリアは考えていた。

母が違えど兄弟が仲良く過ごし、王に相応しいものが王になれるよう育てていくのが王妃としての努めだろう、と婚約中のアリアはどうせ将来飾りの王妃から逃れられないのなら、王妃の権力を使ってできる限りの争いごとを避けられるようにと脳内で試行錯誤していたのだ。



「それさえ守ってくださるなら、どうぞご自由に遊んでください、って思ってましたけど……、もう結婚することもないでしょうし、好きにしたらいいんじゃないですか。」


婚約者でもなくなった今となっては、どうでも良い話であったが。


達観すら超え、無関心のような面持ちでアリアは紅茶を啜る。恋に焦がれている王女様方は、とうの昔に諦めた女性に何と声をかけていいのかわからなかった。



「さ!、私の話は終わりにして、アウローラ様の誕生祭のご計画をお教え下さいませ。お二方はどんなドレスをお召しになるご予定なんですの?」



軽くぱん、と音が出るように両手を合わせつつ、プリンセス達が心躍るようにと穏やかで朗らかな口調で、アリアは話を進めていった。











「………これは、今出たら確実に死にますね……。」


「うん、何をどう繕っても死ぬ……。」


王宮の薔薇園の中から、王女様方のお茶会の様子を窺っていたティグレとファヴィオは悩ましい顔をしていた。


好いた相手への態度を改めさせるため、王太子に一時間以上説教をして、付け焼き刃ではあるが何とかお茶会が終わる前に自分達の主を自分の意志で気遣って喋れるように仕立て上げてアリアと会話させようとやってきたのだが、この有様である。


まさか王女様方がアリアと王太子の関係性を聞いているとは思っても見なかったのだ。



「今ここでレオナルドが出ていったらねぇ……、アリアちゃんに嫌な顔されるのは勿論だけど、王女様方からも絶対軽蔑の目で見られちゃうのは避けられないもんな……。」


「フィリップ殿下の話だけで盛り上がってくれてれば、まだちょっと会話できたかもしれないのに……、はぁ、ツイてないんですね、殿下。」



「……あー、ファヴィオ様。だめだ、レオナルド聞いてないみたいです。」



王太子に声をかけながらもずっとアリア達の様子を窺っていたファヴィオだったが、ティグレの言葉でふと後ろを振り返り自分の主を見てみると、


魂が抜けたような顔で縮こまっている。




「………え???、は???、なんで???」


ここに意識が存在しないかのような朧気な表情と、色すら落ちたぐらい失望した身体でうなだれている王太子の様子にファヴィオは動揺を隠せなかった。




「多分なんですけど……、人生で初めて恋心を理解した後に、想いを寄せている人から見た自分を聞いちゃったもんだから………、ショックで………。」




メンタルよっっっっっっわ!!!!




ティグレの解説を聞いたファヴィオは苦虫を噛み潰したような顔で内心王太子にツッコミを入れた。


弱い、弱すぎる。

好きな人が好いていなかった、というか、好かれるような事もしていないのに、どうでもいいと言われただけでこのザマ。

全人類皆自分のこと好きだと思ってるんだろうな、殿下(コイツ)


頭がお花畑というか、脳内が桃源郷にでもなっているのではないのかと王太子の甘さにむせ返りながら、



「……こんなところで落ち込んでたって、アリアに好きになってもらえませんからね?、ほらシャキッとして下さい。さっさと執務室に戻ってもう一回立て直しますよ。」



ファヴィオは自分の主にせめて動くようにと優しい喝を入れて、動く気力のない王太子を起こし、何で王太子の側近なのにこんなことしてるんだろう……と、自分の状況を振り返りって今日何度目かも解らない溜息を吐いた。
















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