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一度我が身を振り返ろ!、殿下。

今回は王太子側のお話です。

いつもいいねやブックマークありがとうございます。





「へぇ、それで、嫌々里帰りかぁ………。大変だったねぇ、ティグレくん。」



「地獄だった………、多分父親俺がいるって夫人に伝えてなかったんだと思う。物凄い形相だったよ……。」





ファヴィオの問に答えたティグレは、思い出しただけで吐きそう……と嘆きながら王太子の執務室の机に突っ伏している。



アルバ伯爵の王太子の歓迎ぶりは尋常ではなく、待ち望んでいたかのように贅を尽くした接客で、伯爵夫人もアルバの異母妹のヴィオラもいつになく着飾って王太子を出迎えた。


だが、誰一人として、ティグレ・ジョバン・アルバを歓迎するものはいなかった。


伯爵夫人は事あるごとにティグレを睨みつけ、伯爵とヴィオラは無視をし続ける。

これが、家族としての姿なのかと王太子は疑問に感じ、また自分の()()が無下にされていることに内心怒りを覚えた。



一週間が経った今、あの事をぶり返して自分が怒り出した所でティグレが困るだけだと考えた王太子は、優雅に紅茶を口に含み、従者の「あ~~~~、反吐が出るぅ……」という不満を聞いている。



「……、そう言えばアルバ伯爵邸に泊まることになった時、アリアにティグレは反吐が出るほど嫌だろうと伝えたら、

『わかるわ、私も舌を噛み切って死のうかと思ったぐらいだもん。』って言ってたんだが……、」


王太子はティグレの"反吐が出る"という言葉で、アリアとの会話を思い出し、唐突に語り始め、



「アリアが舌を噛み切りたくなるような出来事って、何だ?」



と従者と側近に疑問を投げかけた。

急な問いかけに二人は目を点にしたまま少しの間動かず、ティグレが身体を机から離しながらゆっくりと口を開いた。


「舌を噛み切りたくなる、って……、相当嫌なことと対峙したんすね。……逃げ切れない何か、にぶち当たったとか?」


「逃げ切れない何か、ねぇ………。」


ティグレが放った言葉に思い当たる節があるのか、ファヴィオは少し考えてから喋り始めた。



「……………、当てはまるとしたら()()じゃない?」


「あぁ!!、()()ね!!、アレは確かに舌を噛み切るかもしれないよねぇ〜!、」




「?、……何だ、アレって。」



指示語だけでは意思疎通が出来なかった王太子が盛り上がっている二人に尋ねると、声を揃えて同じ答えが帰ってきた。






「「王太子の唐突な公開処刑(プロポーズ)。」」






「なっ……、ええっ!?!?、」





まさか自分の行動が舌を噛み切りたくなる程のものだったとは夢にも思わなかった王太子は危うく持っていたティーカップを落とすところだった。



「十年間も無視し続けられた相手から、婚約破棄して自由になったばっかりなのに公衆の全面で求婚されるんだよ?、あれ以上嫌なことってそうそうないでしょ。」


「だよねぇ〜、しかも有無を言わせない状況で、プロポーズとかさァ……。私がアリアでも舌噛み切って自害したいって思う。あの時のアリアの顔、今までにないくらい切羽詰まった表情だったし。」


「な………、なっ………、」


うんうんと頷く従者と側近を眺めながら、二人から見てもそこまであの求婚が嫌なものに見えたことに王太子は衝撃を受けていた。


「で、でも……っ、婚約破棄なんて私は望んでなかったから……、それにっ、()()()()()婚約破棄されたなら、別に求婚しても平気だと………っ!」


「傷のせいで婚約破棄したわけないでしょう。馬鹿なの?、殿下本当はかなり頭悪いんじゃないですか?。」


「バっ……!?!?」



「つーか元々、アリアこの十年間で何回も婚約破棄してほしいって国王陛下に書状出してますよ。」



「はぁっ!?、何だそれは!!!」



物凄く狼狽える王太子を見て、ファヴィオは目を見開いた。




「嘘でしょ、……まさか殿下、()()()()()()()()()()()んですか??」




「そんな話一度も聞いたことない!!、というかアリアの話題は今年の母上の誕生祭でのパートナーとして選ぶように言われるまで、何もしてない!!」


いやそれもどうかと思うけど。


内心王太子にツッコみながら、ファヴィオは王妃様もしかして婚約破棄の話題出したら殿下が応じると思って口封じしてたんだな、と王太子まで話がいっていない事を推察していた。


「あぁ、王妃教育の報告の時に、アリアちゃんがたまに悔しそうに苛ついてたのってそーゆーことね。俺にも話が来てないから、陛下と王妃様あたりで却下されてたのかなぁ。」


「ちなみに、半年に一回は送ってたっぽいから二十回は婚約破棄したいって訴えてると思いますよ。」


「にじゅっ………!!、そん、なに……。」



側近からの情報に、王太子はこの世が終わるほど絶望した顔をしていた。




「ええ……、殿下十年間も放っといたのに嫌われてると思ってなかったんですか?、なんの音沙汰もなかったのに?、というか貴方がアリアに何もしなかったのに??」


お前が絶望してどうするんだよ、と言わんばかりの呆れ顔でファヴィオは自分の主を眺めている。




「……放っておいたというか、会いに来ないから忘れていたんだ。醜いと言ったことも自分ではそこまで気にしてなくて……、二年ぐらいで、婚約者候補がいたな、ぐらいの認識になってて………、」



「うっっっわ………。加害者ってこうなんだよね、他人が傷付いた事なんて理解してないし、覚えてすらいないっていうの?、」


「相手の事をここまで考えていなかったとは………。うーん、甘やかして育てすぎたかも……。」


側近と主は王太子の相手の気持ちを思い遣る心のなさに頭を抱え、美形で叩き込まれた(マニュアル)通りに対応できるからといって人の心を教えなかったことを後悔した。



「そもそもさぁ、殿下って何でアリアに求婚してるんですか?、今の話聞いてるとアリアの心情もわかってないし、自分がアリアを貶して傷付けた張本人だって事にそこまで反省もしてないじゃないですか。」


「反省はしてるっ!!、彼女が顔を隠したこと、刺し傷をつけてしまったのは勿論、私が悔いなきゃいけないことだし……」


「いやそれだけじゃないんで。」


王太子の言い訳をバッサリと斬りつつ、ファヴィオは話を続ける。


「まぁ反省しなきゃいけないことは追々お説教していくとして、第一にアリアが好きで求婚してるんですか?。それとも合理的な判断から?」




「………好き、とは?」




「「はぁ??」」



嘘だろまさかコイツ合理性だけで求婚してるのか!?!?

とファヴィオとティグレは目を見開いた。

愛し愛されている人からの口付けがなければ呪いが解けず、彼女と結婚できないというのに、好意もなく、求婚を続けているのか。

と二人は呆れかけていたが、




「いや、あの、ティグレに向ける気持ちと同じ好き、ということでいいのかっていう………」




「「そこからァッ!?!?」」




王太子の突拍子もない返答によって足から崩れ落ちそうになった。

















次回もこのまま続きます。

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