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ご実家の騎士団だってさ、ティグレ。



「アルバ伯爵直属の、騎士団……?」


アリアはティグレの言葉をなぞるように口にした。


この街道はアルバ伯爵領を通って王都へと行く道順であり、自分達がいる場所は伯爵領との境目付近である。

だが、ここはまだノウン公爵領内。

ノウン公爵家の衛兵と、王太子殿下の馬車を他の貴族の騎士団が取り囲んでいるなど、あってはならないのだ。



アリアは構えていた剣を戻して、騎士団を率いているであろう騎士へと歩いていく。



「アルバ伯爵直属の騎士団とお見受けいたします。私はノウン公爵家衛兵、第三番隊隊長アリスです。

この度は我が領内に何用でしょうか?」


会釈をしながら、アリアは堂々と挨拶を述べる。

それに答えるように、騎士の隊長は馬から降りて、アリアに話しかける。


「これはこれは…、私はアルバ伯爵家騎士団五番隊隊長のロレンツォ・エマヌエルと申します。

先程、伯爵様よりノウン公爵家との境で魔物が発生したとの報告を受けまして、その魔物の討伐に赴いた次第でございます。」


「魔物ならば既に殲滅いたしましたが。そもそも、我が領内で出没したのに、アルバ伯爵領のものが赴く必要があるのですか?」


アリアは睨むようにロレンツォに問いかける。隊長は一瞬怯んだ様子を見せたが、臆することなく朗らかに喋り始めた。



「なんと……、流石はノウン公爵家の衛兵方。精鋭方は違いますね……!!」


手を擦りながら自分達をわざとらしく称えるロレンツォにアリアは顔が引きつりそうになったが、()()()だとバレていない相手であるため、表情に出すのはまずいと何とか平常を保っている。


「実は、伯爵様より王太子殿下とご子息であるティグレ様がこの街道を通って王都にお帰りなる可能性もあるため、見つけ次第お守りせよと命令されておりまして……。」




「それにしては来るのが遅くないか?。ノウン公爵家よりも我が邸宅の方が此処に近いだろう。違うか?、」




まるで親の仇を目の前にしているかのような視線を隊長に向けながら、ティグレがアリアの前に出ていった。


「そっ……、それは…、私達も先程伯爵邸から出たばかりでして、また…、魔物の正確な位置も知らされておらず……!」


「それに、()と王太子殿下の命の恩人であるノウン公爵家の衛兵の方々を取り囲む必要がどこにある?」


「な……、いや………、あのっ……!、衛兵方がっ…………」


「まさか王太子殿下を狙う()だと思った、等という言い訳は聞きたくないぞ。」


「………っ!!!、」


主の息子からの予想外の詰問に狼狽えながらも何とか答えようとしたが、自分が思い描いていた言い訳を言われてしまったロレンツォは、言葉が出なかった。



「アリス殿、私の家のものが大変失礼を致しました。アルバ小伯爵として、お詫び申し上げます。」


ティグレはアリアの方に向き直して、恭しく頭を下げた。


「即刻領内へと引き返させますので、どうかご容赦いただきたく存じます。」


「………、わかりました。今回の領域侵入に関しましては魔物討伐のためのものであって、ノウン公爵家の侵略を目的としたものではない、と公爵閣下に報告させていただきます。小伯爵様におかれましては、どうか頭を上げていただきたく存じます。」


「お心遣い、感謝いたします。」


アリアの回答を聞いたティグレは、頭を上げるとすぐさま振り返って隊長に命令を言い放った。


「ロレンツォ、公爵家の領内から即時退散しろ。私達もすぐに王都に帰る。アリス殿達が護衛してくださるので心配は要らない。」


「かっ、畏まりました。………ですが、」


「何だ?、まだなにかあるのか?」


「アルバ伯爵様より、もう日が暮れるであろうから、王太子殿下並びにティグレ様を伯爵邸にお迎えして泊まっていただくように、と……、言われておりまして……。」



「はぁ???」



物凄く嫌そうな顔でティグレがロレンツォを睨みつけ、それに怯んだ隊長は小伯爵に怒鳴られる前に喋りきろうと慌てて言葉を発した。


「もっ、もう既に王宮にも、王太子殿下を伯爵邸に滞在していただくとの、手紙を出したそうで…………っ。」



「な…………っ、」



王太子に求婚されたときのような自分と同じ、絶望した声を漏らしているティグレを見たアリアは、いつも朗らかで明るいティグレ様がここまで嫌悪感を表すなんて……!!、と驚いたあまり後ろで待機していた王太子殿下にひっそりと話しかけた。


「ねぇ、ティグレ様って……、そんなにご実家が嫌いなの?」


「ん?、ああ……。領内を通るだけで反吐が出るほど嫌いだ、と前に言ってたな。」


アリアから耳元で囁くように喋りかけられる状況に鼓動が早くなりながらも、王太子は平穏を装って問に答えた。


「うわぁ……、可哀想。反吐が出るほど嫌いなのに対峙しなきゃいけないって最悪よね。わかるわ、私も舌を噛み切って死のうかと思ったぐらいだもん。」


「は?」


「あ、コッチの話。気にしないでください。」


舌を噛み切りたくなる状況があったという事実に驚き、そのことについて詳しく聞きたくなった王太子だったが、ここで聞いたらまた怒らせてしまうのではないかと思い直し、ロレンツォと話し終えて強い足取りで向かってくるティグレに声をかけた。


「で、どうなるんだ?」




「どーもこーもないです!!!!、俺の実家に泊まります!!!!、以上っ!!!!」




アリアが見たこともないような苛立った顔で、ティグレは悪態をつくように言い放った。
















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