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宰相じゃなくて将来は探偵ですか?、小公爵様。




「記述が少なすぎる………?、どう言うことだ、ファヴィオ。」





ファヴィオの言葉に納得のいかない王太子が聞き返した。



「どうもこうも、その言葉通り、情報漏洩してる割には記述が少なすぎるんですよ。」


「な……、」



「小説の中で、カッコいい王太子の意外な一面を見せたいのであれば、幼少期の頃の可愛い失敗の小話なんかを入れた方が、王太子に対しての愛着がわきますよね?」


「確かに……、小さい頃に大型犬に飛びかかられてからちょっと苦手で、猫のほうが好きってとこまで書いたほうが親しみが湧くかも。」


レオナルドの幼少期のトラウマを語りながら、ティグレはファヴィオの説明に頷いた。

トラウマをバラされた本人は物凄い顔で従者を睨んでいるが、気にすることなく二人とも話を続けている。




「でも、そんな事実は書いておらず、"犬より猫が好き"という部分だけが出ているとすると……、」


「幼少期のトラウマを知らない人が情報提供している、ってわけかぁ。なるほどなるほど。」


「なので、ここ五年位の方を調べればいいかと。あとは、公爵家関係の人は除いていいと思いますよ。」


「あ、そっか。このライバル役のファヴィオの記述も少ないもんね、可愛いエピソードなら九歳の頃まで、ソフィアお姉様にじ……」


「そこ!!!!喋るなバカ!!!!!」


自分の隠し通していることがバレそうになったファヴィオは慌ててアリアの口を手で塞いだ。

武術がポンコツの人間が出せる速度ではなかたったため、アリアは防ぐことができず、塞がれたままモゴモゴと怒っている。





「ゴホンっ……、とにかく、私がモチーフであろう小公爵の内容が薄いことからディチア家から情報は漏れていない。そして、ディチア家を良く見せたいという意向があるなら、当て馬なんかじゃなくて主人公に据えるでしょう。」


ファヴィオは咳払いをして、自分の話題が発展しないようにつらつらと述べていく。


「リッジュ家に至っては論外ですね。あそこの派閥争い等に関与しない方針は、王家への忠誠心よりも明らかなので。」


「それはそうだな、ましてや今の当主代理は一層手厳しいだろうから、小説なんぞは出さんだろう。」


王太子は異論が無いと頷いた。



リッジュ家当主代理ベネディッタ。

彼女は冷静沈着であり、法を犯すことを一切赦さず、慈悲すら認めないと謂われている。

最初は女であることから一族からも舐められていたが、その才能と器量、また厳格な態度から誰にも有無を言わせない地位を築き上げた、この国唯一の女性当主である。


そんな冷徹な女性が、わざわざ小説で、王太子を平民出身の者と結婚させるようなモノを広めるとは思えない。

そもそも、一切合切の貴族とのやり取りを断っているため、リッジュ家の親族で王太子の侍女になっているものすらいない。






「じゃあ、残りはノウン家(ウチ)って訳か。

……確かに、王太子が別の女性と結婚する物語を書いて広めたら、私と結婚するのを止めたほうがいいって世論になる。そうしたら私は得するもんね。」


アリアが納得したように喋るのを、王太子は唖然とした面持ちで見つめている。


「まぁ、私にとってはこの小説で王太子が婚約破棄してくれたら万々歳だったけど、()()()()()()()()不利益なんだよなぁ……。」


残念そうな溜息を付くアリアに、婚約破棄から話をそらそうと王太子が喋りかける。


「そっ、そもそも、ノウン家の人が、自分達のお嬢様であるアリアを貶して書く筈がないのでは?」


「いやー、中には恨んでる人もいるんじゃない?、あんまり領地に顔出してないし……、経済発展もまだまだ貢献できてないしねぇ……」


「そう考えているだけで充分偉いと思うが………、それに……」


口籠った王太子の反応が気になったアリアは聞き返した。


「それに?」





「…………、私が、その、ノウン家の領内を通っただけで……、領民からの視線が痛い…………。」




「「ああ………、」」




顔を塞いで落ち込む王太子に、アリアとファヴィオは憐れみの目を向けた。



「うん、まぁ……、アリアの領内での人気って、絶大ですからね。」


「えっ、そうなの????」


「そうだよ!?、貴女めちゃくちゃ愛されてるよ??」



領民から愛されている自覚がなかった公爵令嬢に対して、ファヴィオは驚きが隠せなかった。



アリアは顔が隠れているとはいえ、領民の視察によく赴き、声に耳を傾けている。

港で輸入できた良い作物は、この土地で栽培できるよう品種改良を加え、なおかつ販売ルートまで整えて農家に栽培してもらうよう依頼する。また、孤児院には多額の寄付をするだけでなく、孤児が一人一人自立ができるようにと教育を受ける機会を設け、就職先まで支援する等の貢献をしている。

王妃教育で忙しかったとはいえ、自分が学んで得た知識を領地に活用しているその姿は、領民から敬愛の念を持たれているのだ。


それなのに彼女は、全然貢献できていないと、愛されていないと考えていた。



何処まで自己評価が低いのか。



これも全て、王太子のあの発言のせいだと考えると少し腹が立ってきたファヴィオだが、今回の話とは関係が無いと、頭の隅になんとか追いやった。


「そんな愛されたお嬢様(アリア)を?、醜いだの何だの罵って十年間も無視し続けた元婚約者(殿下)が領内に入ったらねぇ……、石投げられないだけまだマシなのでは?」


が、嫌味ぐらいは言ってもいいだろうと、王太子殿下の痛いところをズケズケと突くようにファヴィオは皮肉を言った。



「っ……、」



王太子は本当に、ぐうの音も出ない。




「ま、そんだけ慕われてるご令嬢を、ノウン公爵家の人間が悪く書くはずもないでしょう。そもそも、終盤で公爵家は没落しちゃってるんだから、その時点でノウン家じゃないことは確かでしょうよ。」


「そうよねぇ…、私が書かせるなら、自分は悪役にせず当て馬程度にするわ。流石に没落は嫌だもん。」


レオナルドが落ち込んでいることがもう日常になりつつあるアリアは、気にせずにお茶を飲みながら会話をしている。




「じゃあ、プロパガンダとしてあの小説を広めて、得をする貴族を当たればいいってことか。」


「そ!、そうやって考えてくと一番主人公に似てる生い立ちの人物を、探せばいいんだけど…………」



ティグレの回答に頷いたファヴィオが、言葉の途中で溜息を漏らし、口を噤んだ。




その続きを言うかのように、王太子が呟いた。






「捕まったソリーニ子爵令嬢、ミーナか。」

































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