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窓から飛び出すのは危険です、公爵令嬢。

陽の光によって淡く虹色のように輝く白銀の髪と、

南国の海を思わせるような濃淡が煌めくパライバトルマリン色の瞳。

肌は陶器のように白く、薄紅の唇が花のように色づいている。

切れ長な眼ではあるものの、凍てつく氷のような眼差しではなく、慈愛と優しさに満ち溢れている。


国の宝にもなりそうな麗しいお嬢様を『醜い』との仰った王太子殿下は、何を考えいらっしゃったのか。


身支度をするアリアの側に立つ乳母は毎朝考えてしまっていた。


「ミレー、今日はドレス着ないから手伝わなくていいわ。」


「……もしや、お嬢様…今日は……」


「そう!!今日は休日なのよ!!!週に一度あるかないかの王妃教育がお休みの日!!!ありがとう前日の私!締め切り一日前に提出できて偉い!!!サイコー!!!」


イヤッフゥー!!!と寝間着のままピョンピョンと跳ね回り、ウキウキと頑丈なブラウスとズボンに着替えていく。


「……本当、お顔だけは公爵令嬢なのに……。」


「何か言った?ミレー?」


「いえ、何も。」


あの騒動の後、アリアの顔は魔法のベールと呪いで隠され、家族と使用人以外は見れないようになっていた。

アリアが公爵領に帰り、婚約も破棄されただろうとウキウキしていた頃、国王から謝罪文が届き


『息子はキツく叱っておくため、婚約は破棄しないでくれ』


そんな文言も付け足されていたので公爵家の中は荒れた。

荒れに荒れまくった。


ふざけんなあああ!!!という少女の叫び声が三日は公爵領に鳴り響いていたというから相当である。


怒りが収まった後、アリアは王命である婚約から逃れられないことを悟り、婚約に関して一つ条件をつけてほしいと国王に文を送った。


『レオナルド殿下が他の方を好いた場合、婚約は速やかに破棄していただきたい。』


国王はこの条件を承諾し、

好きな人ができるまでの"補欠"としてなら良い、と

王太子も承諾したため、アリアは王妃教育を受けることとなった。



それから十年、王妃教育という王都からくる通信教育の教材を一日早く終らせたアリアは久しぶりに公爵邸の外に出られることを喜んでいたのだ。



「今日はどこのお店でご飯食べようかなー、あっ、甘い物は別のお店で食べてもいいし…食べ歩きもいいよね……新しい武具も買いたい……」


「………あの、お嬢様?」


「ミレー?どうかした?」


「本当にお一人で行くのですか?

そんな……いかにもバレバレな変装で。」


髪を変色させる魔法のかかった紐で一つに結わえて灰色の髪に変え、衛兵が私服で好むような動きやすい格好に着替えただけで、瞳の色や顔の形は変えていない。


「そうよ。別に平気でしょ?」


「毎回思うのですが…、その…お顔を晒してしまって大丈夫なのですか?」


「ああ、顔!顔ね!

平気よ。宮廷魔術師様の力を舐めてもらっちゃ困るわ。

だって…私のこの顔はノウン公爵令嬢(わたし)だと認識されないんだから。」


「………へ?」



「言ってなかった?私は自分の顔を、"アリア・ルーナ・ノウンの顔"だと認識されないように呪ってほしいと懇願したのよ。

なので、私のことを公爵令嬢だと認識してない人には顔が見えるの。

だから街に出ても平気なのよ。みんな公爵令嬢の顔知らないしね。」


「…となると、お嬢様のことをノウン公爵令嬢だと認識した瞬間にお嬢様の顔を見ていたらどうなるのですか?」


「……さぁ、どうなると思う?」


乳母に向けてアリアはいたずらっ子のように微笑んだ。


「えっ、どうなるのですか?」


「おっしえなーい!!!じゃ、私は行ってきます!」


「あっ!!!お嬢様!ちょっと!窓から飛び出ちゃいけないってあれほど……!」



三階から華麗に飛び出して行く公爵令嬢に向かって伸ばした手を戻しながら、まだまだ手のかかるお嬢様だと思い乳母は一人微笑んでいた。






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