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貴方は小説でも見目麗しい王太子で、私は醜い悪役令嬢。




「『王太子殿下の恋人は平民』っていう、素敵な恋愛小説よ。」



アリアは少し皮肉を込めた言い方で本を紹介した。




「たとえ過去に君のことが嫌いだったとしても、婚約者(アリア)に不義理なことはしてないぞ?」


「……貴方様の話じゃなくて、これ物語ですから。」



真面目に言ってくる王太子にアリアが呆れ顔でつっこんだ。



「というか、恋人いなかったんですね。てっきり一人や二人はいたのかと思ってました。」



「……は?」



「あ、別に責めてるわけじゃないんですよ?。だって私、補欠の婚約者でしたし、十年間会ってなかったんだから好きな人の一人や二人、遊び相手の一人や二人いてもおかしくないかな、って。」


アリアは何も気にしてないような顔でサラサラと述べていった。


「な……、なんっ………、」



なんて信用が無いんだ王太子(わたし)は!!!!



そんな事を頭に思い浮かべた王太子だったが、今までアリアにしてきた数々の愚行を振り返るとぐうの音も出ない。



「……あのねぇ、流石に王太子だって立場があるから浮気は出来ないって。」


絶句している王太子を見かねたファヴィオが口を挟んだ。



「そうなの?、私的にはさっさと恋人でも作って婚約破棄してくれたほうが良かったけどね、この小説みたいに。」



「「はぁ?」」



アリアの言葉に、王太子とファヴィオは唖然とした。




「あ、流石に冤罪着せられて処刑されるのは嫌だけど。」


「いやいやいやいや、そうじゃなくてね………、この小説、ただ単に『王太子と平民が恋人同士の話』じゃなくて、婚約者がいるって設定なの??」


ファヴィオは聞きたいのはそこじゃないと言わんばかりにアリアに小説の内容を確認した。


「そうよ?、というか小説の王太子はこの国の王太子殿下、レオナルド・ニコロ・サルヴァトーレ・ヴィンツェッチオ様そのままの容貌で書かれてるし、

婚約者は顔がヒキガエルのように醜くて、何時もベールを被っている中身もおぞましい公爵令嬢。

まるで()()()の事をそのまま物語にしたような話なのよ。」


「な……、」


王太子は内容に驚きながら、ふと考えたことを口にした。



「いや、ちょっと待ってくれ。君の性格はおぞましくも醜くもないだろう?、

むしろ公爵令嬢としての気品も兼ね備えながら自分の意志を貫く素敵な女性じゃないか。」



「は……、え!?、はぁっ!?!?」



小説でのアリアの書かれ方に王太子は肯定するだろうと考えていたアリアは、まさか自分の性格を褒められると思っていなかったので気が動転してしまった。


「動作一つ一つが気品に溢れているし、知性が優れていて誰に対しても対等に接することができ、領民や家臣から好かれている……。うん、何処をとっても得も言われぬ中身(性格)だと思うが?」


アリアの驚きなど気にせず、王太子はつらつらとアリアを褒めていく。

最初は自分の気を引くために嘘でも付いているのかと思っていたが、素直に思ったことを口に出している王太子の素振りがとても演技には見えなかった為、アリアは何故だかむず痒くなってきた。


「そう!!わかった!!!、うん、ありがとう!!!」


これ以上は聞いていられないと思ったアリアは、王太子の口を塞ぐように大声で話を切った。


……つもりだったが、レオナルドは止まらなかった。




「で、君の顔ってどんな容貌なんだ?」




王太子のその一言で、その場が一瞬で凍りついた。


全身がわなわなと震えるアリアを見ながらファヴィオとティグレは、

うわー、あのまま終わりにしとけばよかったのに……!!阿呆だ!!、コイツ阿呆だ……!!

と一言余計だと言わんばかりに胸底で王太子を貶していた。



「…………醜いと言っておいて聞くんですか?

貴方様が醜いと言っておいて、私に聞くつもりなんですか!?、は!?また殴っていいってこと!?次は天井突き破るぞ!?!?」



自分の席から立ち上がって王太子に近づこうとするアリアの目の前に、ファヴィオは慌てて立ち塞がった。


「ダメ!殴らない!、落ち着いて!!、さっきいっぱいボコして殿下の矜持(プライド)ズッタズタにしたばっかでしょ!!!」


暴れ馬を窘めるとはいえ、王太子の心が傷付くような言い方である。


「確かにボコしたけど!!!、醜いって言い放ったくせに聞く王太子殿下が悪い!!」


「それはそうなんだけど!!、ほら、でも殿下この前アリアの事もう醜いって思ってないって言ってたじゃん?

きっとアリアの顔忘れちゃったんだって。十年間も見てないんだし?、虐める奴はどんな暴言吐いたかなんて覚えてないって言うじゃん?、それと一緒でクズなんだよ、ね?。」



「………確かに、嫌いな奴の顔なんか覚えてるわけもないか。

怒るだけ無駄じゃん……、あー、腹立つ。」



ファヴィオの言葉に少し納得したアリアは、深い溜息を付きながら自分の席に座り直した。

何とかなって良かった、と一息つきながらファヴィオが席に戻ろうと振り返ると、王太子が仮にも自分の部下なのに酷くないか?と訴えるような目で見ていたが、ファヴィオは何も目にしなかったように座った。








「………、私の顔の容貌は二度と聞かないでください。」



心を落ち着かせるために紅茶を一口飲んだ後、アリアは怒気を含んだ低い声で王太子に警告した。



「で、話を小説の内容に戻しますけど、公爵令嬢の婚約者だった王太子(あなた)は、平民から伯爵令嬢になった主人公と恋に落ちるんです。」


王太子の部分を自分と重ねないでほしいと思いつつも、レオナルドは黙ってアリアの言葉を聞いていた。


「それを知った公爵令嬢は大暴れ。舞踏会やパーティーの度に主人公を虐めたり、嘲笑ったりするけれど、どれも王太子が主人公を助けて失敗に終わる。

元々顔が醜くて好かれてない公爵令嬢はこのままじゃあの女に王太子が取られる、と思い詰めて、王太子(アイツ)刺しちゃお!って計画に至ります。」


「刺しちゃお!って軽っ!?、ノリが軽いよ!!アリアちゃん言い方!!」


「あらティグレ様、ごめんあそばせ。つい、うっかり。」


オホホホと高笑いをするアリアを見て、これ絶対わざとだ、とティグレは確信した。



「何をトチ狂ったかは理解できないのですが、公爵令嬢は他の者に王太子を刺してもらい、その看病をすることで自分に恩ができるから婚約破棄されないだろうって考えたらしくて、」




「……その舞台になったのが王妃殿下の誕生祭だったんですよ。」






三人の頭の中に五ヶ月前、アリアが腹から血を流して倒れた場面が浮かび上がった。


























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