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王太子、惨敗。



「流石にやりすぎたわ…………。」



アリアの書斎の応接用ソファに横たわって動かない王太子を眺めながら、アリアは反省の意を込めながら呟いた。




「うん……、決闘で負け続けて、疲れて動けなくなったレオナルドをお姫様抱っこで持ってくるのはやりすぎだったと思う。」


「え!?、そこっ!?、それよりも決闘を何回もやる方が駄目でしょう!!」


ティグレの窘めに、違うだろうとファヴィオが指摘した。







王太子とアリアの決闘の結果、十回闘って、アリアが十回勝った。


王太子の見事な惨敗である。


第一回目の決闘で、王太子は一撃で負けた。

試合開始の合図と共に、アリアは王太子まで一気に距離を詰め、瞬く間もないまま下方から剣を思い切り振り上げて王太子の剣を天高く飛ばしたのだ。

王太子はアリアの脚に意識を持っていかれている間にあれよあれよと負けたのである。


まさか十秒も経たずに負けるとは、


打ち負かしたアリア以外、誰もがそう思った。

アリアの兄のジルベルトでさえ、流石に王太子だってそこそこ訓練してるだろうから最低でも一分は持つだろうと思っていたのだ。

華奢でか弱いアリアを傷付けないように勝とう、などと舐めてかかっていた王太子には訳がわからなかった。


今のはまぐれだろうと、王太子は自分の強さを確認するためにアリアにもう一戦申し込んだのだ。



結果、王太子の敗北。



またすぐに倒してしまったら納得しないだろうと考えたアリアは、王太子との距離を一歩で詰めた後、剣を狙って振り上げるのではなく、王太子が打撃を受けれるように振り下ろした。

王太子はその打撃をしっかりと受け止めたものの、()()()()()()()に足がよろけてしまった。

アリアは王太子の使っているロング・ソードという騎士によく用いられる剣ではなく、もっと軽量で片手で扱えるサーベルを使用していた。なのに、打撃の威力が恐ろしい程に重いのである。

受けたとしても、撃ち込まれた方向によろけてしまうと感じた王太子は、何とか自分から打ち込もうと考えたが、アリアのすばやい打撃の波の合間を縫って打ち込めるほどの実力はなかった。

その後、受け止めきれなくなって負けたのである。



それでもアリアの強さを信じたくなかった王太子はもう一戦、もう一戦とアリアに挑んでいったのだ。



アリアもこんな合法的に王太子をぶっ倒せる機会をたくさん作ってくれるなんて……!!と嬉々として応じてしまったため、

十回戦目の終わりで王太子が起き上がれなくなってしまったのである。



そして、王太子はアリアにお姫様抱っこでアリアの執務室まで運ばれた。



なんという、屈辱。

運命の相手として意識してもらおうと、一ヶ月間死ぬ気で身体を鍛え上げて強さを見せつけようとしたのに、

決闘で十回も負けるし、挙句の果てに動けなくなった自分が求婚相手にお姫様抱っこされて部屋まで連れてこられたのだ。

王太子は恥ずかしさと、少しだけアリアの力強さにキュンとしてしまった苛立ちで腕で顔を隠したまま動けなくなっている。




「動けなくなってたし、運んだのは仕方ないでしょう?、王太子殿下を担いで運ぶわけにもいかないし……」


「決闘で全勝したアンタに言うことではないんだけど、そもそも女の子に運ばれる王太子の気持ちも考えてあげてほしいな………。」


「大丈夫でしょ、私のこと女らしくないって言ってたし。」


「言ってたけど……っ、言ってたけども……!!!」


何とかフォローしようとすると王太子の昔のボロが出てきて首が締まることに、ファヴィオは頭を悩ませた。




「それにしてもアリアちゃんって本当強いよね、この前まで療養しててブランクもあったと思うのに姿勢とか太刀筋全然衰えてないんだもん。」


「本当っ!?」


アリアはティグレの言葉に目を輝かせた。


「うん。アレでも一応、レオナルドって普通の騎士よりは訓練してるんですよ。そのレオナルドを一撃で打ち負かせるんだから、俺と手合せしたときより上達してると思います。」


「ティグレ様にそうやって褒めてもらえるなんて……っ!!、実はね、婚約破棄してから王妃教育がなくなったから大半の時間を鍛練に当ててたの…!!、お父様との時間も作ることが出来たから、お父様に稽古してもらってて……それで………」



夢を語る少女のようにきらきらと楽しさを飛ばしながらアリアはティグレに話しかけている。

その様子を遠目で見ながら


「殿下もこうやって相手が望む言葉(モノ)を考えて話せばいいのに……、」


とファヴィオは小さく呟き、未だに顔を隠している王太子の肩を優しく叩いた。


「……早く起きないと、自分の従者に()()()()()を取られるかもしれないですよ、殿下?」


さっきの王太子を慈しむような笑みは何処に消えたのか。

ファヴィオはニヤついた顔で王太子の耳元で囁いた。


「なっ!?、」


「あ、起きた。やっぱ狸寝入りだったんですね〜!」


「からかうなっ!!」


勢いよく上半身を起こし、慌てている王太子の反応を楽しむかのようにファヴィオは笑みを浮かべている。


「ファヴィオ、だいたいお前はっ………」




「あの舞踏会の襲撃に瞬時に気が付いたのも、鍛練の賜物だったんですか?」




「「!?っ、」」



ファヴィオを王太子が怒ろうと声を荒げた時、ティグレがアリアに投げかけた質問が気になった二人は向きを変えてアリアの返答を待った。




「ああ、アレね。実は王妃殿下の誕生祭に誘われるちょっと前に変な小説を読んでて……、その内容と、刺されるまでの一連の流れが凄く似てたのよね。」



「小説……?」



思いがけない答えに、ティグレは聞き返した。


「たしか何処かに…………、あ、あった、コレ。」


アリアは椅子から立ち上がって、書斎近くの本棚から一冊の桃色の本を取り出し、三人が囲んでいる机の上に置いた。






「『王太子殿下の恋人は平民』っていう、素敵な恋愛小説よ。」




















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