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ウザい男は嫌われますよ?、殿下。




「だーかーらー、姉とジルベルト義兄上(あにうえ)の子供を見に来たんですって。この前そう言って休み申請しましたよね?」


「じゃあ、何故今アリアと一緒にいるんだ?」


「幼馴染みと楽しく会話ぐらいしたっていいでしょうが。」


そもそもお前にファヴィオと一緒にいることを責られる義理はないし、ここはうちの庭です!!!喧嘩するな!!!


なんて言葉を飲み込んでアリアはファヴィオが責められないよう、王太子に話しかけた。


「王太子殿下は、どのようなご要件でこちらに?

ジルベルトお兄様と、ソフィアお義姉様は……」


「もう会ってきた。」


手に花束を抱えた状態でよくそんな嘘がつけるなと思いつつ、アリアはコイツ早く帰らないの!?と王太子の横にいる従者のティグレに目で訴えたが、ティグレは手を交差してバツ印を作っている。


「これは、君にと思って。」


「はぁ…、私ですか。てっきり可愛い甥への贈り物かと思いました。」


王太子はアリアに花束を手渡しながら、あまり喜んでいないことに疑問を感じていた。


「……花は嫌いか?」


「いえ、貴方様から贈り物を貰ったのが初めてなので……。まさか、貰えるとは……」


「うっそ、王子一回もアリアに贈り物したことなかったの?婚約者だったのに!?」


衝撃の事実を知ったファヴィオは、従者であるティグレに問いただし、それに答えるようにティグレは首と手をブンブン振った。


「ナイっすね。幼少期、あんな醜女の為に何で私が!?って怒鳴り散らして以来、皆すすめなくなってましたし……」


「うっわー、こればっかりはアリアに同情するわ。良かったな、婚約破棄できて。」


ファヴィオはアリアを憐れみの目で見ながら、肩に手をおいた。


「……少し、アリアに対して馴れ馴れしいんじゃないか?、ファヴィオ。」


「王太子殿下にとやかく言われる事じゃないですよね?、それに、私達気心が知れた仲なんで別にどうってことないですよ。」



何だこのおもったるい空気は!!!



火花を飛ばしまくっている二人の間に立たされたアリアと、王太子の後ろに立っているティグレは同じことを思っていた。



ファヴィオは絶対王太子のことをからかって楽しんでいる……!!それはわかるんだけど、なんで王太子は挑発に乗ってんの!?


レオナルドめちゃくちゃ機嫌悪くなってる……!ファヴィオさんとアリアちゃんが仲良いのが許せないんだな、だけど、なんでファヴィオさんはニヤついてんの!?



考えることは違えど、この場の空気を何とかしたい気持ちは同じだったのだろう。たまたま目線が合った気がした二人は無言で頷き、すぐさま行動に移した。


「でっ殿下!、お花ありがとうございました。とっても素敵です。それで、もしよろしければ皆でまたうちの甥を見に行きませんか?」


アリアはにこやかーにファヴィオの手を払って王太子の前に立った。


「いいですね!、私遠くからだったので全然お顔拝見できてないんですよ…!」


「まぁティグレ様、そうでしたの!次は是非、近くで見てくださいな。」


「そうですね!さ!王太子も行きましょう?」


「いや、ティグレ…」


「アリアちゃんからのお誘いですよ?行きますよね?ね!!」


ティグレは必死で主人の背中を押した。


「ディチア小公爵様も是非行きましょう?、公爵様もまだいらっしゃってますし…」


アリアはお前!!空気読めよ!!はよ行け!!という睨みをファヴィオに向けた。


「……殿下、私の両親もまだノウン公爵邸にお邪魔してますので、会って戴けますと嬉しいのですが…いかがでしょうか?」


「……わかった、皆で行こうか。」


ファヴィオの問いに王太子は嫌々ではあったが頷いた。









「もう、いやー!!」


アリアはファヴィオと王太子達が帰ったあと、ソフィアと甥っ子が寝ているベットの縁に顔を埋めた。


「ごめんなさいね、あの子…からかうの大好きだから。」


「ファヴィオはいつもの通りいい性格してるから気にしてないの!、問題は王太子!!」


「私もまさかこの子のお祝いに来てくださると思わなかったわ。」


「そりゃあ、こーんなに可愛い赤ちゃんが産まれたら誰だってお祝いに来るわよねー?、エーリオ。」


アリアはソフィアの腕の中にいる幼子エーリオの頬を優しく撫でた。


「王太子殿下は、エーリオ誕生のお祝いを口実に貴女に会いに来たんじゃないの?」


「なんでぇ!?」


「心配だったんじゃない?、貴女この前傷口開いて倒れちゃったんだし。」


「あの王太子が私を心配?、あるわけないよ。花束だったエーリオのついででしょう?、一応命の恩人だから贈り物でもしとこうかな、位だと思うよ。」


「そうかしら……」


エーリオへのお祝いの花束よりも、アリアが貰っていた花束のほうが大きくて豪華だった事実をソフィアは心の中に留め置くことにした。














「マジで何なのよあの王太子………。」


アリアは庭園の机に突っ伏して呟いた。


「へぇ、殿下まだお前にちょっかい出してるんだ。」


アリアの対面に座るファヴィオが、紅茶を飲みながら問いかけた。


「婚約破棄してハッピースローライフ送るつもりだったのに……!、あんの王太子なんで、毎週毎週手紙送りつけてくるのよ!!!」


「なるほど会えないから手紙にしてきたのか!、考えたなぁ!」


「感心してる場合かっ!!、毎回手紙来るのはいいけど、『今日は天気が良かった』とか、『鳥の鳴き声が聞こえた』とか内容がうっすいのよ!!何をどう返信していいのかもわからん!!」


「じゃあ放っとけばいいじゃん、婚約者じゃないし。」


「だから返信せずに手紙が来なくなりますように…!、って願ってたら週三で届くようになって悪化した。」


「週三!?、あはははは!!、やべぇなそれは!!」


「笑ってないで何とかしてくれない?

貴方王太子殿下の側近でしょ?、だからお茶に誘ったのに……。」


凄いネタでも摑んだかのように笑うファヴィオを、アリアは恨めしそうに睨んだ。


あの王太子が来た騒動から二ヶ月後、ファヴィオは姉と甥っ子に会うために偶々ノウン家に遊びに来ていたところ、王太子の扱いに困ったアリアに庭園へ連行されてきたのである。


「でもなぁ、殿下今凄い忙しいはずなんだけどな。」


「忙しい?」


「うん。アリアが婚約破棄したから、王妃教育としてやらせてた雑務が全部王太子へ回って、更に次期王妃候補を決めるための令嬢たちによる争奪戦(バトルロワイアル)が開催されてるんだよねぇ。」


争奪戦(バトルロワイアル)……」


なんという恐ろしいものが開催されているのかと気になったアリアはファヴィオの解説を生唾を飲んで待った。


「やっとあの醜女と婚約破棄した!!って、令嬢達が王太子に殺到したせいで、王妃様がヤケクソになったみたいでさ、

『王妃教育を逃げ出さずに完了できた者を王太子の婚約者とします!』

って言って王太子と結婚したいご令嬢達を集めて王妃教育させてるみたいだよ?」


「それは死人が出るわ……。」


アリアはまるで死地から戻ってきた戦士が経験を語るように呟いた。


「で、その統括も殿下に任されてるから、私にまで仕事が増えて散々だよ。お前が婚約者の時はそこまで仕事なかったのになぁ……。」


「……ん?、そしたら私……王妃教育と称して事務処理やらされてたの!?はぁ!?、それで外交問題とか東国との公文書の訳とかがあったわけ!?」


「お、今気がついたんだ。」


「いやぁ、何か近況の問題に添いすぎてると思ってたけど…、まさか本物だったとは……。

じゃあ、今はそれが全部王太子の仕事になってるのね、

……私が受けた地獄を味わうがいいわ。」


アリアは肘をついた手を顔の前で組みながら悪い顔でくつくつと笑った。


「おー怖い怖い。つーわけで、王太子は寝る暇もなく働いてる筈なのよ。だから、手紙送ってくるのはもはや執念では?」


ファヴィオは呑気な顔でアリアの焼いたクッキーを食べ始めた。


「執念って何…?、私への嫌がらせってこと?

十年間も婚約破棄しなかったくせに今更破棄して仕事増やしやがって……!っていう……」


コイツ頭良いはずなのに何か抜けてんだよな、そんなことを考えながらファヴィオはアリアの発想を楽しんで観察していた。


「どうしよう……、私から手紙で謝罪文でも出せばいいかしら?

それともさっさと修道女にでもなって俗世を捨てるか。」


「とりあえずもう手紙はいりません、って送れば?

二ヶ月間も返事送ってないんでしょ?、もしかしたら殿下また襲撃しにくるかもよ?」


「まさか!、王太子殿下がわざわざ(ウチ)に来るなんてこと……」




あった。




目の前に王太子が従者のティグレと一緒に立っている。


何だこのデジャヴは。



「ん?、急に固まってアリアどうし……」


ファヴィオはアリアが指をさした方向にゆっくりと顔を向けると、ものすごく機嫌の悪い自分の主が立っているのが見えた。

ニヶ月前と同じすぎる展開である。


「王太子殿下、何故こちらに……?」


アリアは恐る恐る尋ねてみた。


「君に用があって、ここに居るとジルベルトから聞いて来たのだが……、何でまたファヴィオがいるんだ?」


あー!!またこの質問!!もうやめてくれ!!面倒くさい!!

そんな声を押し殺してアリアは王太子の機嫌を損ねないよう、考えて言葉を発した。


「お義姉様とエーリオに会いに来ていた帰りに、私がお茶に誘ったのです。王都のことや、王太子殿下のご様子をお聞きしたくて。」


「私のこと?」


「ええ。王太子殿下からお手紙を沢山戴いておりましたのに、体調などの関係からお返事を書けずにいましたので……、」


「そうか、読んでくれていたのか。」


「はい。」


物凄く文字数が少ないので読むのは簡単でした、という言葉をアリアはそっと仕舞った。


「よかった。」


花が開くようにはにかむ王太子を見て、コイツ嘘だろ……?、アピールの仕方が下手すぎじゃね?とファヴィオは内心爆笑していた。


「それで、殿下はアリアに何用だったんですか?、邪魔なら私は退散いたしますが。」


ずっとアリアを見つめる王太子に向けて、笑いを堪えながらファヴィオは尋ねてみた。


「ああ、今日はお忍びではなく、王太子としてノウン公爵令嬢に招待状を届けに来たのだ。」


退散しなくて良いという仕草をした後、王太子はアリアに向けて封筒を差し出した。


「なんの招待状でしょうか?、私はもう、舞踏会には……」





「君への勲章授与式の招待状だよ、アリア。」






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