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第2話 猛獣退治

 私と店長のエアーストさんと共に昨日と同じ雪がしんしんと降る中、農園に来ています。……棒をもって。ペットショップの店員が農園まで来てすることと言えば…猛獣退治です......。

 やっぱりおかしいいです。猛獣退治なんて。私はただの少女ですよ。私…死にません?


「やっぱり私猛獣退治なんて出来ません」


「そんなことはないぞ。イス、君には素質がある」


「素質ですか」


 私みたいな何の変哲もない獣人に何かの力あるとは思えないがどういうことだろう。特技としては手が器用なとこぐらいしかない。手が器用なことで猛獣退治ができるなんて考えられない。


「君は魔法が使える」


「えー⁈ 私魔法が使えるのですか?」


 私が故郷にいた時は魔法の存在すら知らなかった。この国に来てから魔法なるものが存在すると知った。


「魔法って念じるだけで物を浮かせたり動かしたりできる物凄い力のことですか? そんなすごい力私にあるなんて知りませんでした」


「そうだ。物を浮かせたりする以外にも炎や氷を生み出すこともできる」


「へー。そんなすごいこともできるんですか⁈ あれ、でもどうして私が魔法が使えると分かったのですか?」


 私は他の人と何も見た目は変わらない。むしろ弱々しく見える。


「君が魔法が使えると分かったのは生き物たちに教えてもらったからだ」


「生き物たちですか?」


「ああ、うちの店の生き物には魔法が使えないと見えないカメレオンがいるんだ。それをイス、君は昨日じっと見ていたからな」


「あのカメレオン魔法が使えないと見えないのですか⁈」


 確かに昨日の夜、店の中をのぞいた時私はカメレオンを見ていた。他にも生き物がいたがそのカメレオンはとても鮮やかで綺麗だったのでずっと見ていた。


「ちなみにあのカメレオンは魔法が使える者、つまり魔法使いの中でも魔力強さで見え方が変わる。私は緑色だった。まあ、普通の強さだ。イス、君は何色に見えた?」


「私は色んな色に見えました。黄色だったり緑色だったり金色だったりとにかく色鮮やかでキラキラしていました。これってどれくらいの強さですか?」


 私がこう言うとエアーストさんはびっくりしたような顔をした。え、私の魔力そんなに弱かったですか? もしかして色んな色に見えるってことはかろうじて魔法が使えるということなんじゃ......。


「驚いたな。イス、君はとてつもない魔力の持ち主だよ」


「そうなんですか‼ てっきり魔力がとてつもなく弱いのかと思いなしたよ。でも、とてつもなくってどれくらいですか?」


「この国の王宮魔法使いくらい強い」


「王宮魔法使いってなんですか?」


 私の発言を聞いてエアーストさんはまたもや驚いた顔をしている。私の無知がそんなに衝撃ですか? そんな顔をしないでください。私が何もわからない馬鹿みたいじゃないですか。恥ずかしいです。


「仕方ないじゃないですか。田舎者なんですから」


「ああ、悪い。この国では常識なものなんでな。王宮魔法使いっていうのはこの国で一番強い魔法使いがなるものだ」


 え、そんなに私強いの?

 でも、私は魔法の使い方が分からないから意味がない。


 エアーストさんと歩いていると農園の経営者、つまり猛獣退治の依頼者との待ち合わせの場所まで来た。依頼者は麦わら帽子を被ったおじいさんだった。


「エアースト、遅いじゃないか」


 エアーストさんのマイペースっぷりにおじいさんからしっ責をもらった。私は知りませんですからね。この時間でいいって言ったのエアーストさんですから。


「すまん。少し遅れた」


 おじいさんのしっ責にエアーストさんは頭をかきながら謝る。


「まあ、遅れたことはべつにかまわんがその横にいる白い狐耳の奴はなんじゃ?」


 おじいさんは顎で私の方を指した。エアーストさんが優しくしてくれたので忘れていたがこの国では獣は見下されているんだった。このおじいさんも私が仕事ができるか信用していない。


「ああ、イスは私の助手だ。問題ない使えるやつだ。だから、心配ない」


「本当か? でも、お前そう言うのだったら信じる」


 おじいさんはまだ半信半疑だったが私が仕事をすることを認めてくれたようだった。





「では、仕事にとりかかろうか」


 エアーストさんがそう言い腕をまくる。農園に入り込んだ猛獣はどうやらオオカミらしい。しかも、群れから追い出された一匹狼らしい。元々私は狩りとかを手伝うのである程度は戦える。


「オオカミ一匹くらいなら簡単そうで良かったです。私の故郷にはホッキョクグマがいるのですがあれくらいになると私は対処できませんから」


「何を言っているイス、今回の相手はホッキョクグマより強いフェンリルだぞ」


 フェンリルと言えば熊よりも大きいオオカミの魔物だ。それを私が対処しろと言われても無理だ。戦えば私がすぐに殺されるだろう。エアーストさんでも厳しいのでは?


「え、そんな強いの無理ですよ。あ、魔法を使うのですか?」


「いいや、魔法は使わない。どうせイスは魔法の使い方がわからないだろ」


「そうですけど。それじゃあ、どうやって倒すのですか?」


「殺すのではない。どうせ殺せはしないのだが、殺さない。追い込んで捕まえる。これはペットショップの店長である私が猛獣退治をやっている理由なのだが、私は生き物たちが殺されたくないんだ。」


「それはどういうことです?」


「農園などに迷い込んだ猛獣は退治される。その退治の方法は殺処分だ。私はそれが許せなくてこうして代わりに猛獣退治を引き受けている。猛獣は迷い込んだだけだから」


「なるほど。でも、どうやって追い込むのです? 生け捕りって殺すことよりも難しいじゃないのですか?」


 生け捕りにすることは殺すことよりも難しい。私は故郷で狩りをすることがあるので経験からわかる。生け捕りは生き物が激しく抵抗するのだ。


「他の奴なら無理かもしれないがフェンリルなら大丈夫だ。その棒があるからな」


「この棒がですか?」


 私は店長に猛獣退治に連れていかれた時に持たされた棒を見る。何の変哲もないダダの鉄の棒だ。強いて変なところがあるなら先端に赤い石が埋め込まれている。


「その棒の先端には魔石が取り付けられている。だから魔法の使い方がわからなくても強く握るだけで魔法が使える。ただし、一つの魔法しか使えないがな。これならイスでも魔法が使えるだろう」


「へー、そうなんですか。で、どんな魔法が使えるのです?」


「握ってみな」


 私は言われた通りに強く握ってみる。すると棒の先端が赤くなった。私は先端の方を触ってみた。


「あっちゅ」


 先端に触れた瞬間、熱と共に痛みを感じたのですぐに手を引いた。


「物に熱を与える魔法だ。先端は触ると危ないぞ」


「もう遅いです。店長」


 相変わらずの店長のマイペースさに呆れながら私は指をくわえる。もう少し早めに言ってほしかった。


「この熱い棒でフェンリルを追い立てるということですか?」


「そうだ。フェンリルは熱いのが苦手だからな」


 フェンリルは苦手なのか。私も故郷が寒いところだったので熱いのは苦手だ。この国では熱々のスープがよく食事にでてくるが私は雪で冷まして飲んだ。あんなの飲めるかっ。


「農園の爺さんによるとフェンリルはこの先にいる。固まって動くぞ」


「了解しました!」


 私とエアーストさんは農園の奥へと進んでいった。私は猛獣退治なんてやったこと無いのでエアーストさんについていく。それにしてもこの農園、むっちゃ広いな。


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