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第1話 ペットショップ

「イス、猛獣退治の助手をやってくれ」


 私はこのペットショップに()()()()雇ってくれた熊みたいなおじさん店長に何故か猛獣退治の助手をやるように言われた。


 え、今なんて言いました? 猛獣退治? 私が? なんで? 

 店長の熊みたいな体格ならいけると思いますが、私には無理がありません?

 私は華奢きゃしゃな少女ですよ。


「あのー、店長。これは?」


 私は何故か変な細長い槍みたいな棒を持たされた。


「ほんとに猛獣退治行くんですか? それ絶対ペットショップの仕事じゃないですよね?」


 そう私が言うと店長はきっぱりこう答えた。


「そうだが」


「じゃあ、なんで.......」


 私が理由を聞こうとするとファイヤーサラマンダーの吐いた炎のゴーっという音によってちょうどかき消された。


「では、行こうか」


 こうして私は店長と猛獣退治に行くことになった。

 私、死ぬかもしれない。

 そして、私はどうしてこうなったかを頭の中で思い出した。







 ホッキョクギツネ獣人の私は北にある故郷が食糧難で貧しくなったので南の国まで出稼ぎに来ていた。南の国と言っても私の故郷と比べて南というだけで、この国もそこそこ寒い。雪も降っている。

 

 イスはその南の国に来てすぐに仕事を探したが、なかなか見つからない。

 仕事が見つからないのは、イスがよそ者という理由もあるが、イスが獣人だと言うことが大きい。この南の国では獣・モンスターなどを忌避きひする人が多く、獣人が差別的な扱いを受けている。


 イスは出稼ぎに来たが仕事がないまま一か月が経った。金が尽き食べ物を買うこともできていない。今は食べ物を探しに町の中をさまよっている。


「なんで出稼ぎに行ったのに仕事がないんだ?」


 嘆いても今の状態を変えられないのに、雪が降る灰色の空にそんなセリフを吐く。

 元々物凄く寒いところで育ったので寒くはないのだが、お腹がすきすぎて体がだるい。


「何か…何か食べ物を探さないと......」


 私がこうして苦しんでいるのに町の人は誰も助けようとはしない。むしろ、私が苦しんでいる所を笑っている者さえいる。


「おい、獣が歩いているぞ」や「あいつ、頭に耳が生えてるぞ。道理で獣臭いわけだ」「あっちへ行け。獣」など沢山罵声を浴びされながらも私は歩いて行く。


 食べ物を求めて…。罵声なんて気にしている暇なんてない。


 暗くなって町の大通りから少し奥に入った路地を歩いていると、何か賑やかな店があった。掲げている看板を見てみると、『ペットショップ』と書いてある。


「これが…ペットショップ」


 私は初めてペットショップを見た。私の故郷は裕福な土地じゃないのでペットなんて飼える余裕なんてないので、当然ペットショップなどの娯楽を扱う店は存在しない。


 初めて見るペットショップは明るく、賑やかだった。いろんな生き物の鳴き声の合唱が私の頭に響き渡る。ペットショップの生き物たちは沢山種類が居てカラフルだった。いろんな国のいろんな動物。まるで、世界の縮図だった。

 

 ふと、横を見ると熊みたいな体格の大きいおじさんが立っていた。沢山の生き物たちに気を取られて横に人が立っていることに気がつかなかった。


「こいつらはすごいだろ。一匹一匹に魅力がある」


 今までの経験から私に罵声を言うのかと思ったら、話しかけてきた。


「そうですね。ずっと見ていられます」


 私は店の中の生き物たちを見ながら答えた。


「そうか。ずっと見てられるか。君、ここで働いてみないか?」


 え?ほんとに?


 動物が忌避されるこの国で雇ってもらうことなんて出来ないと思っていた。私には衝撃の出来事でした。こんなチャンスは二度とないだろう。私は二つ返事で了承した。


 仕事の内容を話すからとそのおじさんは私を店の中へと招き入れた。中は以外にも広く、三階までの吹き抜けになっている。そして、ぎっしり籠と水槽で埋まっていた。かろうじて人一人が通れるだけの通路があるだけだ。物で溢れかえっている店の中で特に目を引くのが半地下にある大きい水槽。中で泳げそうだ。


 おじさんが進んでいった先には籠と水槽と生き物たちに囲まれた二つのソファーがあった。


「ここに掛けてくれ」


 私はソファーに言われた通りに腰を掛けた。沢山の生き物の鳴き声が四方八方からする。


「それではまず、自己紹介からということで私の名前から申し上げよう。この店の店長エアーストだ」


「イスです。よろしくお願いします」


 まずは自己紹介からということらしい。このおじさんは店長だったんだ。


「では仕事の内容だがイス、君は俺の手伝いをするだけでいい。接客はお前ともう一人いるから大丈夫だ」


「手伝いですか。わかりました」


「早速だが明日から来てくれ」


「え? 明日からですか?」


「何か問題があるのか?」


 私はお金などなく、宿にも入れないということを店長に説明をした。私の事情を理解てくれた店長は私に店の空き部屋を貸してくれた。更に食事も用意してくれることとなった。仕事を私に与えてくれるだけでなく、住む場所と食事まで与えてくれるなんてこの店長は神様か何かですか? 

 まあ、そんなことより明日仕事頑張るために早めに寝るとしましょうか。



 翌朝、私はうるさい鳴き声と共に目が覚めた。夜もなかなかにうるさかっただが、疲れていたこともあり気にせず寝ていた。朝になってこの店うるさいなと初めて感じた。

 部屋を出て籠などが置いてある方に行くと何故か先客がいた。私と同じ狐の耳と尻尾が生えた青年だ。ただ違うのは私は真っ白なのに対しその先客の耳と尻尾は茶色だというとことだ。


「どなたですか?」


 私は見知らぬ狐の獣人に問いかける。


「この店の店員なのだが。お前こそ誰だ?」


「私はエアーストさんに雇われたイスというものです。訳あってこの店に住まわせてもらっています」


「店員? 店員なんていつ雇ったんだよ。あのおっさんは」


 私を雇ったことほかの店員に話してなかったんだ。エアーストさんは。ほかの店員が私を泥棒だと思ったらどうしてたんだろう? 


「お前、名前は?」


「名前ですか? 私はイスです」


「わかった。イスか。俺の名前はフックスだ。よろしく」


「こちらこそよろしくお願いします」


 挨拶を交わしていいると、店長が入ってきた。


「おう。フックスもう来ていたのか。早いな」


「店長が遅いだけだろ。それにそのセリフ昨日も言ってなかったか?」


 エアーストさんってけっこうマイペースなんですね。店に遅れて来たり、私のこと店員に話していなかったりしてますし。


 ふと店長の方を見ると二つの細長い槍状のものを持っていました。店の掃除か何かに使うのかなと思って見ていると、店長が私に棒を一本渡してきた。そしてこの一言。


「イス、猛獣退治の助手をやってくれ」

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