07 逃走
私は自分の部屋から脱出する事にした。
窓から出るのは、淑女としてはしたない事だが、そうは言ってられない。
もはや自分一人の力ではどうする事も出来ない。
騎士や、知り合いの貴族に頼るしかない。
そう思った時、一人の友人の存在が頭に浮かんだ。
頼もしい大人達でもないし、特別な力を持っているでもない。
ただの友達だけれど、きっとそばにいてくれたら力強い。
文通相手であるシフォンちゃんに相談してみようと思った。
けれど、文字のやりとりばかりしているため、相手の顔が分からないのが困った。
おそらくその時の自分は心細かったのだろう。
最善を考えたら、早くその場を離れるべきだった。
屋敷を抜け出してあたりをうろうろしていたら、使用人達に見つかってしまったようだ。
もう、部屋を抜け出した事がばれたらしい。
「お嬢様がいたぞ!」
「逃がすな!」
鬼気迫る様子でおいかけてくる彼等から私は必死で逃げた。
無我夢中で逃げる私は、知らない間に山の中に迷い込んでしまったらしい。
似たような景色ばかりの山の中は、方向感覚をくるわせる。
すぐに迷子になってしまった。
さらに、しだいに日が暮れてきて、辺りが暗くなる。
暗い中で動くと怪我をするから、夜の間はじっとする他なかった。
けれど、周囲から時折り獣の鳴き声が聞こえてきて、気が休まらなかった。
「お父様、お母様、ユフィ、師匠」
疲れているのに、夢を見る事も出来ない。
私は獣の気配におびえながら、一人ぼっちで長い夜を過ごすことになった。