04 生き返らない
シフォンちゃんという友達ができてから、数週間が経った。
私はその子とは、鳩に運んでもらって手紙のやりとりをしている。
シフォンちゃんは、どうやら恥ずかしがりやらしい。
会って話すのは駄目だと言ったので、文通でのみやりとりをしているのだ。
たまに小さな筒に、お菓子やおもちゃを入れて贈り物をしてくれることもある。
そんな中、少しずつ元気を取り戻していった私は、貴族の勉強を再開する事にした。
礼儀作法やマナー。
貴族だけが使える魔法の勉強など、学ぶべき事はたくさんある。
魔法の師匠からは、筋が良いと言われたので、この調子で学べば世界で一番になる事も夢ではないかもしれないと言われた。
「ユフィはすっかり元気になったようで良かったわ」
「ああ、これからもフィアの代わりに、精いっぱい生きてほしい」
私が元気になった事で、お父様やお母様もほっとしたようだ。
滞っていたお仕事を再開させて、忙しく過ごしている。
けれど、たまにこっそり私の様子を遠くから見ているらしいので、私は二人にもう二度と心配をかけないようにしようと誓ったのだった。
でも、たまには寂しくなることもあるので。
「お師匠様、人が生き返る事ってあるんでしょうか?」
と尋ねる事があった。
すると魔法のお師匠様は、「いいや死んだ人間は生き返らない。一部の例外を除いては」と悲しそうにいった。
おひげたっぷりで、しわたくさんのお師匠様は、長い年月を生きている。
色々な有名貴族から老師と呼ばれて、頼りにされているらしい。
そんなお師匠様が知らないのなら、人が生き返る方法なんて都合の良いものはないのだろう。
一部の例外、と言った方法だって。本当は生き返っているわけじゃない。
邪神が死体にとりついて、操っているだけなのだから。
「フィアの事は残念だった。妹の事はもう忘れなさい」
「はい」
私は悲しかったけれど、涙は流さない。
一生懸命勉強して、一生懸命魔法の練習をこなした。
そうして、ちょっとずつ日常を取り戻した時だった。
「久しぶりですね。お姉様」
死んだはずの妹が私の目の前に現れたのだ。
師匠がつれてきたその少女はまさしく私とうり二つだった。
妹の顔に、ユフィの顔にそっくりだった。
でも私は分かる。
この少女は偽物だと。