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02 妹の死



 路地裏に連れ込まれた私達は、すぐにあやしげな男についていったその選択が間違いだったと気が付いた。


 けれど、後悔するのは遅すぎた。


 背後の退路を断つように、どこからともなく男達がやってくる。


 そいつらは逃げようとする私達を捕まえて、目立たない場所に隠してあった馬車に放り込んだのだ。


 馬車の中の頑丈な檻の中へと。


 私達を乗せた馬車は猛スピードで走る。


 このままだと危ない目に遭うと思った私は、揺れる馬車の中でどうにか苦心しながら檻を壊そうとした。


「お姉ちゃん、怖いよう」


 涙目になって弱音を吐くばかりの妹に、少しだけイライラしながら。


 でも、私はお姉ちゃんなので我慢。


「大丈夫。私がここから出してあげるわ」


 私達を閉じ込めていた檻は、あまり頑丈ではなかったらしい。


 何回か体当たりしたら、カギが壊れた。


 檻から抜け出した私は、走る馬車から身をのりだす。


 馬車はかなりのスピードを出していた。


 景色がすごい速さで流れていく。


 恐怖を誘う光景だったけれど、私達がここから無事に助かるためには、飛び降りるしかない。


「無理だよ。お姉ちゃん」

「大丈夫。ちょっと怪我するだけだから。ユフィはお母さんとお父さんに会いたくないの?」

「会いたい」

「なら、頑張らなくちゃね」


 ユフィを励まして、前を見据える。


 意を決して、妹の手を握ってそこから飛ぼうとしたのだが。


 荷台の方から男が一人やってきた。


「なっ、てめぇ逃げる気か!」


 まずいと、思った私は、とっさに妹を馬車の外へと突き飛ばそうとした。


 けれど、「お姉ちゃんっ」私の腕は空をきった。


 どんっ、という衝撃がきて、代わりに私の体が馬車から投げ出された。


 一瞬の浮遊感の後、男が妹の腕を掴むのが見えた。


「ユフィ!」


 せっかく捕まえた子供が一人逃げてしまった事で苛立っていたのだろう。


 男は力任せにユフィを殴りつけた。


 馬車の壁にたたきつけられた小さなユフィ。私の妹。


 そこまで見届けた後、私は地面に墜落した。


「うっ」


 激しい痛みに顔をしかめながらも、馬車の方を見る。


 ほんの少し目をそらしていただけなのに、馬車はずいぶん遠くへ遠ざかっていた。


 ユフィは馬車の床に倒れているのが見えて、その馬車から流れ落ちた血が地面にてんてんとしたたって、跡がついていた。


「待って、お願いっ! ユフィをっ! 私の妹を返して!」


 馬車は止まらない。


 妹を乗せたまま。


 私だけが助かったのだ。



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